小説『超次元ゲイムネプテューヌ 黒閃の騎士』
作者:()

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古いダンジョンの中で剣が奏でる独特な金属音がなんども鳴り響く
音の激しさが増すほど柱はあっというまに解体され
影が交差するほど天井は抉るような斬痕が刻まれ
爆発音が響くと同時に地面はいくつものクレーターが形成される。

戦いは人知を超えた戦闘となっていた












「このぉーー!!!」
「ーーーつ!!」

ーーー魔衝天滅


縦一直線に切りかかれる紅夜は直ぐに回避不能と思考を動かし、黒曜日を地面に突き刺し横一閃になぞる。込められた魔力はそれに沿った斬撃の壁となりブラックハートの足を止める。
その瞬間を狙い紅夜は黒曜日を双剣状態に変え、片方の剣を見えないブラックハート目掛けて投擲する。

「!!!」

当るかと思われたが並はずれた身体能力を持つブラックハートにそれを天井へ弾き黒曜日の片割れは地面に突き刺さった

「−−−!!」

その隙を待っていたように紅夜は特攻するが

「掛かったわね!」

それを予測してたブラックハートの手には拳銃が握られ紅夜は「嵌められた!」と思考は動くが身体の停止は間に合わない

バン!バン!!

火属性のバレットが発射され、紅夜に着弾しコートを燃やし更に追撃を恐れ後ろに下がる

「それも読めていたわよ!」

大きく跳躍し紅夜が下がった位置に大きく振り下ろすブラックハートの一撃、紅夜はすぐさま黒曜日を地面に刺しその表面を蹴り無理な体勢から前へ飛んだ。

「ふぅ、危ない・・」

無事に地面に着地し額に流れる汗を袖で拭く、戦って分かったがブラックハートもプラティーヌと同じパワー系一撃一撃が凄まじく強い。
もし、一発でももらえば一気に体力を持っていかれるそれだけでも驚異的なのに銃や体術も上手い

「強いじゃない。私とこれだけ戦えるのは人材は中々いないわよ・・・でも今のあなたは丸腰ね」

ブラックハートの言うとおり今の紅夜には武器はない黒曜日の片割れは天井にもう一つはブラックハートの近くに突き刺さっていたあと実は紅夜、銃など遠距離の相手に対抗する武器は持ってなかったりする。かなり無謀と思われがちだが紅夜それでも戦えるそれには理由がある。

「・・さすが|守護女神(ハード)今まで戦ってきた中でトップに強いよ」
「ありがとう。でもそんなこと言っていていいの?」
「・・・正直、参ったよ。こうも簡単に追い詰められたのは初めてだ」

深くため息を付く。表面上はやつれたように見えるかもしれないだが、紅夜の内心大きく昂っている面白いただその感情が止まらない

「念には念をだな・・・『来い』」

言霊を発言する。そしてそれに反応する黒曜日

「なっ!?」

ブラックハートは驚愕の表情を見せた。紅夜の黒曜日はまるで意思を持ったように地面から抜かれ持ち主の元へひとりでに戻ってきたのだ

「魔法の一種でな。まぁ、こんな応用もあるんだ」


双剣を大剣に戻し再び構える紅夜たとえ銃が使えなくても紅夜には魔法があった。いままで危ないの時は決まってこれを使いピンチを乗り越えてきた。
何故魔法が使えるのか、学習などはしていない。
ただ、知っていたのだ。本能的に

「なるほど、いくら弾いても持ち主のところに戻る武器なんて便利ね。でもーーー叩き壊したら問題ないわね」
「結構怖いこというなんだなブラックハート様って」

冷や汗かきながらこの武器、結構高かったんだがなぁ呟く紅夜






「次で最後にするわ紅夜も全力(・・)で向かい打ちなさい」
「・・・・・・・」

ブラックハートの言葉に紅夜は眉を細めた。
確かにに彼女は強い|アレ(・・)を使わないと勝率は半分あるかどうかだ。でも、使っていいのか?これは相手が殺していい奴だからこそ使える技だ。

「・・・あなた自分に(リミッター)を掛けているんでしょ?」
「!!!」

ブラックハートの問いに紅夜は瞳を大きく開いた

「なんかあなたと戦っているとむしゃくゃするのよね。全力は出しているけど本気じゃない感じが」
「・・・・・・」
「あなた・・・私を舐めているの?」
「そんなこと・・・・ない」






否定はするものの嘘を付いていることは誰もが見ても分かってしまうほど紅夜の顔は歪んでいた。
声も酷く震え濁っているため誰が見てもそれは分かった。
紅夜は自分に恐怖していると

「・・・まぁいいわ。少し期待外れだったけどーーーこれで終わりする」

力がブラックハートを中心に渦巻く間違いない来る彼女の最大の一撃自分はどうする今自分に出せる最大の一撃は絶対に彼女の敵にならない


ザザザザ・・・


意思の強さも
純粋な力も
全て彼女が勝っている


ザザザザ・・・


頭に鳴るノイズ音に紅夜が握る剣の握力が少し弱まった

「ーーーー!!!」

黒い閃光となって迫ってくるブラックハートそれは、大気を切り裂きまさに流星の如く紅夜を自分の範囲に収め両手を使った最大な攻撃は


ーーーー『|偽神化(シン・クレアトール)


「えっ?」


そんな言葉しか言えなかった。許されなかった気付けば自分は宙を舞っていた見えるのは天井、自分の身体は痛さを超え全身が麻痺しているかのように重力に従いブラックハートは地面へと落ちた。なんとか動かせる顔を少し動かせば見えた。


紅夜じゃない紅夜が
身体も顔も確かに紅夜だった
横顔だけしか見えないがそれはまるで変身しているように髪と瞳の色は変化していた
違うのは紅夜の身体から溢れだす魔のオーラ
陽炎のようにゆらりゆらりと禍々しくそれは揺れ
それはまるでこの世全ての悪の形が具現化したようにブラックハートは感じた。

「・・・・・・」

紅夜じゃない紅夜が振りむく
そしてその全貌が露わになりブラックハートは思わず息をのんだ。


絶望に沈んだような淀んだ瞳が
自分が負けた悔しさより
その思いが勝りゆっくりと震える声で

「な・・なん、で。そん・・な顔・する・・の、よ?」

自分でも消えそうな言葉だったのは分かった
だがその問いは紅夜じゃない紅夜に届いていたらしく

『−−−−−−』

その答えを理解できないままブラックハートの意識は暗黙に沈んでいった。






倒れたブラックハートを見つめる影、それはこの世とは思えない悍ましい空気を感じさせる邪悪を形容したオーラを身にまとった紅夜だ。

『・・・・なんで俺はこの力を使ったんだ?』

複数の人語と片言が混ざり合った声で呟くギリギリだったもう少し歯止めが利かなかったら間違いなく本能的に彼女を殺していた。この力は最初から頭の中にあったものがあまりの強大な力の性で理性が飛びそうになる

『解除』

その言葉と共に魔のオーラは一気に拡散し変化していた髪と瞳は元通りになった

「・・・・・あぁぁ」

負けたくない。
そんな軽い気持ちで彼女を傷つけてしまった後悔が尽きない自分への怒りが湧き上がる

「・・・気持ちわる」

気を失った彼女を背負い彼はダンジョンを後にした冷たい雨にうたれながら



なんと自分は愚か者だろうと心に刻みながら







-7-
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