「あーー、……いい天気だ」
広い草原とどこまでも広がる青空を見ながら歩く紅夜は呟いた。全身を隠す様な漆黒のコートを靡かせ、背中には自分の身の丈はある大剣『黒曜日』を背負い渦巻く気分から逃走する思いで、どこにも焦点に合わせず瞳で歩んでいく。
「ねぇ、紅夜……黄昏るのは言いけど前を見ながら歩かないと危ないわよ?」
後ろを歩いているアイエフの指摘が聞こえる。
しかし紅夜の置かれている状況が原因で彼は意識と言う概念を忘却しようとしているので彼女の声は届かない
「「♪〜〜♪〜♪」」
左からは豊満な感覚がいっぱいに伝わる。
右からは未熟な青い果実のすっぱさが伝わる。
紅夜は意識をしてしまえば負けだと思い必死にクールになれと内心、言い続ける。
「こぅちゃんって……温かいね」
「そうです……思わず眠ってしまいそうですぅ〜」
「こら、眠らないの紅夜が迷惑そうな顔しているわよ」
このパーティで恐らく一番、一般と近いだろうアイエフに乗るため紅夜は急いで口を開く。
「そうだ、いい加減に離れてくれないか?まだ合って一日程度しか付き合いがない男に抱き着くのは不謹慎だと思うぞ」
その気になれば解くことは可能だが可憐な彼女たちを無理やり振り払うのは男として最悪な行為だろう
「そうなの(です)?」
……常識知らずと、天然ボケに言っても無駄か?と紅夜は思考を動かす
「それよりこぅちゃんってなんでいつも顔を隠しているの?もったいないよ物凄いイケメンなんだし」
お返しとばかりにネプティーヌが口を開く。その問いに紅夜はその隠したフードの中で少し困った顔して
「ほら、おれの目。オッドアイっていうんだけど気味悪いから・・・それで隠すようにしているんだ」
まるでなにかで固めたような言葉を言う紅夜その本心は隠れたままだった。
「そんなことないよ!すごく綺麗だと思うよ!」
「そうねサファイアとルビーみたいで綺麗だと思うわ」
「そうですよ!こぅさん!」
三人の言葉に意外そうな顔をする紅夜、そして静かにフードに手を掛け脱ぐ。露わになった太陽の光に煌く銀髪、蒼と紅のオッドアイ
神秘的とも言えるその光景にネプティーヌ達は思わず頬を赤らめた
「ありがとう」
太陽をバックに微笑む紅夜。何無言わせないその完璧と言ってもいい絵はさらにネプティーヌの温度を上昇させた
「かっこいい、かっこよすぎるよ・・・///」
「太陽バックであの顔は卑怯でしょ・・・///」
「はぅ〜胸がドキドキするですぅ〜〜///」
「???」
三人のリアクションを理解できないように紅夜は顔を傾げた。
「そんなことないよ!すごく綺麗だと思うよ!」
「そうねサファイアとルビーみたいで綺麗だと思うわ」
「そうですよ!こぅさん!」
三人の言葉に意外そうな顔をする紅夜、そして静かにフードに手を掛け脱ぐ。露わになった太陽の光に煌く銀髪、蒼と紅のオッドアイ
神秘的とも言えるその光景にネプティーヌ達は思わず頬を赤らめた
「ありがとう」
太陽をバックに微笑む紅夜。何無言わせないその完璧と言ってもいい絵はさらにネプティーヌの温度を上昇させた
ピコーン
「……紅夜が誰かにフラグを立てましたわ。・・・帰ってきたらOHANASIですわ」
その時、とある緑の大地に立つ協会の一室でコントローラを手に恐ろしい笑みを浮かべる女神がいたとか
さっきものすごい悪寒がしたがとりあえず無事にダンジョンに到着、ダンジョンの中は驚くほど静かだった
「・・・・・・酷いな」
先へ進むとネプティーヌ達も思わず顔を青ざめた。もともとこのダンジョンに住んでいたであろうモンスターの残骸が無残に転げ落ちていた
「まったくね」
多少なりともなれているであろうアイエフは自分の武器カタールを装備する
「ネプティーヌは変身しとけコンパも武器くらい構えとけ・・・いつ奇襲されてもいいようにな」
地面に残るのは巨大な斬痕、武器を持っているのかそれとも鋭い突起があるモンスターなのか
『SET UP』
機械音が聞こえネプティーヌが光に包まれる身長の伸び特殊なユニットに身を装着させ濃くなった紫色の髪は三つ編みのツインテールとなりその手には大太刀が握られた。そのまなざしはさきほど明るかった彼女とは違い、凛々しく見えた。
「よし、前衛俺とネプティーヌ、後衛コンパだ。アイエフは中衛だ分かったか?」
思えばこのネプティーヌ達のパーティ(紅夜抜き)バランスがいい、前衛にパワー系ネプティーヌ、中衛にオールラウンダーのアイエフ、回復役のコンパ。とな紅夜はオールラウンダー何だが一人の時が多いためパワー系になっている。
「分かった」
「頑張るですぅ!」
「えぇ、分かったわ・・・初めて見たのに驚かないのね」
「いや、内心驚いているけど。ネプティーヌはネプティーヌってことは分かっているから、な」
「そう、・・ありがとう」
最後の方は聴こえなかったが薄らと笑顔になるネプティーヌになる。
いつもと違うネプティーヌに紅夜は胸が高鳴ったがすぐに心を入れ変える。
「・・・・・」
背中に感じる二つの鋭い視線に身の危険を感じるが腰を下ろし地面に手を当て意識を集中させる
「なにをやっているのですか?」
「こんだけ殺戮したんだ・・・もうこのダンジョンに他のモンスターはいないと思っていいだろう。そして情報によると巨大なモンスターらしいからな足音さえ感じらればだいたいの位置は掴める」
すごいいんですねぇとコンパと呟く。そして目を閉じ自分の意識を膨張させそれを根のようにするイメージをする。
「・・・・・・・・」
緊張の時が過ぎ去る。ネプティーヌ達は紅夜を囲むように円陣を組み奇襲に備えた
「・・・・・!?全員離れろぉぉぉ!!!」
「えっ?」
一瞬で紅夜はネプティーヌ達を弾き飛ばし神速の速さで抜刀する!
ガキンっっ!!
上から巨大な斧が振り下ろされるそれを『黒曜日』で受け止める
「っ・・・」
それは確かに巨大なモンスターだった。
巨木のように太い腕と足に散々斬ってきたこと証明する赤黒くなった二つの斧、 頭を守るための兜その全長は約5mはあるだろう
「は、悪趣味な野郎だな!!」
じゃらじゃらと首にぶら下がる骸骨のイヤリング、それはこのあたりのモンスターの骸骨だったりこのモンスターを討伐しに来て返り討ちにあったであろう人間の骸骨も
「はぁぁぁぁ!!!」
もう片方の剛腕が振るわれようとした時、それをいち早く察知したネプティーヌが突進する!
「■■■■■■■■■■――――!!!!!」
耳を劈くような咆哮が響き突進するネプティーヌにカウンターを入れるように斧を振るう
「くっ!」
ガキンっ!!
ネプティーヌはすぐに刀を前に振り斧と鍔迫り合いなる
「−−−!!」
紅夜は身体を一回転させ受け止めていた斧を地面に落とす。そのことによりモンスターの注意が紅夜に向くその瞬間、ネプティーヌは斧を受け流しそのモンスターの顔前に立つ
紅夜は『黒曜日』を地面に突き刺し円を描くように遠心力を込め
ネプティーヌは大太刀を身体を巻くように構え二人の一撃はモンスターの腹と顔を捉えた
「・・・・中々やるじゃないか。ほんとに口だけじゃなかったんだな」
「当たり前じゃない。私は世界を救うのよ。この程度朝飯前だわ」
吹き飛ばされモンスターは壁に激突しその兜は一部完全に断たれ、顔が一部露わになにその表情からは憎悪が溢れだした
「二人ともすごいですぅ・・・」
「えぇ、そうね。あの百戦錬磨の二人がそろえば敵なしね」
「■■■■■!!!」
二人の会話を遮断するようにモンスターが吠える。空気が振動しあふれ出る殺気が死を誘う
「いくぞ、ネプティーヌ。」
「えぇ行きましょう。紅夜」
そんな時、二人は笑った。
いや、彼らの後ろにいるアイエフ達も笑っていたこの程度の壁も四人とっては十分超えて行けるそんな根拠もないが、彼らにとってこれは出来て当たり前のことなのだから。
「ォォォォォオ・・・!!!」
低い咆哮と共に崩れていくモンスター
怒りで我を忘れたのかやみくもに攻撃してくるのでアイエフとコンパで注意をそっちに回し
その隙に紅夜とネプティーヌの一撃が立て続きに決まりついにその生命が絶たれた
「手ごわかったですぅ・・・」
「体力が底なしだったわ」
「このパーティなら天下をとれる!」
「はは・・・元気だな」
上からコンパ、アイエフ、プラティーヌ、紅夜として順番でコンパとアイエフは疲労の表情を見せるがネプティーヌは元気で喜んでいた。紅夜も黒曜日を地面に刺し地面に座り込んでいた
「ふぅ、『癒しの風よ。戦士たちにしばしの休息とご加護をーーーフォース・シールド』」
詠唱を詠み、地面に手を置く紅夜を中心に魔法陣が展開されネプティーヌ達を包んでいく。
「えっ、こぅちゃんって魔法も使えたの?」
「あぁ、基本的には肉体強化の魔法しか使わないんだが一通りは出来る。因みこれ守護と回復の両方の魔法だからしばらく休もう」
「本当すごいんですねぇ。魔法も使えて剣術もすごく強いです、弱点がないんです」
「そっか?。まぁ一人でいろいろこんなモンスターを相手にしてきたんだ。これくらい出来ないと今頃モンスターの胃袋の中だよ」
亡骸となってモンスターを横目で見ながら紅夜は思う、彼女たちがいなかったら間違いなく自分はアレを使っていたと思わせるほど。このモンスターは強かった。
「ほんと、私たちと合ってそう経ってないのにすぐに戦術を組み立てたりするしほんと強いわね。いい経験になったわ」
「経験積めば誰にでも出来るようになるさ」
そんな雑談を繰り返し傷が癒えダンジョンを後にするネプティーヌ達、その後ろで紅夜は静かに空を見ながら思考を動かす
なぜこのモンスターは街を襲わなかった?
最初にこのダンジョンに来たときこのモンスター以外のモンスターは全て殺されていた見た限りもう白骨化しかなり時間がかかっているはずなのにそうなると勿論食料がないたまに来るであろう冒険者もこの巨体だ。
この巨体を維持するにはかなりのエネルギーが必要になるはず・・・
ここのダンジョンは正直他のダンジョンに行くよりずっと街の方が近い奇襲を考えるほどの知識があるにも限らずだ
まるで・・・誰かが|こいつ飼育し操っていたように
「(悪い予感がする・・・)」
晴天の青空を覆い隠すように黒雲が覆っていく、一雨来そうだと心のなかになにか突っかかるものを感じながら紅夜は足を速めた。
「フフ♪」
全て見られていたことを知らず