小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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暗がりのステージ


この日の為に作られた特設ステージに俺


神谷 士は一人ただずんでいた


目の前にはここIS学園の生徒。その数、無数


いや、こんなに来るとは……


うわ〜


勘弁してよ……千冬姉とか山田先生までいるじゃん


楯無さん……あとで、泣かす


なんで、あんな笑顔やねん


俺の服装と言えば、白のポロシャツに黒のネクタイ


どっかの学校の制服のような


夏海がくれた


あいつ優秀すぎだろ


不意にギターとベースが鳴り響く


来たか……


さぁ、ロマンはどこだ


「溢れ出す 感情が

この体 突き破り

時を溶かし始まったNext stage♪」


一気に証明が明るくなり、暗かったステージを照らした


ベースが小刻みに音を震わせ、ギターがリズムと作る


校内喉自慢大会


要するにカラオケ大会


自主参加性のこの企画


正直、やる気は無かったけど……


皆に絶対に出ろと言われた


何でやねん


「いつも足りなくて 言い訳的な諦め

ずっと積み上げていた 隠すように

どこか遠巻きに 眺めていたような景色

急に手のひらの上 粉々に砕け散る♪」


マイクから伸びるコードを掴み喉を震う


「制御不能 熱い炎

途惑いを 焼き払い

昨日までの感覚 忘れさせる♪」


俺を照らしていた証明は観客までを照らし盛り上がりを魅せる


よし、サービスの時間だ


……まだ、予選だけど


『KIBA・KAMEN RIDE・EMPEROR』


ケータッチのキバの紋章をタッチ


基本カラーは赤・金色で、背中のマントが勇ましいキバのエンペラーフォームを召喚


俺の隣でポーズを取り、リズムをも取る


今日だけのスペシャル大サービスだ


「No one ever knows 僕の音

どこまでも進化する

まだ知らない自分が 目覚めてく

Supernova♪」


一気にスパート!


「No one ever knows 僕の音

どこまでも進化する

まだ知らない自分が 目覚めてく

Supernova♪


見えない暗闇の中

かすかな光 創り出すように♪」


バスドラムがいい音を立てた後、ギターがこの曲をシメた


休憩してる時間は無いぞ


急いで


赤のネックと黒のコートを羽織って次の曲へ


キバメドレーじゃい!


え?何でキバかって?


大人の事情だよ、この野郎


「その椅子に座るのは 唯(ただ)1人だけ

紛いものは 虚しく消えてゆくだけ

Roots of the King……♪」


キーボードの独特な音色が鳴り響き、俺は用意された椅子に腰掛けて足を組む


え?偉そう?知らんがな……


「judge it king 受け継がれてた 運命のsaga

この時代黒く染める

牙を剥いたものは 永遠の死を知るのだろう

whats real? 始まったのは

希望じゃなく 絶望と笑っている

揺るぎない自信は Roots of the King……♪」


観客のほとんどが拳を振り上げて盛り上がっている


間奏でのベース


俺は用意されていたベースを掴み、即興の舞台階段で震わせる


一瞬の沈黙の後……


「Judge it, king 紡がれてきた 運命のsaga

その胸にゆだねられた

牙を剥いたものは 永遠に奈落を彷徨う

whats real? 圧倒的な

支配を今 大空に仕掛けてくる

風が巻き起こって その姿あらわす

Roots of the King……!♪」


マイクを掴み、体を揺らす


どうよ、このキメ顔


決まってるだろ?


「神谷選手!堂々の予選通過です!」


司会の二年の先輩が告げると同時にまたも大歓声が沸き起こる


俺は手を適当に振って楽屋という名の控え室に戻った


あ〜、疲れた


「お疲れ様……中々、良かったじゃない」


夏海がペットボトルを差し出した


「おっ、サンキュー」


うめ〜


やっぱり、お〜〇お茶だよな


それ以外はだめだな


「もう、疲れた。夏海も出ろよ〜」


「嫌よ。私がああいうの好きじゃないの知ってるでしょう?」


「そうだけどよ〜」


ったく、俺だって他の人の聴きたかったのに……


なんて思ってると


「士!」


ドアが開き、皆が続々と入ってきた


おお、いっぱい来てくれた


「予選通過おめでとう……まぁ、当然だがな」


箒ェ……実はこの人、予選の一人目で出て失格になっている


Lis〇enは確かに上手だったけど、あれは卑怯だ


上手すぎる


「本当、いい歌声でしたわ」


セシリアも予選通過。本当、声きれい


「セシリアこそ……決勝頑張ろうな」


「はい!」


いい笑顔


「私も出たかったな〜」


鈴先生がやさぐれてる


そりゃ、お前


先生なんだし無理だろう


「僕もいい線行ったと思ったんだけどな〜」


「確かにシャルは惜しかったな」


シャルもホウ〇雲


を熱唱


結構良かったのにな〜


「嫁、いい声だった。褒めてやろう」


おう、頭必死に撫でてくれてありがと


ラウラは参加していない


まぁ、しゃあないよな


「士……頑張ってね」


簪も出てない


まぁ、病み上がりだしな


「おう、お前もあんまり無理すんなよ」


「うん」


「士くん、おねーさんも歌いたかった〜!」


もう、本当なんでこの人いっつも俺に抱きつくの!?


「分かったから離して下さい!」


「い〜や〜だ〜」


ああああああああっ!


理性がぁ!


「今度、一緒にカラオケでも行きましょう。ね?」


「約束?」


「はい、約束です」


これでなんとか


「わ、私も行くぞ!」


「そうですわ!会長ばっかり!」


「私、いけない〜」


「僕だって!」


「むぅ……歌を少し勉強しなければな」


「ラウラさん……、手伝おうか……?」


あれ?どうしてこうなった?


楯無さんをチラリと覗き見ると


うわ〜


泣きそうになってる


勘弁してくれよ


「士」


「ん?」


言いあいを始めてしまった皆を尻目に夏海が俺の袖を引っ張る


「そろそろよ。行ってきなさい」


「おっ!りょ〜かい」


もう、そんな時間か……


ほな、行きますか


「ロマンはどこだ……セシリア、行くぞ〜」


セシリアを呼んだ


「はっ!そうでしたわ!ゴホン……では、皆なさん。わたくしこれから士さんと二人!!で行ってきますので……失礼いたします………」


「「「「「「ううううううぅうううぅ〜〜〜」」」」」」


唸るなよ


ほんで、セシリアも二人を強調するな


部屋を出た


「きっとそこよ」


夏海がボソッと呟く








「それでは、お待たせしました!校内喉自慢大会!決勝に勝ち上がった四人で〜す!」


俺とセシリアと二年と三年の先輩か


よし、やるか


「では、セシリアさんからお願い致します」


そうして、決勝が始まる


俺はいいのか、悪いのか最後だ


セシリアは安定の歌声で皆を沸き起こし、二年の先輩はダンスを取り入れた本格的な歌


三年の先輩は可愛い声で同姓問わず、魅了した


さて、行くか……


「それでは、最後の進出者です。学園唯一の男が皆に向けてのラブソング。聴いてください」


ピアノが静まった会場に響き渡る


俺は俯いて目を閉じた


歌いだし……俺は喉を震わせる


「目を閉じれば 億千の星 一番光るお前がいる

初めて一途になれたよ IS学園、響け愛のうた〜♪」


このちょっとしたアレンジが大事


「大親友の彼女の連れ おいしいパスタ作ったお前

家庭的な女がタイプの俺 一目惚れ

この学園 で出会えたこと それって奇跡に近いよね

優しい皆にまた癒されて ベタ惚れ♪」


「嬉しくて嬉しくて 柄にもなくスキップして

『好きって言いてぇ』 頑張ってISを動かす君に釘付け

守りたい女って思った 初めて

ここIS学園で ギュッと抱きしめた♪」


「目を閉じれば 億千の星 一番光るお前がいる
初めて一途になれたよ 夜空へ響け愛のうた♪」


本当に柄にも無く熱唱してんな……俺


でも、このアレンジよくない?


「秋が始まり 照らすおぼろ月

出逢った二人の場所に帰りに一人寄り道

変わらぬ景色 変わったのは俺ら二人

全て見えてたつもり 目に見えないものなのに……♪」


「馴れ合いを求める俺 新鮮さ求めるお前

お前は俺のために なのに俺は俺のため

秋の夜風に打たれ 思い出に殴られ

傷重ねて 気付かされた大事なもの握りしめ♪」


拳を握り締める


oh……何人か泣いてる娘いるじゃん


こりゃ、頑張ったかいあったな……


歌詞30分かけて考えたもんね


替え歌だけど、これはいいだろ


さぁ、ここからだ……


「今すぐ会いに行くよ 手を繋いで歩こう

絶対離さない その手ヨボヨボになっても

白髪の数喧嘩して しわの分だけの幸せ

二人で感じて生きて行こうぜ♪」


証明がステージも観客席も全てを照らす



「LOVE SONG もう一人じゃ生きてけねえよ

側に居て当たり前と思ってたんだ

LOVE SONG もう悲しませたりしねぇよ

空に向け俺は誓ったんだ

LOVE SONG ヘタクソな歌で愛を

バカな男が愛を歌おう

一生、隣で聴いててくれよ

LOVE SONG 何度でも何度でも

LOVE SONG…… 何でも話そう
LOVE SONG…… 約束しよう♪」



「目を閉じれば 億千の星 一番光るお前がいる
初めて一途になれたよ 夜空へ響け愛のうた♪」


皆が手を大きく振っていた


多分、『この会場は一つになった』とかって、こういうことじゃないかな……


証明は消え、ライトは一つの円を作る


その中心に俺はいた

「目を閉じれば 億千の星 一番光るお前が欲しいと
ギュッと抱きしめた夜はもう二度と忘れない
届け愛のうた♪」


こうして喉自慢大会は満場一致の俺の優勝で終わった


カフェテリアのパフェが一ヶ月食べ放題なんだって


ふぅ……

-97-
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IS <インフィニット・ストラトス> ポス×ポスコレクションVol.2 BOX
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