小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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?:具体的な方法
いよいよ、ここから『ガスライティング』というものが何であるかを知る具体的な方法が記されている。

1 感覚の喪失

これはガスライティングの第一段階とされている手口でありそれは、
『感覚の喪失』を演出してターゲットに自分自身の頭を疑わせ自信を失わせる。
そしてそのためには何もかもおかしいと思い込ませることだと言う。

要するに自分でも訳が分からないままターゲットに自信を失わせる段階で、
そのための具体的な手口が20項目以上も記されている。
そして『ガスライティング』の具体的手口が、そんなことをする人間がいるはずがないという、
『常識の盲点』を逆手にとった極めて策謀的なテクニックであることが記されている。

(1)不法侵入と詐術的工作
  ターゲットの自宅や車、オフィスに不法侵入するための準備的な手口として、

  ?合鍵

   ●ターゲットの自宅やクルマの鍵を入手する。

   ●ターゲットが机の上に鍵を置き忘れたり、あるいは鍵を一時的に盗み出してコピーを作る。

   ●戻すときはターゲットに見られないように別の場所に戻す。

    こうすればターゲットを自分の鍵をどこか置き忘れたと思い込ませることができる。

  ?物品に対する仕掛け

   ●帽子やジャケットのサイズをこっそり変えてターゲットの体に異変が起こったように思わせる。

   ●ターゲットの所有物を移動させてターゲットの記憶を疑わせる。

   ●職場のゴミ箱の位置を反対側に移動する

   ●椅子の高さを微妙に変える

   ●出来るだけ微妙な違いにすることで効果が増す

   ●一度に多くのものを変えるとバレバレになるため1度に1つのものを変える。

などなど。

こうした手口によって、ターゲットは環境の異変にすぐには気が付かない。
だが、ターゲットは微妙な環境変化に対応するため居心地の悪さや奇妙な感覚が徐々にターゲットの精神を襲う。
周囲の変化に気づいてもターゲットはそれを説明することができない。

まさかターゲットの職場や自宅に忍び込み、わざわざ机の上の物品を僅かにずらしたり、
机の中の物品を入れ替えるような人がいるわけがないという常識が事態の説明を不能にしてしまう。

実際こんな話をして納得する人間などいないだろう。
こんな話をしたらそれこそ『頭がおかしい』と思われるのがオチだ。

この手口を応用した人間関係破壊工作のひとつとして、ターゲットの持ち物を一旦盗み出し、
ターゲットが周囲を疑いだしたところで元の場所に戻して人間関係を悪化させる。

  ?車への仕掛け
   ターゲットの車に職場と同じ手口を行うことであり、例えば、 

   ●車のシート位置を数センチずらす

   ●ルームミラーやサイドミラーの角度を少しだけ変える。
    この場合でも微妙な違いにしてターゲットを悩ませる。

   ●ドアを開けてライトを点灯させ車のバッテリーを上げてしまう

   ●駐車中のターゲットの車を移動させ駐車位置を変えターゲット自身の記憶違いに思わせる。

   ●上司専用の駐車スペースにターゲットの車を移動させ上司とのトラブルを誘発させる。

   ●こうしたことを何度も繰り返しターゲットに言い訳をさせることでターゲットの信用を失墜させる。

   ●密かにガソリン注ぎ足すことでターゲットに異変を感じさせながら理由の説明を不能にする。

減らないガソリンと類似する手口に減らないシャンプーやリンス、めんつゆといった手口がある。
ガソリンやシャンプーが減っていれば窃盗の疑いをかけることができるが、減らずに増えていれば奇妙に思うだけで訴えることはできない。

また、この応用に冷蔵庫内のペットボトル飲料の蓋を緩めて中身が漏れ出るようにするとい手口もある。

  ?新聞や郵便物の抜盗り

   ●ターゲットの新聞受けからときどき新聞を抜き取り後で新聞受けに戻す。

   ●郵便物の抜盗り

   ●回覧板の抜盗り

こうした新聞や郵便物、回覧板を抜き取り、ターゲットに周囲を疑うように仕向けて近隣トラブルを誘発させる。
たいした手口ではないかもしれないが、こういうことを何度も繰り返すとことによって、
ターゲットを疑心暗鬼にさせ心理的に追い詰めキレさせるわけだ。


  ?味覚と嗅覚の攪乱

   ●ターゲットの自宅に忍び込むかターゲットと親しくなり自宅に入り調味料やコーヒー、ペットボトル
    飲料や乳製品の味を変える。

   ●同様に香水の匂い等を微妙に変える。

こうした手口でターゲットの味覚や嗅覚がおかしくなったと疑わせる。
この派生的なものとして、どこからともなく室内に悪臭(何日も洗わない足の臭いや糞尿の臭い)を漂わせるという手口もある。

  ?濯物の色落ち

   ●ターゲットの服の色を調べ、その服のポケットに同色の染料を忍ばせて服を洗濯した時に色落ちした
    かのように見せかける。

   ●ターゲットのシャツを妙に黄ばんだ状態にする

ターゲットの下着やタオルをまるで土木作業でもしたかのように汚くしたり妙に黄ばんだ状態にする。
このような下着は機械油のような臭いがする。
この応用にターゲットのズボンの裾を汚す手口があり、ターゲットが自転車に乗っていればそれのせいと思わせる。

(2)その他

  ?遠まわしな、ほのめかしによって職を失うのではないかという職業不安を煽る。

  ?ターゲットのプライバシーと合致する話をそれとなくしたり、ほのめかす。

その他さまざまな手口があるが、いずれを取ってもこれらの手口が際限なく応用可能であり、
まさかそんなことをする人がいるとは考えられない、という常識を逆手にとった手口であることが判る。
これらの手口を一読して思うことは『子供の悪戯』とどこか似ているということだろうか。

しかし、こうした手口を執拗に繰り返されれば大抵の人は怒り出すだろう。
この手口はこうした悪戯めいた手口を執拗に繰り返すことによって、ターゲットをキレさせ、
あるいは騒ぎ出したところで周囲にターゲットの『頭がおかしい』と思わせ、
精神病院へと措置入院させる初段階、あるいはキレて暴れ出したターゲットを粗暴犯として警察に逮捕させるための初段階と言える。

精神病院にしろ警察にしろ、こうしたものの厄介になることは社会的信用が失墜することを意味する。
ここまで一読した私は次の項目に目が留まる。
それは『妄想の構築』について記された項目だ。
私はこの項目に強い関心を持って一読してみた。

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