小説『ボーンシルヴィアの罪』
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ラッツィンガー少将は「ならばどうする」と葉巻を吹かす。
僕も煙草に火を付け「地の理を活かすのです」と応える。

「アルスター街道はギルガメシュ山脈を貫いて作られた一本道です。街道の両側には切り立った山と深い森林があります。ある程度の兵ならば隠せるでしょう」
「それで」
「街道の両側には銃兵と歩兵を配置します。また、アルスター街道には砲兵を。さらに街道に罠を仕掛けます」
「罠だと」
「そうです。自律起動式ボールベアリングNNC4地雷780個」
 
ラッツィンガー少将は再び目を見開いた。
そして、その顔に獰猛な笑みを浮かべる。

「ずいぶんと予習に熱心だな。貴様。行儀の悪い奴だ」
「戦争の醍醐味は一方的な虐殺だと私は信じています。それに…やられっぱなしは閣下の望むところではないでしょう」
「ふははははははは!いいだろう。やってみろ。必要なものはすぐに申請しろ。貴様への支援は惜しまん」
「はっ」

僕が腰を上げるとラッツィンガー少将は「おい」と僕を呼び止めた。

「楽しくなりそうだな」
 
その顔には再び獰猛な笑みが浮かんでいる。
この男は好きなのだ。
阿鼻と叫喚に彩られた血みどろの戦争が。
つまりは『こちら側の人間』という所か。


「ええ。閣下。盛大に奏でようではありませんか。獣達の鎮魂歌を」

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