小説『ボーンシルヴィアの罪』
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12年前。
 
グラス大佐によって特赦となった僕は非正規兵士として軍に入った。
 
通常であれば軍に入ったばかりの新兵は兵士養成機関である幼年学校への入学を果たし、2年間の教育の後に戦場に駆り出される。だが、グラス大佐という名の悪魔に案内されたのは人間など住んでいる気配すらない山奥だった。

人外魔境の森の中、ポツンと校舎と営庭が作られている。
よくもまぁ、こんな山奥に訓練場なんて作る気になったものだとその時の僕は気楽に考えていた。

営庭には僕と同じぐらいの年の子供たちが100人程集まっていた。
この100人程の子供たちもまた人畜や犯罪者の中から選抜されたのだと容易に想像出来た。

100人程の子供たちを前にしたグラス大佐は「ようこそ。地獄へ」と笑った。

「私は『最強の兵士の養成』という任務にあたっている。諸君にはこれから私が実施する訓練を受けてもらう」

上官の前で整列もせず、好き勝手に私語を口にする子供を『最強の兵士』とやらに出来るのか。
僕は内心で失笑していた。

「私が諸君に求める事はただ一つである。生き残れ。以上だ。2年間に渡って実施される私の訓練に生き残った時、諸君らは『最強の兵士』になっている事だろう」

未だ子供たちの私語は止まない。グラス大佐を上官として見ていない事は明白だった。

「それからな。諸君らに一つ、忠告がある」

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