小説『ボーンシルヴィアの罪』
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「ああん。何か言ったかニコチン野郎」
「頭だけじゃなくて耳も悪いのか。少しは考えてものを言えと言ってるんだよ」
 
両者の間で見えない花火が散り、一触即発。バロウ大尉が身を乗り出す瞬間、リボフ=ラビン最先任軍曹がバロウ大尉とメロース中尉に銃口を突き付けた。

「シャット…アップ。黙っててもらえるかしら」
銃口を突き付けられたバロウ大尉とメロース中尉は急速に顔から血の気が失せていく。

「いや…ちょっと言い過ぎた。ま、まぁ、落ち着けよリボフ」
「お、おう。ちょっと俺等黙ってるからさ。お前は本当に撃ちそうで怖ぇよ」

リボフ最先任軍曹は静かに銃口を下ろし、鼻を鳴らした。

リボフ=ラビン最先任軍曹。

三日月の様な眉にアーモンド形の目。見事なブロンドの髪を優雅になびかせる大隊一の美貌を持ちながら大隊一の残虐性を持つ。
 
リボフ最先任軍曹は大隊に新たに配属となった新兵の教育を担当しているが、その訓練は凄惨を極める。膝を付き、激しく嘔吐する新兵の腹を軍靴で蹴り上げ、大隊の食糧をくすめた新兵の腕を切り落とし、自らの腕を喰わせた事もある。
 
大隊一の美貌を持つリボフ=ラビン最先任軍曹こそ大隊の恐怖の体現者であり、大隊の規律そのものだ。大隊に所属する兵士達はそんな彼女を『シルバー・ヴィッチ』と呼び、恐れた。
 
僕は重要な決断を下す際には必ずリボフ最先任軍曹に話を通す。彼女は軍曹の身でありながら大隊の参謀であり、僕の懐刀であり、大隊のブレーンでもある。

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