小説『ボーンシルヴィアの罪』
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顔を殴られ、棒で殴打され、冷水を浴びせられ、唾を吐かれてもなお、僕の信念は折れなかった。

どんなに痛くても、どんなに苦しくても、必ずシャーリィだけは救ってみせる。

もう…シャーリィしかいないのだ。僕の家族は、もうシャーリィしかいないのだ。

守るべきものの喪失。
それはつまり僕の?生きる理由?の喪失を意味する。
?生きる理由?を失えばきっと僕の心は折れてしまう。
シャーリィをこの収容所から解放するという信念だけがあらゆる苦痛、あらゆる絶望から僕を守った。

信念だけが、頼れる全てだった。

執拗な罵倒と容赦のない暴行の末、僕の体はみるみるうちに衰弱していった。
自分から立ち上がる事も、抵抗する体力も残っていなかった。
「どういう事だ。サンチェス。説明しろ」
誰かの声が聞こえる。
「貴重な鉱石を落下した罰です。反抗的な態度が消えないので教育している所です」
「ふざけるな!こんな子供を捕まえて…貴様、恥ずかしくはないのか!」
「はい。中尉殿」
「貴様…サンチェス=エベール。管理将官として命ずる。直ちにギルバート=スチュアート=ミルを解放しろ」
「…」
「復唱しろ!」
「はい。中尉殿。直ちにギルバート=スチュアート=ミルを解放します」
「急げ」
僕の意識はそこで途絶えた。

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