小説『ボーンシルヴィアの罪』
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そして、王国国民が最も恐れ、最も忌み嫌う、知られざる4つ目の階級があった。
 
国家から生存を許可されず、道具の様に生き、道具の様に死ぬ“人畜”。
 
平民は、人畜に堕ちる事を何よりも恐れていた。
平民は平民に生まれたというだけで『生存税』を納める義務を負う。

“生存を許可するための税”。それが『生存税』であった。
 
そして、人畜とは国家が課した生存税を納められない者達を指す。
一度、人畜に堕ちてしまえば収容所で馬車馬が如く働かされ、そこで死ぬ事になる。
平民は人畜に堕ちた者が辿る運命を知っている。
自分が人畜に堕ちたくないが故に、生存税を納めるために必死に働く。
文字通り命が懸かっているため、死にもの狂いで働く。
王族と貴族はそんな平民から多額の税を搾りあげ、享楽に耽る。
財政が悪化すればさらに生存税を上げる。
 
暴動が起きたとしても強兵揃いの国軍で押さえ込み、首謀者を公開処刑にする事で平民が抵抗する気を削ぐ。その繰り返しであった。

誰もが“自分が助かるために”働き、誰もが“自分のために”他人を貶めるこの国の実態を、正しいと思った事は一度もない。

自分が生きる事だけしか考えない家畜の集合体。それがこの国の真の姿だ。

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