小説『ボーンシルヴィアの罪』
作者:()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

独立歩兵大隊『最後の罪人?ウルティモ・クリミナル?がアルスター街道に到着してすぐに僕はラッツィンガー少将に会談を持ちかけた。ラッツィンガー少将はこれを快諾。第6師団本営天幕へと通された。

言い様のない緊張感が張り詰める天幕の中で、ラッツィンガー少将は椅子に腰を下ろし、葉巻を吹かしている。

アドルフ=ラッツィンガー少将。
 
大部分が貴族で構成される将軍の中で、ラッツィンガー少将は唯一、平民から上り詰めた将軍だった。
そして、数ある将軍の中でもとりわけ政治的な策謀を嫌う将軍としても知られている。
 
その評判は概ね以下の様に統一されている。
 
曰く?勇猛?。
曰く?気難しい人間?
曰く?傲岸不遜?
 
ラッツィンガー少将を評価する声の中で?臆病?と?無能?と断ずる声だけは聴かない。
 
平民出の一平卒から将軍にまで上り詰めた叩き上げの軍人。
 
軍人としての能力に限定するならグラス中将にも匹敵し得る実力者。
 
それがアドルフ=ラッツィンガー少将だった。

-76-
Copyright ©樹 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える