小説『俺はとんでもない人に好きになられたかもしれない!』
作者:72マヨ()

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9話「美少女ノ暗イ過去ニ惑ワサレナイヨウニ気ヲツケヨ」



「ところで、なんで帰ろうとしてるの?まだ続きだろ」

「……」



「お前は、引き際を知らないのか…」


江島はそう言うと、椅子に腰掛けた。



「明が犯した罪は、本当に最低だった」

「何だったんだ?」

「……襲ったんだよ」



江島は、小さくそう呟いた。

襲った…。大家さんの…


「あぁ。大家さんの娘さんを無理矢理ね」

「……」


江島は、そう言うと、続きを話し始めた。




一回目は、俺が小学一年のとき。
その時は、相手も多少同意してたことから話し合いで解決できた。



が、


今回は、そうはいかない。
相手は、大家さんの娘。まだ、高校生だった。
つまり、初めてだった。


初めてをこんな形で奪われたんだ。
本人も、大家さんも許せなくて、次の日には、警察に連れて行かれた。



明も認めたんだ。だから、明は3年刑務所へ行った。
大家さんたちは、もっと入ってればいいと言ってたけどね…。


明がそんなことをして、俺たちが、大家さんのところで住めるわけない。
だから、俺たちは、ばあさん家で住むことになった。


明の居ない生活は、すごく安定してた。
毎日が同じリズムで動いてる。俺はそれがとてもいいと思った。

でも、真登は違った。


こいつは、刺激を求めてた。


だから、3年が経って、明が帰ってきたときは、俺はがっかりしたし、真登は大喜びした。


毎日同じリズムで回ってたのが狂い出す。
そう思ったけど、やっぱり「お父さん」が帰ってきたのには嬉しかった。


ある日、

「江島、真登。父さんな、お前らの父さん止めるわ」


俺は明が帰ってきて喜んだことを後悔した。
裏切られたんだ。



父さんを止める。
そう言う明の横には、いかにも水商売をしてるなっていう女の人がいる。


「その人と暮らすの?」
「…うん」


俺は、もう怒りで溢れてた。

だから、俺は、台所にあれを取りに行って、



「さっさと、出てけ!二度と帰ってくんなよ!二度と俺たちの前に姿を出すな!」


そう言って俺は、台所から取ってきた塩を玄関にばらまいた。



「うわーん…明は、あたしが嫌いなの?」
「…真登…」




明は、そうやって姿を消したのに加えて、


「あっ、ない!」


俺と真登がばあさんと一生懸命貯めてきた貯金もおろされててもう何も残ってなかった。



そして、親権はばあさんが持つことになる。
で、明が警察に度々世話になってて、上園の名を使うのは、俺たちにとって酷だと言うことで、
ばあさんは養子に出した。

そして、俺は甲斐田家へ。真登は咲間家へと行き、もうそれから会うことはなかった。





「明、ひでーな…」

「そんなことがあったんだ」

賢木と加藤は、そんな感想を述べると静かに理科準備室を出て行った。



「…なぁ、明と丞のどこが似てるんだ?俺にはさっぱりなんだけど」

魁人がそう言うと、

「まぁ、今の話じゃな。でも、たれ目なとこと明がマシな頃の顔が丞にそっくりなんだよ…」



江島…。真登ちゃん。


「……。真登ちゃん。俺だったらいつでも代わりになるよ」

俺は咄嗟にそんなことを口走った。

「ほ、本当ですか!!!!!!」


そんな真登ちゃんの輝く目を見て、
自分の言った言葉の意味をもう一度確かめる。



……。


「では、咲間真登、これからも先輩を好きであり続けます!」




し、しまった!!!!!!!!!!!!!!

-9-
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