小説『ボーンシルヴィアの罪』
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「グラス中将のお気に入りだからと言って、調子に乗るなよ。小僧」
 
背中越しに震える声が聞こえた。

「ならばあなたも閣下の尻でも舐めてはいかがか」

「侮辱する気か!貴様ぁ!」
 
怒鳴りあげたグレマン准将は腰にさしてあった鋭剣を抜いた。
 
やれやれ。
 
能力もなく、恥じも知らぬというのに誇りだけは健在とは。
 
始末に負えない。
 
僕はため息を吐きながらグレマン准将と向き合う。

「ほう。やる気ですか。我が独立歩兵大隊『最後の罪人?ウルティモ・クリミナル?は逃げも隠れもしません。不意打ち、闇討ち大いに結構。いつでもお相手仕る』
 
僕はグレマン准将がその鋭剣で斬りかかってくれば即座に斬殺する気だった。
 
鋭剣に手を添える。
 
殺す。

僕の邪魔をするものは全て殺す。
 
僕の復讐は、僕のものだ。
 
誰にも邪魔はさせない。
 
ましてや、貴様なんぞに。
 
自分の顔が殺意で禍々しく歪んでいくのがわかった。
 
今の僕ならば、誰よりも残酷になれる。
 
グレマン准将はたじろぐ。

「戦場では背中に気を付ける事だ。小僧」

「承知しました。准将殿。それでは」
 
今度こそ僕は背を向け、統合作戦本部へと歩を進めた。

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