小説『ボーンシルヴィアの罪』
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エリスグール収容所に勤める兵士達はローテーション制を採用しているため、交代で休みを取る。

しかし、月に一度だけすべての兵士達が集まって大規模な宴会を催す。
人畜の管理という閑職にまわされている彼らは大いに食い、大いに酒を飲む。
もちろん僕たち人畜に宴会などない。それどころか気を抜く瞬間もないのだ。
僕は兵士達の給仕係に駆り出され、兵士に酒を注ぎ、食器の片づけを黙々と行う。
 
サンチェスとはあれ以来距離を置いていたが、サンチェスは事あるごとに僕に嫌がらせをしてくる。
鬱陶しい事この上なかったが、下手に逆らって懲罰室にぶち込まれるのも御免なので、あえて甘受している。この日もあえてサンチェスとは距離を置いていた。

僕はジャック中尉の事を考えていた。
 
ジャック中尉は兵士達の中では例外的に人畜の評判が良い将校だった。

人畜に対して激しい弾圧を繰り返す兵士達の中で唯一人畜に対して人道的な扱いをし、人畜への弾圧を止める人物だった。

サンチェスをはじめとする兵士達の弾圧で、僕は希望を見失っていた。

希望も何もない収容所の中でシャーリィを守るという信念だけが僕を支えている状態だった。
僕はジャック中尉の様な兵士がもっといれば僕らにも希望が芽生えるのにと純粋に思った。
この地獄の様な環境の中でジャック=エンノイア中尉の様な存在はわずかながらも希望の発芽と言えた。

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