ある朝の事だった。
シャーリィは寝ぼけ眼の僕をテントから引きずり出した。
なんでも、見せたいものがあるらしい。
眠い眠いと目をこする僕の手を引っ張りながらシャーリィは『ほら、はやく!もうすぐだよ!』と僕を急かす。
やがて僕の目に映ったのは一面の赤。一面のボーンシルヴィアだった。
僕は息を呑んだ。
一面に咲き誇るボーンシルヴィアが風に吹かれて揺れている。
風と共に甘酸っぱい香りが漂う。僕はその光景に目を奪われた。
シャーリィは振り返って「ほら、綺麗でしょ」と満面の笑みを浮かべる。
「あぁ。すごく綺麗だ」
僕も思わず頬が緩む。
この地獄の様な収容所生活で何かを綺麗だと感じる事も、ずいぶん久しぶりだった。