小説『ハーフ 【完結】』
作者:高岡みなみ(うつろぐ)

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 玲子が帰ってきたのは九月二日だった。翌日五号館前で待ち合わせた。
「ねぇ聡美。まだまだ暑いんだけど何とかならないの?これ」
玲子は開口一番こう言った。
「そんなこと言ったってしょうがないじゃん」
「デパートでもスーパーでも秋物になってるのよ。なんで現実社会がこんな暑いのよ」
「それよりさぁ、実家はどうだった?甘えてきた?」
「甘えるどころじゃないわよ。私も聞いてなかったんだど、事務の人が二人辞めたんだって。それで、会社としては人件費削減に貢献したってことになるんだけど、仕事が回りきらないらしいのよ。パートの募集をかけるかどうかで父親と母親で揉めてる真っ最中に私が帰っていったのよ」
「そうなんだ」
「と言うことは・・・私は格好の無給の労働力だったわけ。全く何しに帰ったんだか。毎日毎日伝票の整理やら電話番よ。大学始まるからって逃げ出してきた感じね」
「どこも楽じゃないってことか」
玲子は
「聡美の方はどうだったの?バイトが大変だったみたいじゃない」
と私の方に話を振った。
「うん、最初はちょっとだけのんびり目立ったんだけどね・・・」
「と言うことは後半はかなりきつかった?」
「そうなのよ。ほら、前期の途中から始めた時ってプリント作成だけってみたいな話しだったしょ。そのプリント作成はそのまま私の仕事ってことで定着しちゃって、そこへ事務作業まで入ってきたじゃない。それが神経すり減らすのよ。出欠の確認も最終的には保護者に報告する元ネタになるし、成績なんて入力ミスでしたじゃ済まないし、もう大変。気が休まらない。帰りもどんどん遅くなってたしね」
「そうかー。聡美も大変だったんだ。でも、残業はついたんでしょ。それって大きいよね。私なんてお小遣いだもんね」
聡美はちょっとためらいながらも言った。
「そう、確かにまとまったお金をもらったんだし、これから先も雇ってくれそうだから安心だけど、まとまった出費があるかなーって思っているの」

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