小説『ボーンシルヴィアの罪』
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「敵の現在地は」
「奴らは相変わらずグランフェルド平原西方15キロの地点を占位している。旅団を再編しているのか、今の所大きな動きはない。だが、いつ攻めて来るかわからん。そのためアルスター街道入口地点に兵を横列に展開し、警戒に当たらせている」
 
つまりは兵を横に並べて通せんぼか。悪くない手ではあるが戦力差に対して無頓着に過ぎる。
最良の手とは言い難い。

「閣下。案があります」
「言ってみろ」
「アルスター街道に防衛戦を張るのです」
 
ラッツィンガー少将は目を見開いた。

「敵をアルスター街道に入れるのか」
「そうです。グランフェルド平原で戦うのは我々にとって最良とは言えません。いくら横列に兵を並べても敵の戦力の前には意味を為しません」
 
天幕に常駐している兵士達全員が絶句している。
将軍の立てた戦略に対して真っ向から否と言っているのだ。無理もない。
たかが少佐が口にして良い範囲を遠く超えている。

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