小説『ボーンシルヴィアの罪』
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母に諭されて以来、僕は神様に必死に祈る様になった。

―母さんが少しでも楽になれますように。
―シャーリィがお腹いっぱいご飯を食べられますように。
―以前の幸せだった家庭に戻りますように…

目を瞑り、手を組み、必死に祈る。

だが、待てども待てども――――救いの手は差し伸べられない。

父が戦死してから2年が経った。

もはや、母はベッドから起き上がる事すらも出来なくなりつつあった。子供の目から見ても、限界であった。

そんなある日の事だった。

仕事のはずの母が珍しく早く家に帰ってきて外食に行こうと言う。
僕らは大喜びする一方、そんなお金が何処にあるのだろうと不思議に思う。

だが、ここ数ヶ月ほとんどパンと水で生きていた僕らにとって、外食という誘惑は強力すぎた。
その誘惑の前に僕らの疑問など跡形もなく吹き飛んだのであった。

2年振りに食べる羊の肉は泣く程美味しかった。
父が生きていた頃にたまに食べていた羊肉がこんなにも美味しいものだったのだと思い知った。
そして、毎日休みもせず働き続け、僕らにこんなに美味しい食事をさせてくれる母に対して深く感謝した。

だが、それは文字通り“最後の晩餐”であった。


次の日、僕らが起きた時には母は消えていた。


神が僕らを見捨てた瞬間だった。

-9-
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