小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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私の見解を聞く編集長は、じろりと私を見ると、

  ふむ、で、だからどうだと言うのかね? 

  ですから、そうしたことが起こる状況証拠的なものは・・・

私が言いかけると編集長は笑う

  状況証拠? ハハハハハ、そんなものいくら揃えたって状況を説明するだけのものでしかないさ。
  現実に集団ストーカーなるものが存在し、かつ、カルトが逆恨みで、あるいは企業がリストラに乗じて、  そうしたものを差し向けてくるという証拠にはならんよ。 

  ・・・そうですか、すると編集長は集団ストーカーは存在しないと?
  そしてその被害も嘘でたらめとお考えになるのですか?

編集長はニヤリと笑いながら、

  そうは言ってはおらんよ、被害者の話は嘘ではないだろう。
  だが、それを証明する証拠がないと言ってるだけだ。
  それに、集団ストーカーというものの実在を頭から否定しているわけではない。
  こうしたことは話としてはあり得ないことでもない。
  我々メデイァの世界に身を置くものは、多かれ少なかれこの世の裏面というものを知っている。
  ジャーナリズムに身を置くものなど特にそうだ。
  この世には一般人には到底うかがい知ることのできないダークな世界があることは、
  紛れもない事実であり、そしてその中はあらゆる陰謀、謀略、権謀術数が渦巻く伏魔殿だ。
  時折スキャンダルで失脚していく著名人など、その多くがこうした策謀による場合が多い。
  政治的スキャンダルに至っては死人が出る、もっともこうした場合、
  警察はお決まりのように自殺として扱っていくが・・・。
  本当に自殺かどうかは極めて疑わしいものがある、が、さりとて他殺を証明する証拠がない。
  証拠がなければすべては憶測に過ぎない。

  確かに、現代段階では憶測に過ぎないかもしれません。
  ですが、何事も憶測や推理がなければ物事を究明していくことができないのも事実です。
  それに、この世にはダークな部分は確実に存在しているわけです。
  暴力団のような犯罪組織、外国の諜報機関、こんなことはとっくの昔から知られていることです。

  そうだ、だが、そうしたところでそれは状況を説明しているに過ぎない。
  私の率直な意見は被害内容がどうであれ、
  そうした被害をもたらす集団ストーカーの実在を立証することだよ。
  それがどのような組織集団でどこにいるのか?
  実在しているとなれば、それは何時ごろからいるのか?
  自然発生したものか、それとも人為的に作り出されたものなのか?
  また、その存在は国内を起源とするのか、外国を起源とするのか?
  こうした具体的なことを解き明かしてそれを立証していかなれければならない。
  少なくともそうしなければ警察も司法も動かないだろう。

私は編集長の言葉に疑問を感じた。

  なるほど、それはそうかもしれません。
  ですが、それならなんのために警察が存在するのかという、その前提が問われますね。
  ここにたくさんの被害者たちがいる、その被害のどれもが同じような被害を受ける。
  そしてその被害を警察に訴え出る。
  ところが警察はそれを被害届として受理しようとすらしない。
  『事件性なし』として一方的に一蹴しては被害氏を追い返しているのが実情です。
  こんなこと、おかしいと思いませんか?
  不特定多数の多くの人々が同じような被害を訴える場合、
  警察はそれを捜査し突き止め犯人たちを一網打尽にする。
  そのめたに警察官は警察学校で訓練を受けているんじゃないんですかね。
  私は取材の中で、ある被害者からこんな話を聞かされました。
  仮にその人をNさんとしておきますが、Nさんは度重なる被害に我慢できなくなる。
  そして警察に相談に行ったところその警察官、
   
   『被害に会っているという証拠をそれえてくれなければこちらは動けません』

  の一点張りだったという。
  また、こういう話もあります、仮にその人をOさんとしますが、
  その人も度重なる不法侵入に我慢できなくってくる。
  なんとかその証拠を掴んでやろうと思案していたところ、
  不法侵入の後に室内に落ちている髪の毛に着目した。
  それは長い女の髪の毛のようだったそうで、Oさんは独身、そして頭髪は短髪。
  これは証拠になると考えると、さっそく警察に相談した。
  ところが、

   『そんなもの証拠になりませんね』

  と鼻で笑われたという。
  何時からこの国の警察は髪の毛を物証として扱わなくなったのか? 
  これもおかしな話ですよ。
  これは逆に考えるならば警察は被害者が証拠を揃えてくれば動き出す、
  証拠がそろわなければ何もしない、ということになると同時に、
  実は警察には証拠を収集する知識も能力もないということになりますね。
  となると警察の鑑識など無駄な存在だからリストラしたほうがいいいということにもなりますね。
  仮に物証になりえるものを提示しても『そんなもの証拠になりませんね』と鼻で笑われる。
  私は集団ストーカー被害を取材していくうち、警察というもののあり方にも疑問、
  いや、疑念が強まりました。

私の話に苦笑する編集長。

  ふふふ、まぁ、あまり大きな声では言えんが警察なんてそんなものだよ。
  相手が有力なコネのない非力な一般庶民ならば、よほどの事件性か証拠がそろわない限り、
  まともに相手にしないものさ。

  ということは警察は、相手が有力なコネのあるパワーエリートなら一所懸命に働く、というわけですか。

私は、編集長との話を笑って聞いている女医に気が付いたので話を振ってみる。

  ところで、どうでしょう、今までのお話を聞かれて、何か思うところがあれば率直な意見をどうぞ。

私に話を振られた女医は切り出す。

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