小説『ボーンシルヴィアの罪』
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ふと、シャーリィが手にしているものが目に入った。

シャーリィが手にしていたもの。

それはボーンシルヴィアだった。

シャーリィは信じていたのだ。

この収容所から一緒に解放される事。

自分たちを捨てた母と逢う事。
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そして、かつての貧しいながらも、温かくぬくもり溢れる家族3人での生活の到来を。

シャーリィが最期まで手にしていたボーンシルヴィアを見て枯れ果てたはずの涙が一気に溢れた。

――生きたかったよな
――母さんに逢いたかったよな
――貧しい事は罪なのか
――かつての温かい家庭を、ぬくもり溢れる生活を望む事は罪なのか

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」

僕はシャーリィを抱きしめながら絶叫する。

僕が死ねば良かったんだ。
家族のために死ぬ事も出来ず。
誓いを守る事も出来ず。
たった一人の妹さえ救えないこの僕が!

「おい!何をしている!」
兵士の怒鳴り声が聞こえた。

「…兵士さん」
「あん?」
「墓を…墓を建ててもらえませんか…せめて…せめて…妹を弔ってやりたいんです…」
兵士はゲタゲタと笑い出した。



「500セドルで建ててやるよ」


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