小説『ボーンシルヴィアの罪』
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クリミア帝国との戦いが始まってから3か月が経過。
 
王国は何とか戦局を五分で保っている。
事態の打開を図るクリミア帝国は当然と言えば当然だが、王国の弱点を突いてきた。
アルスター街道に目を付けたのだ。
 
アルスター街道は古くから他国との交通の要所として知られている。王都カサンドラから一本道に続くアルスター街道はグレンシア大陸東方へと続き、他国の食糧や文芸品、文化を王国へともたらす事からも、王国にとっては文字通り交通の要所と言える。
 
また、その一方で軍事面からも重要な意味を持っていた。
 
東方へと延びる一本道は大部隊の派遣や物資の補給路の一面を持つ。
 
このアルスター街道に目を付けたのは何もクリミア帝国だけではない。王都カサンドラの陥落を目論む多くの国々がアルスター街道の突破を試みたのだった。当然、王国はアルスター街道を死守するため、アルスター街道を抜けた先にあるグランフェルド平原は幾度となく激戦区となった。そういう意味ではグラス中将の?アルスター街道を死守せよ?との命令は至極当然と言える。
 
アルスター街道が文化的にも軍事的にも最重要拠点であるという事実は歴史が証明している。
 


だが、王国は最重要拠点であるアルスター街道を危機に晒すという愚を犯した。

当初、アルスター街道防衛のため、王国軍から第5、第6旅団が派遣された。上層部は第5旅団長ダグラス=グレマン准将と第6旅団長アドルフ=ラッツィンガー少将に王国の命運を託したわけだが、その人選には大きな問題があった。軍内部でも?ボンボン准将?と揶揄されていたグレマン准将が第5旅団長に任命され、少しでも頭のまわる軍人はその人事に対してとてつもなく不吉な予感を抱いたのだった。そして、当然の事ながら、その予感は的中する。

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