小説『ボーンシルヴィアの罪』
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僕が上の空でグラスを傾けているとカルナウ=バロウ大尉が「おーい。聞いてんのかい」と顔を近づけてきた。
 
僕は大隊の基幹将官であり、同期でもある?死神『グリム・リーパー』?の面々とは基本的に「おい、貴様」という態度はとらない。あくまでも同期として接する事を許可している。事情を知らぬ兵がいない時に限ってだが。

「ん。あぁ。何も聞いてなかった」
「だーかーらー。うちの王様と貴族共は底なしの莫迦でクソッタレなファッキン成金だって話だよ」
「そんなのは今に始まった事ではない。平民たちは皆お前と同じ事を考えてるよ」
「たまんねぇよなぁ。てめぇらが勝手に侵略戦争仕掛けて、大義名分を掲げたクリミア帝国が宣戦布告をしたら慌てて俺らに動員命令だもんな」
「同感だな。だが、もっとたまらない事になるぞ」
「なんだよ」
「生存税の増税が検討されている」
「また上がるの!?つーか侵略戦争仕掛けてしこたま儲けたんじゃねぇの!?」
「王族、貴族が全部使ったんだろ」
「ファック!」
 
カルナウ=バロウ大尉はグラスに溜まった蒸留酒を一気に飲み干した。

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