小説『2対1』
作者:カノン()

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――暗闇の先。
そこは、当初想像したファンタジックな場所とは異なり、ガンダムのホワイトベースを思わせる近未来的空間だった。

「アンタ誰っ!?なんで、ここに入ってこれたのっ!?もしかして未来マフィアっ!?」
「えっいやその……そ、そうだ!ひ、姫野さんに用があって来たんだ!」

いきなり、目の前の暗闇から一人の少女が現れる。
俺は、思わぬ人との遭遇にしどろもどろしながら、苦し紛れの言い訳をする。
すると、ハイテンションな元気少女は手をポンと叩く。

「あー。さやか姉ちゃんの友達ってわけね!」
「う、うんそうそう!……ん?そういや、さやかって確か姫野さんの下の名前だったような……。姉ちゃんってもしかして……姫野さんの妹っ!?」
「うんそーだよ。ってなんでさやか姉ちゃんのこと、さん付けしてんの?確か、泰斗さんだよね?同い年だよね?」

まさか、姫野さんの妹だったなんて。それにしても似てないな。
元気だし。明るいし。大人な雰囲気って言うより、まさにロリって言葉が似合いそうだし。

ん?そういや、今の会話に突っかかりがあるような……

「な、何で、俺の名前を知ってんのっ!?確か会ったことないよね!?一体キミは何なの?」
「私は、外出ないから会うはずないよー。で、私は誰かというと……」
「……」

少女は何故か深呼吸をして、一拍置く。
そして、目を大きく見開いて、手を腰に当てて自信に満ちた声を腹から発する。

「知らないのですか?私こそ超プロフェッショナル情報処理係。姫野あやかちゃんです!」
「……パクリ?」
「うぅ、何よその、痛い子を見る目は……。うるさいなぁー!この時代のアニメが好きで何が悪いのっ!」
「別にいいけどさ……。ん?この時代?さっきも、未来マフィアとか言ってたけど、どういうこと?何か『私はここの時代の人じゃないんだよ!』みたいな発言だよね?」
「へ?や、やばい……これって私たちの正体、バレそうだよね……。やっぱし、今の無し!わ、忘れろよな!」
「そういうわけにはいかんなぁー♪」
「ひぃー!この、お兄ちゃん怖いよー!さやか姉ちゃん助けてー!」

アニメ好き、綾香ちゃんは暗闇の先にあった、横開きの自動ドアの奥に、消えてしまう。
もしかして、この奥に姫野さんがいるのか?この奥に何かあるのか?

「……。この先に何があるんだぁー♪」

俺は正直自分の好奇心を抑えきれなくなっていた。たぶん俺、気持ち悪いくらい頬吊り上ってただろうな。
自動ドアが閉まりそうだったので、ダッシュで扉を潜り抜ける。

「うわぁぁあああん!この人ニヤケ顔怖いよぉ!」
「……中身は優しい人だよ。でも、襲ってくるかもだから用心してね」
「……襲うわけないでしょ!」

姫野さんは、太ももに飛び込んできたあやかちゃんの頭を撫でている。
うぅ。俺も、今負った心の傷を癒して欲しい。いくら、しつこいからって『襲われる』ってイメージを持つのはあんまりだ!

「……ここまで、来たら隠しても無駄か」
「で、結局二人は何者なんですか?」
「私たちは……」

姫野さんは目を瞑って深呼吸。ホント、この姉妹は深呼吸好きだな……


「私たちは、家系図を作るためにやってきた。……未来人だ」


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