小説『ボーンシルヴィアの罪』
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稼ぎ頭の父が戦死した事で母の脳裏を過ぎったのは人畜に堕ちる危険性であった。

幹部兵士と言っても、所詮は平民。
平民であった父が死んだところで大した慰謝料は支払われない。
父の死後、母は夫の死を嘆く間もなく働き始めた。
物価が異常に高い王国において女手一つで子供二人を養う事は並大抵の事ではない。
早朝から夜まで市場で働き、深夜から明け方にかけては娼婦として街頭に立つ。休みなどない。

辛くないわけがなかった。

頬がこける。
白髪が増える。
体重が減る。
病弱になる。

疲労で起こりうるあらゆる症状が容赦なく母を襲う。
だが、それでも働かなければ、自分も、子供も死ぬ。

そんな現実に怯えきった母はそれこそ死にもの狂いで働き続けた。

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