小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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L氏が勤務していた会社は某大企業の出資によって設立された子会社だったそうだが、
その勤務先で或る日を境に異変が生じる。

それはK氏と同様、社内の上司や同僚の態度変化から始まる。

特に上司の態度が妙にシビアになり些細なミスを、
なにやってんだと言わんばかりの口調で攻め立てるだげてなく、
嫌味さえを言うようになってくる。

そのうち、まるでこちらの私生活を知っているぞ言わんばかりの『ほのめかし』まで行ってくる。

例えばL氏が気晴らしに風俗へ行けば、さっそく次の日に風俗を絡めた嫌味を言ってみたり、
帰りにラーメンを食べれば、それを絡めた嫌味を言う。
家でテレビを見ていればそれを絡めたりしてくる。

また同僚たちは、なぜかみな余所余所しい態度をとったり白けたような態度をとり始める。
総じて上司や同僚たちの自分に対する態度が妙に冷たく、
つっけんどんでシビアなものへと変質していったという。

そしてある日のこと。

自分の机の中にしまっていた書類がなくなっていることに気が付く。
ところがなぜか同僚の机の上に置いてある書類と混ざっていることが判る。

おかしいなと思いながらもそうしたことが度々おこり、
その度に上司から健忘症扱いされたり間抜け呼ばわりされるようになる。

さらに机の中にしまっていたはずの筆記具がいつの間にか無くなったり、
覚えのない筆記具が入っていたり、しまっている場所が入れ替わって入りたと、
おかしなことが起こり始める。

L氏は誰かが自分の机の中を悪戯しているのではないかと疑いだすが、
確たる証拠がないため言葉に出すことはしなかった。

そうしたおかしなことがL氏の私有車にも起こり始める。
車に乗ってルームミラーを見ると『角度』がずれていたりサイドミラーの『角度』がずれていたりする。
さらに不思議なことはいくら走っても燃料系が常に『FULL』になっていることだ。
燃料例の故障かと思うのだが、そうではなくとういうわけか燃料が常に満タン状態だ。
『減らないガソリン』としか言いようがない不可解なことが起こる。

こうした不可解な出来事は自宅に帰ってからも起こるようになる。

例えば、
■置物の位置が変わっていたり、テレビの位置がずれている。
■冷蔵庫内のペッボトル飲料から中身が漏れ出している。
■冷蔵庫しまっているはずのバターが窓際に置いてある。
■クローゼットの中の衣類の並び方が入れ替わっている。
■ミミズがのたくったいような文字の支離滅裂な意味不明な内容の古ぼけた手紙が出てくる。
■何十年も前の古い新聞がでてくる。
■財布の中のカード類の並べ方が入れ代わっている。

などなど、おかしなことが頻繁に起こる。

また、ゴミを捨てようてすれば指定のゴミ袋がごっそり紛失していたり、
衣替えをしようとすればしまっていたはずの衣類がなくなっている、
買い置きの食料品やペットボトル飲料の数が減っている、
買い置きの野菜が違う野菜に入れ替わっている等々。

さらに靴を履くと妙に足が熱を持ちヒリヒリと赤くはれ上がる、
男性用化粧品を使うとなぜかくしゃみがとまらなくなったり、
買い置きのペットボトル飲料を飲むとなんとなく辛い味がしたり、
その他飲食物の味が変わっている。

また、ペットボトルのミネラルウォーターを飲み続けていると、
なぜか足腰が弱くなり立つのがやっとになってくるが、
別な銘柄のミネラルウォータに変えると不思議とそれらが解消してくる。

また、風邪ひいて医者から薬を貰っても一向に熱が下がらない、
ところが別な銘柄のミネラルウォータで薬を飲むと途端に熱が下がる。
こうした不可解な出来事が頻繁に起こり始める。

 ふぅむ・・・。

私はL氏の話を考える。
どうやらL氏の場合、K氏のような某会絡みとは異なるらしい。
すると集団ストーカーには某会とは異なる別系統のものが存在していることになる・・・。
どいうことだろう?
私は話を先に進めるため、自分の思考を一旦停止させるとL氏に質問する。

  職場での上司や同僚たちの態度変化についてですが、
  こうしたことは自宅の近隣でも起こりませんでしたか?

するとL氏は内心驚いたように、

  はい、仰る通りです!
 
  ふむ、そうですか・・・。
  それと、ご自身に関する悪い噂が流されているようなむことを耳にしたことはありませんか?

するとL氏はまたも驚いたように、

  ええ、仰る通り! その会社に勤務していた頃の同僚から、
  そういった話を聞かされたことがありますね。
  これは勤務先だけじゃなく近隣の人から、
  も聞くに堪えない『噂』が流れていると教えられたことがありますよ。
  でも、なぜ、それが判るんです?

不思議そうに私を見るL氏。
やはりそうだ、どうやらK氏と同じようにL氏にも『噂』が流布されたらしい。
私はK氏の名前を伏せながら説明する。

  ええ、実は、あなたと同じような体験をしたと人がいることを掴んでいるからです。

するとL氏は身を乗り出すように、

  誰なんです? その人、教えてください!
 
  申し訳ない、これについては明かすことができません。
  我々ジャーナリストは情報源の秘匿が情報提供者との信頼関係の要となるからです。
  どうかご理解ください。

  そうですか・・・、わかりました。

L氏は納得すると次のような質問をしてみた。

  周囲の人々の態度変化の後、不審な車両や人物の待ち伏せや追跡はありませんでしか?

  ええ、ありましたよ、それも単なる追跡や待ち伏せではありません。
  それはこちらに判らせるような露骨で執拗なものでした。

私はさらに次の質問をしてみた。

  そうですか、それからパトカーや救急車に消防車、それと警察ヘリ、
  さらにタクシーや霊柩車との頻繁な遭遇や、
  妙にタイミングのいい遭遇の仕方はありませんでしたか?

するとL氏は感心するように、

  ええ、ええ、ありましたよ、よくご存知ですね!
  まったく仰る通り、これ、私は不思議でならないんです。

私は大きくため息をする。
ここでもK氏と同様の体験をしている。

  ところで、喫煙されますか?

  ええ、ちょうど吸いたいと思っていたところです。

私とL氏は一服する。

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