小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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女が歩いていた


暗い倉庫を一人で


倉庫は大きかった


とてつもなく、大きい


大量の輸入物を保管しておくためのものだ


しかし今、その倉庫には何も入っていない


入っているものといえば、作業用に使われる機材や木材だけ


そんな倉庫を彼女は歩いていた


目指すは一つ


天窓から差し込む月明かりが照らす元へ


パワードスーツ


ISだ


今、世間を騒がせているその機械の元へ彼女は歩いていた


ISは盗難機だ


盗難機はオランダのもの


女はそのISの回収を目的としている


月明かりの……ISの元へ彼女はたどり着く


機体カラーは黄色。かなり濃い黄色だ


右腕には専用武器『カタルシス・ブレード』


鉄板程度のものなら、何枚重ねようとも無駄だ


最大の特徴は全エネルギーをそのブレードに転用することで、レーザービームを剣から放つことができる


そのレーザービームは追尾システム付きの一撃必殺もので、対象に命中するまで追い続け、シールドエネルギーを0にすることが出来る


たとえ、こちらのシールドエエルギーが0になろうとも


要は、最悪でも相撃ちにできる切り札だ


稼動速度も速く、スピードは箒の「紅椿」にも匹敵する


彼女はほくそ笑み、機体を撫でた


「行きましょう……」


そっと呟き、機体に乗り込む


その瞬間、倉庫の正面シャッターが勢い良く開かれ、中をライトが照らした


バッ バッ バッ


と大きな音を立てて、中を照らす


「……っ」


思わず、目を覆う


そのとき、一人の男が女に歩み寄って行った


白の服に赤のラインが走っている


IS学園の制服だ


「ラリ・タバレスだな。IS犯罪対策部隊だ……ISから降りて、両手を頭の後ろで組んで膝をつけ」


男は気だるげに言った


頭の後ろを掻きながら


「お断りします」


女……ラリはあくまで冷静に返した


声にも焦りは見られない


「第一、貴方は男でしょう。そんな部隊に居る意味など……」


「あくまで、従う気は無いってことでいいか?」


男は最後まで聞かずに言葉を重ねた


「ええ。スコールが待ってますから」


女は、告げる


恐らく、正面から堂々逃げ出そうとしているのだろう


背中のブースターが火を吹き出す


「はぁ。またアイツかよ……」


男はため息を一つ漏らした


そして


「抵抗する気ならしゃあない。後悔すんなよ」


そして、男は右腕の細いブレスレットの姿を変える


それを腰部に当てた


バックル両側を外側に引く事で、バックルが90度回転してカード挿入口が上部に露出する


彼はカードをそこに挿入


「変身」


『KAMEN RIDE・DECADE』


ハンドルを押すことで、彼は姿を変えた


「ロマンはどこだ」


手を弾くように叩き、彼―――神谷 士は笑った


「退いてください!」


士side-


こんばんは、神谷です


「おっと」


突っ込んできたラリをかわす


ってなことで、状況は後ほど


今は……


『ATTACK RIDE・BLAST』


ライドブッカー・ガンモードの銃身を分身させ光弾を放つ


「っく……思い出しました。貴方が神谷士ですね」


「だとしたら?」


「スコールに言われてます。退くようにと……」


あらま


「さようなら」


彼女は再び、背中のブースターに火をつける


「させねぇ」


『FORM RIDE・OOO・GATAURTAR』


ディケイドは頭部はクワガタ、身体はウナギ、脚部はチーターのオーズ・ガタウーターコンボへ


電気ウナギウィップのリーチでラリを縛り、その鞭をクガタホーンから電撃を浴びせながら、チーターレッグで走りこむ


「ぐぅううう!!」


ラリは呻きながら動きを止めた


そして


「仕方ない、ですか」


ブレードで鞭を振りほどき、反撃に出る


俺は素早く反応し、カードをさらに挿入


『FORM RIDE・OOO・TAKAGORITA』


再び、輝きを放ったオーズは頭部からタカ、ゴリラ、タコのタカゴリタコンボへ


タカヘッドの視力で確実に攻撃を見切り、ゴリラアームでかわせない分を弾く


「固いですね」


「ゴリラですから」


受け答えした俺は、ゴリラアームでさらに殴りつけた


タコレッグの脚装甲を8本の触腕状に変化・分裂させて4本を体勢維持に、4本で鞭のように撓らせて、攻撃に移る


「ぐっ」


隙を出したラリに俺は腕からロケットのように射出する特殊技「バゴーンプレッシャー」を放った


「……やはり退かせてもらいます」


そうして、彼女は正面からでは無く、後ろの壁をブースターでぶち破った


あっこから、逃げるのか……


「パオラさん」


「了解よ」


俺の背後から飛び出したのは今回のパートナー


イタリアの国家代表操縦者パオラ・プラタニアさん


「貴方が、イタリア代表の……悪いですけど、撤退させていただきます」


彼女はブースターを点火


しかし……


「無駄よ。私の庭の中心に貴方はいる」


その瞬間、辺りが輝きだす


「な、何ですか!?」


ラリも訳が分からず、驚きの声を漏らした


これが、イタリアの国家代表パオラさんの第三世代型IS


『フィアット・アルピーニ』


機体カラーは緑


特に突飛した部分はないが、最大の特徴とすれば、背中に装備された4本の筒のような細い装置だろうか


これこそが、この機体の骨頂にして、切り札


『カラビニエリ』


背中の4本の装置「コムーネ」と呼ばれる部分から、強力な電磁エエルギーと光沢エネルギーを放ち、最大半径10kmを包囲することが出来る

これは機体のシールドエネルギーが0になるか、使用者が能力を遮断しない限り、決して破れるは無い


「で、出れない!?」


「言ったはずよ。すでに貴方は私の庭園の中……士くん!」


『KUUGA.AGITO.RYUKI.FAIZ.BLADE.HIBIKI.KABUTO.DEN-O.KIBA.W.OOO.FOURZE』


『FINAL KAMEN RIDE・DECADE』


ケータッチを装着


コンプリートフォームだ


「終わらせる」


『RYUKI・KAMEN RIDE・SURVIVE』


俺の斜め後ろに龍騎サバイブを召喚


そのまま、カードを挿入した


『FINAL ATTACK RIDE・ryu,ryu,ryu,RYUKI』


俺はライドブッカーのソードモードを


龍騎は龍の頭部を模したハンドガン型の召喚機『龍召機甲ドラグバイザーツバイ』


を構える


両刃は炎を宿し、×を描いて炎を放った


「きゃああああ!!」


叫び声と共に彼女は崩れ落ち、倒れこむ


「ふぅ。後はお願いします」


それだけ告げて、俺は倉庫から立ち去った


「お疲れ様」


パオラさんが言うと同時に、後続の各国特殊部隊が俺に敬礼をする


やめてくれよ……なんか、気まずい


適当に頭を下げてから、そそくさと倉庫を出た


倉庫からある程度歩いたところに車が一台


黒塗りのベンツだ。しかも、Sクラス


「帰ったか」


後部座席に乗り込むと千冬姉が足と腕を組んで座っていた


「おう。疲れた」


「そうか……出してくれ」


「はい」


言われて、車を動かしたのは学園の化学担当のサリーさんだ


「随分と静かだったが……」


「あんまり五月蝿くするとご近所さんに迷惑だからな」


ペットボトルのお茶を飲みながら答える


疲れた


「織斑先生宅まででいいですか?」


「ああ、そうしてくれ」


サリーさんとの受け答え


俺は窓を眺めながら聞き流す


「明日は休め」


「いいのか?」


不意に千冬姉が言い出した


いいのかな?明日、平日だぞ?


「初めての経験で疲れたろう?明日はしっかり休め」


「あざす」


助かるわ


数分して、家の前で降ろしてもらい家に


「あ〜〜〜〜〜〜〜〜」


リビングのソファへダイブした


「づがれだ〜〜〜〜〜」


そろそろ、今日のことを説明しよう


実は、こんなことが










数日前


「神谷。今日呼び出したのは他でもない……お前の実力を見込んでの頼みだ」


放課後、千冬姉に呼び出されて空き教室へ


「はぁ……」


「これを見てくれ」


渡されたのは一枚の写真


そこには女の姿が


茶色い髪をひとつに束ねていて、眼鏡をしている


どこか、神経質そうな顔立ちだ


「この人は?」


「ラリ・タバレス……国家指名手配犯だ」


へぇ。結構美人な人だけどな


「真面目な話だ」


心を読まないでください


「すいません」


「……IS犯罪対策部隊は知っているな」


そりゃ、もちろん


その名の通り、ISを使った犯罪やトラブルに対応する部隊の事だ


各国からの代表が集い、各国の警察、特殊部隊を動かすことの出来る精鋭部隊だ


本部はアメリカ。育成機関が日本なら、その将来はアメリカにあり


とまで言われる


「部隊はやっと足取りを掴んだ彼女を追跡した結果、日本に渡来したことが分かった」


「なるほど」


「そこで、日本から一人ISを動かせる人間を派遣して欲しいと要請が下った。しかし、現状は芳しくなく、日本の代表は別件で動けない。そこで政府よりIS学園から腕の立つものをと命令が下された」


「で、俺ですか」


「そうだ」


なんて、こったい


「ラリは亡国機業とも繋がっている。逮捕できれば、スコールの足取りもつかめるかも知れん……」


その言葉を聞いて、俺は一気に険しい表情へ


「本当か?」


「ああ、やる気になったか?」


千冬姉はニヤリと口角を上げた


「ああ、やってやる」


「バックにはオーストラリアからの特殊部隊と、イタリアの国家代表操縦者パオラ・プラタニアがつく。入れ」


すると、教室の扉が開き一人の女性が入ってきた


黒の髪を右側にまとめており、顔立ちはきれい


スタイルも腰はきゅっとくびれ、足もすらっと長い


「よろしくね。神谷 士くん」


「あ、よろしくお願いします!」


思わず、きょどった声を出してしまう


情けない……


「ふふ、緊張するのは分かるけど、あまり固くならないでね」


頭を撫でられた


暖かい


「んんっ!!とにかく、そういうことだ!分かったか!?」


「まぁ、いい匂い」


「やめてください。くすぐったいっす」


「あら、嫌われちゃった」


「そ、そこまで言ってないでしょう!?」


「焦っちゃって……可愛いわね♪」


この後、千冬姉が狂ったかのように暴れだしたのはまた別の話











とまぁ、こんなことがあったわけですよ


専用機持ちの皆には結構止められたな


鈴は先生だから知ってたのか冷静だったけど


「皆に、電話するか」


風呂に入ってから、時計を見るとまだ10時


いけるな


まずは、箒っと


「………あ、もしもし?箒か」


『つ、士!?大丈夫か!なんとも無いか!?』


声が、大きい……


「大丈夫だよ。心配かけたか?」


「あ、当たり前だ!」


そりゃ、失礼


「悪い悪い。ま、俺は大丈夫だから」


『あ、ああ……明日はどうするんだ?』


「千冬姉が休みくれたよ」


『それはいい、ゆっくり休んでくれ』


「さんきゅ」


そうして電話を切った


次はセシリアだな


『士さん!お怪我はありませんか!?』


電話に出るなり、急に怒鳴られた


「おう、ピンピンしてるぜ?」


『良かった……本当に、良かった。もしもの事があったら、……わたくし……わたくし……』


電話越しに涙を啜る声が


おいおいおい


泣くなよ


「ありがとな。セシリア……今度、一緒に買い物行こうな」


『や、約束ですわ』


「おう」


皆心配してくれてんだな〜


「あ、鈴か?」


『やっぱり無事だったのね』


「当然だ」


なんか、無事じゃなかったほうがいいみたいな


『ま、アンタは大丈夫だって分かってたけどね』


そうかい


『ま、声が聞けて安心したわ』


「おう、俺もお前の声聴けてよかったよ」


つながりって大事


『ば、ばか!////』


なんでだろう?電話越しに顔赤いのが分かる


しかも、電話切られたし


シャルはまだ起きてるかな〜っと


『士!?大丈夫!?怪我してない!?痛いところある!?え!?たこ焼き食べたい!?』


「言ってねぇよ!落ち着け!俺は元気だから!」


びっくりした……なんで急にたこ焼きやねん


『良かったぁ。心配したよ』


「おう、俺は大丈夫だ」


『ちょ、ちょっとラウラ!今は僕が―――』


『嫁か!無事でよかった』


「お、おう」


多分、奪い取られたんだろうな


シャルが泣いてる声が聞こえる


『今、シャルロットとたこ焼き特集を見ていた。今度連れて行ってくれ』


ブレないね〜


で、たこ焼きってそれかい


次は簪だな


「あ、簪か?」


『つ、士……!だいじょう、ぶ?』


「おう、丈夫だからな」


『良かっ、た……お姉ちゃんも、心配……してたから、電話、してあげて……ね』


なんて優しい娘なんだ!簪は!


「ああ、りょーかい」


さてと……なら、楯無さんに電話しますか


「あ、もしもし?楯無さん?」


『は〜い♪士くん。元気してる?』


なんか、妙に元気だな


「はい、おかげさまで」


『それは、良かったわ♪まぁ、私の後輩だもの、当然よ』


すげー信用されてる


なんか、嬉しい


『本音に変わるわね』


『つっち〜!げんき〜!』


「おお、本音ちゃん!元気だぜ〜」


『さすがだぜ〜。美味しいおかし、お姉ちゃんが買ってくれたからたべよ〜」


「おう、また今度な」


『士君?』


あ、虚さん


「はい、俺ですよ。虚さん」


『良かったわ。無事で』


「はは、無事ですよ。お菓子期待してますね」


『ええ、是非食べに来てね』


よし、あとは……夏海か


『………なに?』


不機嫌モードだああああ!!


ミスった!!!


「あ、えっと……神谷です。元気です」


『そんな分かりきっていることを報告するために私の安眠を妨げるほど貴方は偉くなったのかしら?』


ううぅ……言いすぎだよぉ


「すいません」


その後、10分ぐらい怒られた


『寝るわ……もうかけてこないでね』


「はい」


『ま、まぁ……無事でよかったわ』


「え?」


あ、切れた


最後になんかボソッて聞こえたけどなんだ?


「まぁ、いいか」


寝よう……

-98-
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