小説『ボーンシルヴィアの罪』
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死ななくてはならない理由が脳内を駆け回る一方で、喉元に刃を押し当てると汗が噴出し、体中が震え、あまりの恐怖に涙さえ浮かぶ。

果てしなく長い夜に、死ななくてはならない理由と死ぬ事に対する恐怖が幾度となく交錯する。
だが、夜が明けても僕は自らの喉元を刃で貫けなかった。

何処かの戦場で戦死した勇敢な父の様に、母と妹を守るために僕は死ななくてはいけなかった。

それなのに、死ねない。どうしても死ぬのが怖い。

そんな僕は泣きながら母に抱きつき『ごめんなさい』と泣き喚く。

僕は、臆病な子供だった。

母はそんな僕に対して涙を浮かべながらこう諭した。

『これは神様が私達に与えた試練なのよ。大丈夫。神様はきっと見ていて下さる。きっと私達に救いの手を差し伸べて下さる。だから負けちゃダメなのよ。ギル。あなたも。私達も』

僕は母に頭を撫でられながら問うた。

死を恐れる事は罪なのか。

家族のために死ねない自分は罪深いのか。

答えは、出ない。

僕は母に「はい」と応える。

『本当に神様は救いの手を差し伸べてくれるのだろうか』という不安は、口に出せなかった。

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