「・・・何が情報提供だよ。場所しか分ってないじゃないか」
愚痴りながら協会の重たい扉を開ける。分ったことはそのモンスターがいるダンジョンの地図と力が強いぐらいだった。後の話は自分の従者にならんとかそんな話だらけだった。
最強とまで呼ばれる紅夜を駒にすれば何かと便利なのだ。まず自分の立つ場や命など色々守ってくれるからである。
紅夜はあんまり政治というものは好きではないでない。裏でこそこそ何やっているか分からないしこの大陸の国政院は賄賂でアブニールという会社の悪行を傍観していると噂で聞いたこともある。さすがに確証はないので深く首を突っ込んではいないが・・・そんなことを考えながら夕焼けに染まっていく空を見上げ今日はここまでと思い、足を進めるとそこにはどこかで会ったような三人女性
「待っていたよ!えっと・・・『ごくせん』!!!」」
ドンっ!!
「なにが不良高校生と熱血女性教師の青春ドラマだ!?おれは『黒閃(こくせん)』だ!!」
なにかの反射神経が働いたのかその場でずっこけてしまった紅夜。よくみると先ほどにも出会った女子メンバーだった
「ちょっと、ねぷ子。いきなり名前間違えるのが失礼だと思うわ」
「あれ、間違った?というか『ごぼう』さん。ナイスリアクション!夢はリアクション芸人?」
「もはや原型すらねぇ・・・こいつら一体なんだよ・・・・・」
目上の人と話す言葉を知らないのかと考えてしまう。こいつら助けない方が世の中の厳しさを知ることが出来たかもしれない
「私は愛と正義の謎の美少女ネプテューヌだよ!因みに呼び方はねぷねぷ、ねぷ子でもなんでもあり!」
「自分から言うのはどうかと思いますけど・・コンパといいます。よろしくですぅ」
「私の名前はアイエフよごめんなさいね。ねぷ子は少し常識知らずのところがあって・・・」
「疲れた。モンスターと戦ってないのにものすごく、疲れた・・・俺の名前は零崎 紅夜。紅夜が名だよろしく頼む」
後に紅夜は語るあの三人との出会いが俺の始まりだったんだと希望と絶望が交差するこの物語は、奇跡の出会い、または運命のいたずら、偶然の偶然と呼べた。
「・・・強いモンスター? 」
「そう!私達はいーすんを助けるために鍵の欠片っていうアイテムを持っている強いモンスターを探しているの。あいちゃんから聞いたんけどこぅちゃんは大陸中を回って強いモンスターを倒し回っているんでしょ?なにか知っているのかな〜って」
現在四人は宿屋のレストランにいた偶然か否か泊まる予定の宿屋が一致していてネプテューヌは先陣を切って話を進めていた。
「・・・最初に一言こぅちゃんとは俺のことか?」
「そうだよ。こぅちゃんいい愛称だと思うわない?」
・・・・あって早々名前を間違えるわ。仲良くもないのに愛称付けるわ。妙に馴れ馴れしくないかと思う紅夜だったが彼女の笑みをみるかぎり悪気なしのようで、これも彼女の個性なのかと割決めることにしようと紅夜は心に決めた
「あの、こぅさん。何かとても疲れた顔しているんですけど大丈夫ですか?」
「コンパ。今はそっとしてあげなさい普通なら私達怒鳴られるほど失礼なことしているんだから」
アイエフの提案はあの『黒閃』に情報を求めることにした。彼は大陸中を渡り歩き軍隊でも中々手を出せない強豪のモンスターをことごとく倒して行っているからだ。彼ならばネプテューヌの捜すアイテムを知っているかもしれない。そのことを自分のパーティーに話すとそれじゃ聞いてみようと話になったのだが・・・恐らく彼からしたら私達の好感度は零に近いでおろうとアイエフもまたため息をついた
「まず、その鍵の欠片とやらはしらない。強いモンスターは心当たりが多すぎる、なにかその鍵の欠片を守るモンスターの特徴とかないか?」
「えっと・・・・・とにかく強いの!」
「・・・・・・・・・・はぁ」
まさにため息しか出ないこの子にはもう少し後先考える思考能力はないのか
「残念だけどそれだけじゃ、どうしようにも出来ない。ラステイションの強いモンスターが棲んでいそうなダンジョンを虱潰しに探したら一ヶ月以上はかかるぞ」
更にモンスター急増と異常の現象によりより多くモンスターがいることが予想できる
「そっ、そんなに!?」
「大陸中を歩き回るんだそれぐらいは必要だ。それにお前らの今のお前達には無謀だ。死ぬぞ」
今度は本気で眼力を込め睨む。好奇心は猫を殺すそんな危ない所に案内なぞ出来るかその気持ちだけは本物と分ったが早すぎるせめて今の自分達よりかなり強くなってもらわないと不安で溜まらない
「だって、ねぷ子。やっぱり自分達で調べるしかないみたいよ」
「う〜〜」
さすがのネプテューヌも紅夜の眼力には竦み呻き声を出す
「お前達が今よりもっと強くなったら教えてやるよ日々精進。毎日の積み重ねがなによりも大事だ」
自分は女神に匹敵するほどの実力者と呼ばれている紅夜、確かに紅夜には才能があった、しかし才能を把握し理解してなければただのゴミだ。
紅夜の目的はいつもひとつで誰かをモンスターと災害から救うこと、故に
「はぁ、ネプテューヌちゃんその鍵の欠片っていうアイテムの特徴は?」
「えっ?」
「もしかしたこの先その鍵の欠片っていうアイテムを見る機会があるかもしれないかな。もし見つければお前達に譲るよ」
目の前でだれかの笑顔が失う事は紅夜にとってそれがとても苦痛だった
「きゃ!?」
ピチャ!とてもカッコいい思考はいきなり中断されたそれは同じレストランにいた小さい子供が躓き手に持っていたジュースは一回転、見事に紅夜の頭に落ちた
「・・・・・・・」
そのジュースはオレンジジュースらしく紅夜の漆黒のコートはオレンジ色に染まっていった。とりあえず今日は厄日なのかとネガティブな思いを抱きつつ立った
「ふぇぇ・・・」
その子供はまだ幼くしかし見た目怪しい度MAXの紅夜が近づけば勿論怖がりその瞳からは今にでも大粒の涙が零れおちそうだった
「大丈夫か?大きな音したけどどこか怪我はないか?」
子供と同じ目線にまで腰を落とし手を差し出す
「ふぇぇぇぇぇ・・・」
しかしその子供からは全身真っ黒の誰かが近づいてくるフードで隠された喜怒哀楽の見ることがないその顔は更に子供の恐怖を煽り、嗚咽交じりの声音を零す。
「・・・・・はぁ」
今日だけで何度ため息をついたか分らない。とりあえずと紅夜はフード掴みゆっくり捲りあげた・・・
「「「「・・・・・・・・・」」」」
空気が変わった。芸術、そして神秘的。もっと言えば神々しいといっても違えない。
首まで伸びた白銀の髪、右目は蒼穹を見るような蒼き瞳、左目は真紅のような紅き瞳。
一流の画家でさえ造れないような顔は優しく子供を見てその様はまるで現実化させた神話の一ページすら思わせた。
「一人で立てるか?」
「・・・うん」
今にでも落ちそうだった涙は引っ込み少しよろけたが無事に立つことが出来た子供を紅夜は優しく頭を撫でた。
「あ〜〜もう、今日は運が悪いなホントなにかに憑かれているのか俺」
愚痴を零しながらなんだかんだあの子供を両親のところまで送りつけ問題解決。ネプテューヌ達が座っていて自分が座っていたテーブルに再度腰を落とす。
ジュースによりベトベトになったコートは既に従業員にクリーニングに出してある明日、昼前までには頼んでいる。 因みに紅夜の今の服装はTシャツに長ズボンと至って普通だ。
「「「・・・・・・」」」
「・・・・なんだよ」
紅夜を見つめる三人の視線それぞれ反応が違うが
ネプテューヌは紅夜を見ながら何度も瞬き
コンパは口をあんぐりと明け唖然とし
アイエフはその余った袖で一度紅夜を見ては目を拭いてはまた見るとしたループ
「本人だよね?忍法身代わりの術で入れ替わりましたなんて無しだよ!」
「・・・・・・かっこいいですぅ」
「噂ってほんとだったんだ・・・」
上からネプテューヌ、コンパ、アイエフの順に口を動かす
「なんでこうも顔見せると同じような感想が返ってくるんだ?・・・そんなに変か俺の顔」
知り合いの冒険者も顔を見せた瞬間、口を空けて愛剣を落としたほどの驚愕ぷりを見せたことを思い出す。
「ところでこれ以上の話はあるか?そろそろ明日の用意をして寝たいんだが・・・」
「う、うん。こぅちゃんは私達とパーティー組んでくれないかな?」
「ちょ、ねぷ子それは・・」
それはまだ紅夜を待っていたときに出た話だったあの人がそんなに強いならパーティーに入れちゃおうみたい話だった。たしかに紅夜が自分達のパーティーに入れば泣いて喜ぶほどだが彼は今までパーティーを組んだことがない。
否、必要がないと言ってもいい。誰からも助けを必要としない孤高でありながら絶対的力を持つ彼には自分と同じくらいの強さしか興味がないとまでささやかれる程だ。そして帰ってくる返事も予想して通りだった
「無理無理、お前達と俺とじゃ違い過ぎる」
「え〜〜、」
納得いかないようなネプテューヌがそれは当たり前だ。紅夜は自分が他人に自分の闘いを見せるのを拒否していたその理由は簡単だアレを見せるのも嫌だったし更に言えば自分は人間でありながら人間として見られない者、彼女達のような綺麗な者に近づいてはいけない
「それじゃ、お休み俺はもう寝る。じゃあな」
ネプテューヌ達は何か言っていたような気がするが、今の紅夜には聞く耳はなくもう会わないでしょうとでも言うように去って行った