小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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ここまでK氏の話を聞いた私は問いかける

  ほう・・・、身辺に異変がね、それはどのような?

K氏は少し考えるように眉間に皺を寄せると、

  そうですね、なにかがおかしいというか、なにかが変だが、
  それを上手く言い表せないといった奇妙な感覚というか、そんな感ですね。

  なぜ、そう感じるのです?

  ええ、つい最近まで道で会えば気軽に挨拶を交わしていた人々が、
  なにかよそよそしくなったり、不愛想になったり、
  そうかと思えば何か異様なものを見るような目つきでこちらを見る、といった感じでしょうか。

  ふぅん、しかしそれは、単なる思い過ごしとかでは?

  ええ、私も最初はそう思っていましたよ、そのうち元に戻るだろうと。
  だからあまり気にかけないようにしていました。
  ところが・・・。

  ところが、と言いますと?

K氏は言いにくそうに、

  こういうことを言うのもなんですが、それは職場でも同じようなことが起こるんです。

  ほう・・・、例えば?

  今まで普通に接してきた同僚なり上司の態度が、どこかおかしい・・・。
  なにか・・・、そう、こちらを避けるような感じと言ったらいいのでしょうか。

  ふむ、それで?

  ええ、で、そのうち私に対する態度がどこかシビアになってくる。
  それだけじゃない、女子社員までもが私を冷たい目で見るようになる。

私はK氏の話を聞いたとき、なにか被害妄想に陥っているのではないかという印象を持った。
するとK氏はこちらの胸中を見抜くかのように笑いながら、

  こんな話をすると、まるで私が被害妄想に陥っていると思われるでしょう? 
  でもそうじゃないんです。
  これが連朝の仕掛ける最初の手口、というかテクニックなんですよ。
  もっともこのことを知ったのは大分後になってからですけどね。

被害妄想ではなく最初のテクニック? 

K氏の話が俄かに理解できない私は問いかける。

  最初のテクニックと言われますが、なぜそう思われるのです?

K氏は冷静な口調で説明する。

  実は、私は自分と同じような被害に会っている方とお会いしたことがあるのです。
  その方は、自分と同じような被害に会いながらも、それを解明しようと研究している方で、
  訴訟まで起こしている。

私はその話に興味を抱くとK氏にその人の名前を聞いてみた。
するとその人はXという人であることを教えてくれた。

  ほほう、訴訟をね・・・、で、Kさんはその人をどうして知りました?

  はい、ネットで知りました。
  そしてその人にメールでアポをとると、会ってくるということで、
  さっそく場所と日時を示すと会いに行くました。
  そしてその方からいろいろなことを教えてもらいました。
  私はその方の話を聞いて目から鱗が落ちるかのようでしたね、
  自分が遭遇している出来事が、ただの思い過ごしや被害妄想なんかじゃなく、
  用意周到に仕掛けられたテクニックであることをね。

私はK氏に訊いてみた。

  テクニックですか、というとそれはどのような?

  ええ、ひとことで言うなら、それは人間関係破壊工作の初段階ということです。
 
  人間関係破壊工作? なんですかそれは?

怪訝に問う私にK氏は落ち着いた口調で説明する。

  人間関係破壊工作というのは、そう・・・、簡単に言えば、
  狙った相手の悪い噂を吹聴すること、と、考えればわかりやすいかと思います。
  陰に回ってもっともらしい噂を吹聴しては、相手の社会的信頼を失墜させていく。
  そしてその目的は・・・。

  その目的は?
 
問いかける私にK氏はニヤリと笑い、

  周囲から孤立させることですよ。

私はそのとき、K氏むの話になるほどと思った、
確かにネガティブな風評は相手にかなりのダメージを与える。
そうした意味ではK氏の話に不合理性はない、だが、しかし、なんのために風評を流布し孤立化させるのか?
その点をK氏に訊いてみた。

  簡単なことですよ、相手を好きなようにイタブルには孤立化させて、
  誰も味方しないようにしてしまえばいい、
  そのためにはもっともらしい悪い噂を流布しては周囲を感化洗脳させてしまうことです。

  なるほど・・・。

私はK氏の説明に、どこか蒙を啓かれるような感じを受ける。
私は強い関心を抱くと、K氏の体験をもっと詳しく聞こうと思い立つ。

  なかなか興味深い話ですね、で、その周囲の人々の態度変化の後、どうなりましたか?

K氏は静かに語りだす。

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