小説『鬼畜の宴』
作者:ウィンダム()

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立ち上る紫煙を見ながら私は考える。

今までの話からL氏の話とK氏の話を比較すると殆ど差異がないことに気が付く。
職場の上司や同僚、近隣住民らの態度変化、自分に関する悪い噂、光や音響を利用した神経工作、
自分のプライバシーをしっているかのような『ほのめかし』、
クルマのミラーのずれなどの車両のちょっとした異変、室内の置物や家具類の位置や角度のずれ、
しまっていた衣類や物品の位置が入れ替わる、あるいは別な場所から出てくるなどの、
所有する物品のちょっとした異変、そして飲食物の味覚変化など異変・・・。

どれもこれもK氏が体験しことと殆ど変わらない。

勿論、これらの全てが寸分たがわないというわけではない。
細かい点ではいろいろと異なるもののあるが、
それらの不審な出来事や物品や所有物のちょっとした異変など、
その根底にあるもの、そう・・・、K氏の言葉を借りるならば、
『同じテクニック』が使われているらしいことが判ってくる。

  あの・・・。

私が考えているL氏が話しかける。

  不審な人物についてなんですが、こういうこともあります。

  うん? どういったことでしょう?

  ええ、どういうわけか行く先々で喪服姿の男女に遭遇したり花束を持った男女に遭遇する、
  かと思えば塔婆を持った老婆と遭遇したりする・・・。

  ほほう・・。

  それだけではありません、もっと不可解なことは、ある日を境に浮浪者が現れるんです。

  浮浪者が? 

  ええ、出勤途中の駅の改札付近で毎朝その浮浪者が立っている。
  しかもそれは女の浮浪者でどういうわけか恨めしそうな目で私のことをチラチラと見るんです。
  こんなことが毎朝のように続いたので私は気味悪くなって改札を変えたんです。
  するとそれ以来ぴたりと現れなくなる。
  ところが・・・。

  ふむ、それで?

  それから数か月後のことななですが、或るとき繁華街を歩いていたら、
  どこかで見たような女が小ざっぱりとした恰好で歩いている。
  私はその女の顔に見覚えがあるのですが、それが誰なのかが俄かに思い出せない。
  私はその女が繁華街の雑踏に消えていくのを目で追っていると突然思いだしまた。

  何を思い出しました?

  はい、なんとその女、数か月前まで駅の改札付近で恨めしそうな目で立っていた女浮浪者だっんです!
  私は驚きましたよ。

私はL氏の話に関心を持つ。
この話はK氏からは聞いていない、私はもっと詳しいことを知るため質問する。
 
  ふむ、不思議な話ですね、他に変わったことは?

  ええ、まだあります。
  それから暫くすると今度は男のルンペンが頻繁に現れてくる。
  ところがこのルンペン、こちらが無視しているとそのうちいなくなるのですが、
  あるときパリッとしたスーツ姿で駅前を歩いているところを目撃する。

  ほう・・・。

  それからこんなこともありました。
  朝食をとるため毎朝行くファーストフードの店にあるときから『身体障害者』が現れる。
  その障害者は若い女で、どういうわけか決まった席に座ると恨めしそうな目で私を見るんです。

  ふぅん・・・。

  で、その若い女は毎日同じ服装で現れては同じ席に座り恨めしそうに私を見る・・・。
  私はこんなことが毎朝続くので店を変えると今度は帰宅途中の駅前に現れる。
  忌々しいので私は地下街を通ると今度はそこに現れてくる・・・。
  どう思います?

  うぅぅん・・・。

私はただ首を捻るしかない。

私は当初この話が不可解でしかなかった。
が、その後に判ってきたことだが多くの集団ストーカー被害者が、
こうした不可解な『浮浪者』や『身体障害者』が身辺に現れてくることを体験しているということだ。
また、そうした障害者のなかには知的障害者も少なくないことが判ってきた。

これらの『浮浪者』や『身体障害者』または『知的障害者』か、
あるいはそれらを装う『何者』かの身辺徘徊があったことは間違いないらしい。
だが、それが何を『意味』しているのかはわからない。
さらにL氏が体験した不審な人物はこれだけではない。

L氏は話し続ける。

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