小説『ボーンシルヴィアの罪』
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そして、4年前。
少将に昇進していたヘンリー=C=グラスによって戦場における切り札と呼ぶべき大隊が編成された。
大隊長は僕が任命された。
グラス少将は僕に大隊の組織、大隊の基幹将校の選別、兵士達の招集、練度の上昇を命じた。
 
僕はまず、他部隊に散っていた?死神『グリム・リーパー』?の引き抜きを行った。
確保出来た基幹将官は4人。
 
カルナウ=バロウ。
ビブロ=メロース。
ニッケル=グラント。
リボフ=ラビン。
 
この4名は全員、あの特別訓練を生き残った兵士達だった。
僕はこの4人を大隊の基幹将官とした後、大隊を構成する大部分の兵士達を人畜から選抜した。

社会的身分と能力の有無は必ずしも符号しない。むしろ、無能の代名詞の様な人間が貴族に多いのに対して、人畜は日ごろの強制労働のおかげで基礎体力が高い。そして軍人としての給金も彼らが日ごろの激しい労働で手にする金額の数百倍に跳ね上がるので、彼らのモチベーションは非常に高い。新造大隊にとって大きな戦力となる人材の発掘のために僕は大隊の基本兵力を人畜で構成する方針を決定した。
 
無論、反対はあった。特にグラス少将からの反対が強い。だが、僕は王国軍が見向きもしない人畜たちの潜在能力、彼らの雇用、ならびに補充が非常に容易であるとともに、非常に安上がりである事を訴え、グラス少将の反対を退けた。
 
グラス少将を説得した論理に嘘はない。
だが、大隊の基本兵員を人畜で構成した最大の理由は別にあった。
階級最底辺である人畜が決して現在の地位で満足している貴族達に劣らない事を証明したかった。

人は、生まれた時は皆、平等なのだ。
人は、生まれてからどう生きるかで優劣を決定されるべきなのだ。

個人の才能、能力の全てを無視し、生まれながらの社会的身分によって人生の全てを決定されるなど、間違っている。


カースト制の全てを否定するために構成された大隊。
 


僕は万感の想いを込めて大隊に独立歩兵大隊『最後の罪人?ウルティモ・クリミナル?と名付けた。

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