小説『ボーンシルヴィアの罪』
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「ここの兵士達の多くは所属していた部隊から追い出された者たちだ。だから人一倍劣等感が強い。自分の中に溜めた不満をもっと立場の弱い人達にぶつけているんだ」

「ジャック中尉は…どうして僕にこんなに優しくしてくれるんですか」

「俺の娘が君ぐらいの年だから…っていうのもあるかも知れない」

ジャック中尉は自嘲する様に小さく笑った。

「家に帰って妻と娘に顔向け出来なくなる様な事はしたくない。俺は兵士だ。敵を殺すことは仕方ない。だが、敵でもない人間を痛めつけて殺す事は人間として最低な行為だ。俺は最低な父親にはなりたくない」

「…」

ジャック中尉は僕の目をまっすぐ見つめる。

「ギルバート。妹の前では強い兄貴でいてやれ。優しい兄貴でいてやれ。しっかりと妹を守ってやれ」

「僕に…出来るでしょうか…」

「出来るさ。そんなにボロボロになっても泣かなかったじゃないか」

ジャック中尉はそう言って僕の頭を荒々しく撫でた。
ゴツゴツした大きな手で乱暴に頭を撫でる。
撫でられるのは久しぶりだ。
『嬉しい』という感情を抱いたのも、久しぶりだ。

少しだけ…父さんに逢いたくなった。

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