小説『泡沫候補っていうな!』
作者:しょむ研 水野松太朗(しょむ系政治勢力研究会)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

○セックスパーティ

 セックスパーティといっても別に乱交パーティのことではない。要は性の問題を中心に取り上げる政党である。

 「オカマの健ちゃん」こと東郷健(雑誌「The Gay」編集長、ゲイバー「サタデイ」「BAR東郷健」経営)率いる「雑民党」は、同性愛者などセクシャルマイノリティの解放や、性表現を含む表現の自由化、障害者の人権擁護、天皇制廃止、反戦・平和、暴力団新法反対、反創価学会・反ユダヤ、飲尿療法の医療保険適用などを訴えた。性表現を多分に含んだ政見放送や選挙公報は話題となり、また、差別語の入った政見放送はNHKが当該部分を無許可でカットし憲法裁判となった(東郷としては差別の意図はなく、むしろ「差別語を用いて罵られた」という事実を述べ差別の不当性を訴えたものだった)。また、聴覚障害者の手話による政見放送(ラジオでは無音)も話題となるなど、様々な人権問題について考えさせる主張を展開した。一方、転向右翼の太田竜率いる「地球維新党」と繋がるという一面もあった。さらに、中曽根康弘(元首相)と東郷が蜜月の関係にあったという論も一部にある。党は現在活動停止状態にあるが、東郷は「もっともっと愛を」などのイヴェントを開き、精力的に活動を続けている。

 「AV新党」は1994年9月結党。党員は80人いるとのことだが、党首の井上あんりをはじめ、幹事長の五十嵐いずみ、林由美香、有希蘭など、名乗りを上げている党員は全てAV女優。党名のAVは「アダルトヴォデオ」でも「オーディオヴィジュアル」でもなく、「エイブル・ヴォランティア(Able Volunteer)」の略であるとのこと。「政治からモザイクを無くす」を合言葉に、奉仕活動の推進、憲法9条改定による軍備増強、消費税増税、青少年へのポルノ普及による性教育推進と性犯罪抑止などを公約として掲げていた。連絡先電話番号は当時アダルト情報番組にも使われていたダイヤルQ2の「0990」番号であり、その番号の書かれたプラカードを掲げて街頭に出るなど、かなり派手なパフォーマンスを行なっており、週刊誌「FLASH」やTV番組「トゥナイト2」などのメディアでも取り上げられていた。TV朝日の深夜番組「タモリ倶楽部」でも特集が組まれ、模擬政見放送が制作・放映された。模擬政見放送は、候補者役の女優が政見を語りながら座っている椅子が回転し、Tバックをはいたお尻が見えるというものだった。

ところが、選挙直前になって活動はピタリと止み、選挙出馬どころか以後2度とメディアに現れることはなかった。自分は当時「そもそも新党は政界進出ではなく、女優のPR活動・ヴィデオの販促活動が目的だったのではないか?」と思い、それ程気にも止めなかった。また、候補者の大半は衆院選の被選挙権年齢の25歳にも達していなかった。しかし、近年実話誌に「新党は政治ゴロであり、出馬取り下げの引き換えに他党へ金品や便宜供与等をを要求していた」という衝撃の説が載せられていた。その後林は謎の変死を遂げ、井上・有希も死亡説が流れている。

-25-
Copyright ©しょむ研 水野松太朗 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える