小説『ボーンシルヴィアの罪』
作者:()

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12年前。
シャーリィを失ってから僕はエリスグール収容所を脱走した。
 
殺害したジャック中尉の銃をはじめ、ジャック中尉が持っていた軍用装備を一式奪い取り、脱走する際に追いかけてきた兵士をジャック中尉から奪った銃で射殺し、さらに銃を奪った。
 
脱走してからの生活も楽ではなかった。
 
金はおろか、着る服すらなかった僕は豪邸に押し入って住民を射殺し、金や衣服、食糧を奪い、命を繋いでいた。
 
この際には人を殺す事に対して抵抗感や罪悪感は完全に消失していた。
僕の中の人間的な感情も、理性も、人間として大切なものも全て消失していた。

 ?人の心?は全てシャーリィと共にあの墓に埋めてきたのだと思う。
 
だからジャック中尉を殺した時にも罪悪感を感じる事はなかったのだ。
 
この頃の僕の心を支配していたのは燃える様な怒りと決して衰える事のない憎悪だった。
 
ボーンシルヴィアの前で誓った復讐は僕の生きていくための糧となっていた。
 
かつて自分と同じ階級であった平民を殺害する事に対しても何の抵抗を覚えなかった。
 
なぜなら平民もまた、両親を失った僕たちを王国に密告した憎悪の対象だったからだ。
た。

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