小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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M氏の取材を終えた私は録音したICレコーダーの内容を分析しパソコンに入力すると同時に、改めて集団ストーカーを考えてみた。

今回実施した実際の被害者十数人との取材から、彼らは『嘘』を言っているのではなく、
『自分が体験したこと』を話していることが判る。
これはジャーナリストに限らず多くの人を相手にする職業に就く人なら、
相手が『嘘』を言ってるのか『本当』のことを言っているのかは直感的に判るものだ。

また、取材した被害者全員が精神的におかしいと思えるところはひとつもない。
それどころか彼らは身に降りかかる出来事を自分なりに冷静に捉えようとしていることもわかる。

そしてネット上に広がる集団ストーカー関連情報や海外の関連サイトにも目を向けていくと、
私が取材してきた被害者たちの話と同じような内容が山のようにあることも判ってくる。

それらの関連情報の全てが正しいとは言うつもりは毛頭ない。
だが、取材した被害者らの話とネット上に広がる情報は非常に似通っている。
そしてそれらの情報からひとつの『流れ』のようなものが見えてくる。

身辺の異変に気が付く → 執拗なハラスメントが始まる → 被害者が騒ぎ出す → 精神障害扱いする 

→ 社会的に葬り去る。

私はこの『流れ』をよく考えてみた。
するとそれはひとつの『工程』、というより基本的な『ノウハウ』であることに気が付いてくる。
それは特定対象、つまりターゲットを社会的に葬り去るための『工程』であり、
その基本的な『ノウハウ』だ。
こうして考えていくと集団ストーカーとは、

  ■世間の耳目から巧妙に隠ぺいし、且つ、怪しまれずにターゲットを始末する方法

を駆使して静かに忍び寄るある種の集団・・・。

ここで私はK氏の話を思い出す。

  ・・・狙った対象、つまりターゲットを精神障害者に追い込むかそれに仕立てる。
    あるいは『犯罪者』に仕立て上げたり『自殺』へと追い込んでいく。
    そして社会的に抹殺していく…。
    これは『嫌がらせ』を超えた『破壊的なハラスメントテクニック』ですよ。
    そしてこれらの活動が『プロフェッショナル』によるものだということです・・・。

さらに私はK氏の話を絡めながら考えるうち集団ストーカーのおおよその全体像、
というかその輪郭が朧に見え始めていく。
それは、

  ■常識の盲点を突き人間の心理を巧みに操るノウハウとテクニックを持つ極めて策謀的な組織集団

であることにも気が付いてくる。
するとここにひとつの疑問が浮上する。

K氏やL氏の場合のようにカルト系のー集団ストーカーや企業系のリストラストーカーは、
それぞれが独自に『人を追い込むノウハウとテクニックを持つハラスメント部隊』といった、
『特殊な暴力装置』を密かに開発し保有しているのだろうか?

それとも、こうした『人を追い込むノウハウとテクニックを持つ連中』を、
カルトや企業が『特殊な暴力装置』として雇っているのだろうか?

現実的に考える場合、前者よりも、むしろ後者である可能性が高まる。
カルトも企業もカネがある、莫大な額のカネが使途不明金になっているならば、
その使い道の中にこうした連中のひとつやふたつを『組織防衛のための用心棒、あるいは暴力装置』として雇い入れていることが考えられる。

実際にヤクザな連中がこうした用心棒代わり雇われていた時代が過去にあったわけだ。
例えば『総会屋』などがその実例だろう。
あるいは『調査会社』などへの『特殊工作』の依頼、場合によっては『ヤクザ』に『実力行使』を依頼するなどなど・・・。

こうした社会の裏面を考えていくとき、全国的とも言えるような広範囲に渡って酷似する被害の続出を説明しやすくなる。
ましてや海外のギャングストーカーを勘案する場合、なおさらその可能性が高まる。

だが、ここでも疑問が浮上する。

それはM氏のような場合だ。
なんの心当たりもないなのに突然被害が降りかかってくる・・・。

カルト系や企業系であれば、それらにとって邪魔な存在や目障りで忌々しい存在を始末するため、
『ダークサイド』に依頼する『クライアント』になったり、
あるいは企業収益を上げていくためのリストラクチャリングの一環として、
企業自らの手を汚さずに役に立たない社員などの無駄な人員の一掃のため、
こうした『ダークサイド』に依頼するということで仮説を立てやすくなる。

だが、M氏の場合はそうした仮説が成り立たない。
となるとカルトや企業の『特殊な暴力装置』という仮説だけでは説明できなくなる・・・。

これらのことを考えるうち、どうにも私一人では手に余ると感じたため、
この問題を編集長とともに考えてみることにした。

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