小説『俺はとんでもない人に好きになられたかもしれない!』
作者:72マヨ()

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8話「僕ハ隠シテタワケジャナイ。君タチガ聞カナカッタダケダ」


「…いいのか丞」

「いいよ。俺に失礼とか、江島の考えることなんてないさ」

「そうか…」

江島は、そう言うとふぅとため息を一つ。

「あれは、俺がまだ小学二年のときかな…」

−9年前−

「明ー!お帰り!」
「おぉ、ただいま」
「明、何日ぶりだよお前」

明に真登はべったりだったけど、俺は結構明に対して怒りを覚えていた。

それもそのはず。
明は小学一年と二年の児童を女のところに行くと二人っきりにさせていたからだ。

でも、それは、大人としてのどうのっていうことで怒りを覚えていたわけではなく、
ただ単に、寂しかっただけだった。


「おぉ、江島は、すっかりお兄ちゃん気分か?」
「うるさい。明なんか食べる?もう昼だけど」


「…江島、料理出来るのか?」

そう言う明の目は輝かしくて、俺もちょっと褒められた気分になった。
それに、俺の料理を本当にうまそうに食べる明を見て嬉しく思った。


その晩のことだった。

「キャー!」

そう響いたのは、隣の大家さんの家だった。

近所の人が、大家さん家の周りに集まる。


「大家さん。どうしたんですか?」

俺が大家さんにそう尋ねると、大家さんは頭に血ぃ昇らせて
「どうしたもこうしたもありませんよ!お宅の父親はどうなってるの!」

俺も近所の人もそんなお説教は初めて聞いた。
親が不甲斐なくて子が怒られる。

「家の親が大変無礼なことをしたようですが、何をしたんですか?」

「……子供に言えるかい。そんなこと」

俺は、テレビで見た親が子の迷惑をかけたときの相手の親への台詞を言ってみる。

「いえ、家の親をしつけるためにも、俺には知る権利があると思いますが」

近所の人は、小学二年の男の子だとは思わなかっただろう。

「…たく、その話術はどこで覚えてきたのさ」

大家さんはそう呟きながら事件の真相を話す。

「あぁ、本当に申し訳ありませんでした」
大家さんは事実を話したが、その内容は通常の小学二年の男の子が理解できるようなものではかった。
通常のならだ。
俺は通常ではなかった。明はこれと同じことを一回起こしたことがあったのだ。



「えっ…」

真登ちゃんは、江島の話を聞く度その驚きの顔を見せた。

「なんだよ」

「あたし、こんなの覚えてない」
「まぁ、小学一年だし、しょうがないよ」

「そーいえばさ、なんで江島は真登ちゃんと兄妹だってこと隠してたの?」
「えっ?」

さっきからぽけーッと話を聞いてた魁人が聞いた。

「あぁ。別に隠してたわけじゃないよ?誰も聞かなかったじゃん」

……。

「なんじゃそれ!そんなん、目元そっくり!もしかして兄妹?って気づける方がすごくないか?」

「いや、気づくやつは気づくだろう」

江島は不思議と冷静にそう言った。


「あ、何か忘れてると思ったんだけど…今思い出したわ」

なにやら考え込んでた加藤がそう言った。

なんだよ。忘れてることって。


「あのさ、なんで真登ちゃんは江島のこと江島先輩って呼ぶわけ?」

「えっ?」

……。


「確かに!江島の言うように隠してないんだったら兄ちゃんって呼べばいいじゃん!」

「……」

真登ちゃんは、江島に視線をやった。

「別に話も良いぞ」


真登ちゃんの視線にため息をつきながら江島はそう答えた。

えっ!?



なんだよ。話しちゃいけないような内容なのか?



「…兄ちゃんがそう呼ぶなって言ったから…」

そう言うと、真登ちゃんは俯きながら指を下唇にあて、上目遣いでこっちを見る。


いや、見るな!



断じて惑わされるな自分!



…って…。今、真登ちゃん今重要なこと言わなかった?


「おい!江島!」


理科準備室から逃げようとしてた江島を俺は捕まえて、


「どーいうこと?」


と聞いた。


「俺は、真登に、いつか面白いことが起こるかもしれないから俺がいいって言うまで呼ぶなって」


……。

「お、面白そうなことって!お前なぁ!」

「俺だって、こんなに面白い光景になるとは思わなかったよ」


そう言って、江島は笑い始めた。

「ぷ、はははははは!ははははひーひー」


今までこらえてたのかは知らないが、江島の笑いは止まらず、理科準備室を出た廊下まで響き渡った。




「つまりだ、俺はそう言っただけであって、俺に責任はない」





江島は、そう言い切った。






「……今の話を聞く限り、全ての元凶はお前しかいねーだろ!」


またもや、理科準備室からでようとする江島に魁人が言ったそのツッコミには、
そこにいる全員がコクリとうなずいた。

-8-
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