小説『2対1』
作者:カノン()

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「私たちは、家系図を作るためにやってきた。……未来人だ」
「へ?み、未来人っ!?要するに未来からその、タイムマシーンで???」
「ま、タイムマシーンという名前じゃないけどね!そゆことだよ」
「でも、何のために未来から来たんだ?例の家系図に何の意味が?」
「うーんとね。実は未来では新手の殺人が流行ってるんだなぁー」
「殺人っ!?」

殺人だって!?……うーん。いくら考えても、殺人と家系図の関係性が掴めない。

「泰斗さんは、時間旅行とかしたことないよね?」
「時間旅行って???タイムスリープのこと?勿論ないけど……」
「……未来では、時間旅行は誰でも当たり前に行えるんだ」
「そう。だからこそ、時間旅行を利用して殺人が起きてるんだよね」
「へ?時間旅行すると、代償に誰かが死ぬってことかっ!?」
「うーん。ちょっと考えすぎかな……」
「……時間旅行で人が死ぬなら、私たちはここにいない」
「うっ。じゃあどういうことなんだ!!」

俺は、さっきから間違いだらけなのが恥ずかしくて、ちょっと怒鳴るように質問する。
それに少しビクッとなったあやかちゃんは続ける。

「最近になってわかったんだけどね……。もし、未来人によって過去人が殺されると、その殺された過去人の血を受け継いだ家系の未来人も死んじゃうんだよ……。未来人が存在できなくなっちゃうんだよ」
「……過去人が過去人に殺されるのは、過去によって定められた運命だから未来に影響はない。要するに、そこで殺された過去人の家系は、未来には元々存在していないってことになる」
「でも、未来人が過去人殺すことによって、過去によって定められた運命が変わってしまう。運命が変わると、殺された人の家系は連鎖的に存在できなくなってしまうの。時は運命の矛盾を消すの」

だめだ、意味不明すぎる。複雑すぎる。

「うーん。九割くらい意味不明だけど……。要するに未来から来た人が人殺しをすると大変ってことでしょ?」
「まぁそうだね」
「……だから、過去の家系の人への殺人を防止するために、未来国際警察に家計図を提出して守ってもらうんだ」
「でも、そんなんなら過去の人全員を守って貰えばいいじゃん?」
「それは流石の未来国際警察でも、無理だよ。そんな大勢の過去人は守れないからね。だから、申告制なんだ」
「じゃあいっその事、時間旅行を廃止すればいいだろ?」
「……それも、無理がある。世界政府は一度時間旅行を廃止しようとしたんだ。でも、時間旅行の装置を開発・販売している会社や、時間旅行を手がける、旅行会社など。時間旅行に関わる人たちの反発が強くなった」
「結局は未来でも過去でも、自分の利益のためなら多少の犠牲は仕方ないって人がいるってわけだね。ま、勿論そういう人は自分に被害が出るのが嫌だから、既に莫大な権力を使って家系図を作って、未来国際警察に提出してるよ」

悲しい話だ。権力者の利益のために誰かが傷つくのは今も昔も変わらないってわけか。

「そういえば、さやか姉ちゃん。今日は公園行かないの?」
「……今行こうと思ったところだ。では、情報処理頼んだぞ」
「りょーかい!いってらっさーい!」
「それじゃあ俺も行くよ!」
「わかった。ちょっと待ってて……」

姫野さんはショーケースから、怪しいトランクバッグを取り出す。

「これ。身の危険に晒されたら使うといい」
「えっ?あ、あぁ。ありがと……」
「それじゃ。公園に行こう。そこの丸い円盤の上に立って」

俺は言われた通りに緑に光る怪しい円盤の上に立つ。姫野さんは細くて白い左腕につけていた、腕時計を弄る。すると、腕時計は『ジュンビカンリョウシマシタ。イツデモテンソウカノウデス』と言い出す。へ?転送?
なんかちょっといやな予感がする……

「よし。れっつらごー」

円盤が光りだす。
そして、俺ら二人はどこかに飛ばされた……

-4-
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