小説『ボーンシルヴィアの罪』
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僕とシャーリィがエリスグール収容所に収容されてから2年が経った。
エリスグール収容所に収容されてから2回目の春。
春の息吹は全身を心地よく包むが、僕の心は春の陽気とは対照的に沈み込んでいた。

相変わらずサンチェスからのいやがらせは続いていたが、それがシャーリィに向かっていないという事実だけが救いだった。

ジャック=エンノイア中尉は異動が決定したため、その準備のために収容所に顔を出す機会がめっきり減っている。なんでもサンチェスをはじめとする兵士達が王都カサンドラにジャック=エンノイア中尉に叛意ありと報告。罷免、もしくは左遷を要望する嘆願書を提出した事が決め手となったらしい。

エリスグール収容所の兵士達はどこまでも卑劣だった。そして、卑怯だった。
 
ジャック=エンノイア中尉の異動は僕にとって希望の喪失を意味していたがシャーリィをこの地獄から解放するという信念は揺るがない。

ジャック中尉の『妹の前では強い兄貴でいてやれ。優しい兄貴でいてやれ。しっかりと妹を守ってやれ』という言葉は胸に焼き付いている。

強い兄貴でいようと思った。
優しい兄貴でいようと努めた。
シャーリィを守ろうと誓った。

この2年間でずいぶんと金が貯まった。もう少しで一人分の金が貯まる。
もう少しでシャーリィをこの地獄から解放出来る。

この2年間は無駄ではなかったのだ。

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