小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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賃貸マンション居室の過半数が市の借り受け? そしてその過半数の世帯が市から借りている?

  ははぁ・・・、そうなんですか? ぜんぜん知りませんでした。

  ハハハハ、この賃貸マンションで公団との契約者は半分以下ですね、後はみんな市との賃貸契約です。

  はぁ、つまり、市が『又貸し』しているということですか?

  ぶっちゃけた話、そういうことですよ。

私はこの話に疑問を感じた。

  市が『又貸し』しているといいますが、なぜそんなことを?

菊池さんは一呼吸置いて答え始めた。

  もともと、この場所には古い市営住宅がありましてね、それが余りにも古くなったということで建て直しの話が出たんですよ。
  それから公団側も古くなった建物を立て直す計画を打ち出しましてね、
  それで市議会が公団側と掛けあって市営住宅を取り壊した跡地に新たな公団の賃貸マンションを建てさせる代わりに、
  その一部を市が借り受けるということで合意したんですよ。
  この辺りの公団の多くは一部が市の借り受けになっているんですよ。
  そしてその部分を市が格安の家賃で低所得者に貸しているんです。

私は思わず窓から見える数棟の公団マンションに目を配る。
そうだったのか、まったく知らなかった。

  はぁ、そうだったんですか、それは知りませんでした。

菊池さんはニコニコ笑いながら話を続ける。

  それに、あまり大きな声じゃ言えませんけどね。

  はぁ、それはどのような?

  公団契約の人達も、実は『又貸し』している人が多いんですよ。

私は思わず問いかえす。

  はぁ? どういうことですか、それは? 市の又貸しなら話は判る、
  しかし、個人が又貸ししているなんて、そんなの違法じゃないですか。

  以前はね、でも、公団も数年前にそれを撤廃してるんですよ、
  つまり居住目的以外にも賃貸契約を結ぶことができるようになったわけですよ。

  ふふん、そうですか、それも知りませんでした。

  ですから、一条さんの言われる駐車場の件については、おそらく『又貸し』している公団契約者でしょう、
  自分で住まないで従業員に貸している例が結構多いんですよ。

  従業員に? というと、つまり一種の社宅ってことですか?

  そうですね、その通りです。

  どんな人が『又貸し』を?

  そうですねぇ、零細の自営業者が多いみたいですね、例えば建設関係なんか。
  一条さんの指摘される箇所なんか、まさにそうですね。

私はそのとき理解した。
時折エレベータに乗り降りするニッカポッカの男たちが出入りしていることを・・・。

  ふぅむ、ですが、規則は規則ですよ、又貸しであろうがなんであろうが、居住する以上、きちんと守ってもらいたいものですね。

すると菊池さんは笑顔を引っ込めると、

  一条さん、あまりこの話を問題視しないほうがいいですよ、
  自分の生活に実害がないなら放っておいたほうがいい、それが生きる知恵ってもんですよ。

  生きる知恵?

  ええ、生きる知恵ですよ、これもあまり大きな声じゃ言えませんがね、
  市と契約している居住者や又貸ししている自営業者はその多くがある団体に属しているんですよ、
  この団体に睨まれると厄介ですからね、まぁ、自分の生活に実害がない限りは、見て見ぬふりしているのが一番ですよ。

私は菊池さんの言葉に興味を感じた、ある団体? ある団体とはなんだろう?
そこで私はそれを聞いてみた。

  そうですか、ある団体ですか、で、それはどのような団体ですか?

菊池さんは周囲を憚るかのように私の耳元に囁いた、そして私は驚いた。
それは例の広域カルト組織に他ならない。
すると私は多くの広域カルト組織メンバーに囲まれていることに気が付く。
やはり集団ストーカーと広域カルト組織は深い関係にあるようだ。
となると私を監視している不審車両も・・・。

敵の中に囲まれていることに気が付いた私は愕然とする。
自治会事務所を後にした私は周囲に立ち並ぶ公団マンションを見ながら居室に戻っていく。

部屋に戻った私はFAXが届いていることにきがついた、どうやら今まで取材した人からの情報提供らしい。
内容はある企業が行ったブラックなリストラ手法に関する情報だった・・・。

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