小説『ハーフ 【完結】』
作者:高岡みなみ(うつろぐ)

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 二人が買い物を終えて、聡美のアパートに着いたのは夕方に近かった。昼食をとってからすぐ買い物に出たので四時間以上買い物をしていた事になる。
「ねえ、聡美。どれくらい買った」
「あまり買ってないんじゃないかなあ。Tシャツ三枚、ブラウス二枚、スカート、サンダル、ピアス、パンツ……。三万か四万くらいじゃないかなあ。そっちは」
「もっと少ないかな。二万いってないと思う」
「でも疲れたね、シャワー浴びたい」
「賛成、それにおなかすいた」
「聡美、先にシャワー使ってくれば。その間に私、買い物してくる」
「うん、そうさせてもらおうかな」
「じゃ、行って来るね」
 玲子はそういうと、さっさと立ち上がり出掛けていた。聡美は、エアコンのスイッチを入れ、ベランダの朝顔に水をやってから、浴室に向かった。浴室の前には姿見とヘルスメーターがおいてある。聡美は、いつも自分の姿を見ながらヘルスメーターに乗った。徐々にではあるが、体重も落ち、気のせいか、体つきも女性に近づいてきたような気がする。しかし、腰回りはどうしてもゴツゴツとし、体重が減ると同時にお尻も小さくなってきた。本当の姿を姿見に写してみると、つくづく『男性という存在である自分』を意識させられてしまう。
 シャワーを浴び終わると同時に玲子が戻ってきた。
玲子は「飲み物も買ってきたから、飲んでていいよ」といい、そのまま浴室へ向かった。浴室の方から「えー。このヘルスメーター狂ってない?。ショックだわ」と玲子の声がした。聡美は玲子が出てきたら、絶対ダイエットする、と言うだろうなと、思いながらグラスに玲子の買った麦茶をペットボトルから注いだ。今日は何か作ろうかな、と考えながら、ぼんやり窓の外を眺めながらベッドに腰掛けていると、玲子が「もう、絶対にやせる」と、いいながら玲子が出てきた。
「そう言うと思った」
「だってショックなんだもん。減らないなら我慢できるけど、増えちゃうんだよ。もうすぐ夏休みなのに」
「毎年恒例だね、玲子のダイエットは。でも今くらいでちょうどいいよ」
と、聡美は笑いながら言った。玲子は、髪を拭きながら
「食事どうする」
と、言った。
「麦茶飲んでたら、おなか空いてたのがどっかいっちゃった」
 玲子は、笑いながら
「不健康だなあ。わたしはおなか空いた。聡美は休んでていいよ」
と、言った。
 玲子は冷蔵庫を開けると、じっと中を睨んで、小さく「ようし、決まった」と言って、やかんいっぱいに水を入れ、沸かし始めた。聡美が『彼』だった頃から、玲子はよくここに来て夕食を作り、二人はそれを楽しんだ。あの頃は、恋人として作っていたのだろうが、今、玲子はどういう思いで、夕食を作ろうとしているのだろう。聡美は、玲子の後ろ姿を見ながら、ぼんやりと考えていた。玲子は手際よくタマネギを切ったり、卵を割ったり実に手際よく調理し、三つの皿をテーブルに準備した。

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