小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第3話〜




Side 渚


「粗茶です」

「あっ、どうも」

「ありがとうございます」

 ソファーに座った僕たちに、ポニーテールの姫島朱乃先輩がお茶を入れてくれた。元から知っていたのもあるが、リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩は校内で有名で人気もあるのでわかる。

「うまいです」

「たしかに、おいしい」

「あらあら、ありがとうございます」

 先輩が入れてくれたお茶を飲む。家で淹れるお茶よりおいしかった。先輩はうふふ、と嬉しそうに笑っている。

 テーブルを囲んで座っているのは、兄さん、僕、木場、塔城さん、グレモリー先輩。

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい」

「はい、部長」

 彼女はそう言って、グレモリー先輩の隣に座った。

 そして、全員の視線が僕と兄さんに集中する。

「単刀直入に言うわ、私たちは悪魔なの」

「ホントに単刀直入ですね」

 兄さんは正直何を言っているのだ? と言う表情を浮かべている。まあ、いきなりこんなことを信じろと言う方が無理だろう。

「信じられないかもしれないけど、イッセー、あなたは昨夜黒い翼の男を見たでしょう?」

しかし、兄さん昨日はそんなファンタジーな目にあっていたのか。

「あれは、堕天使。神に仕えていた天使が地獄に堕ちてしまった存在。悪魔の天敵でもあるわ」

 兄さんはファンタジーもここに極まる。とか考えているに違いない。

「私たち悪魔は堕天使と太古から争っているわ。冥界・・・人間で言うところの地獄の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの」

 そして、天使を含めた三すくみの関係を説明される。兄さんがオカルト研究部ってそういうこと? と言っている。確かに信じられるような話ではないだろう。正直原作知識がなければ正気を疑っている自身がある。

「オカルト研究部は仮の姿よ。私の趣味。本当は私たち悪魔の集まりなの」

 はい、そうですね。と兄さんは信じられまい。

「天野夕麻」

「? 誰です、その人?」

 兄さんを見てみると目を見開いていた。

「あの日、あなたは天野夕麻とデートをしていたわね?」

 俺は知識としては知っているが、記憶にないので黙っておく。

「・・・・・・冗談なら、ここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話したくない」

 珍しく、兄さんの声に怒気が籠っていた。

「彼女は存在していたわ。確かにね」

 はっきりと断言する、グレモリー先輩。僕は蚊帳の外だ。

「まあ、念入りに自分であなたの周囲にいた証拠を消したようだけれど」

 グレモリー先輩が指を鳴らすと、朱乃先輩が写真を一枚取り出した。

 兄さんはそこに写っていた人物を見て、言葉を失っている。僕もその写真を覗き見ると、彼女についての記憶が蘇った。

「ああ、思い出した。確かに、兄さんに彼女の写真として見せられた子だ」

「そう、渚くんは思い出せたのね。イッセー、この子よね?」

 兄さんは黙ってうなずいている。

「この子は、いえ、これは堕天使。昨夜、あなたを襲った存在と同質の者よ」

 グレモリー先輩は足を組み替えて、話を続ける。

「この堕天使たちはある目的があって、イッセーに接触した。そして、目的を果たしたから、自分についての記憶と記録を消したの」

「目的?」

「そう、イッセー、あなたを殺すため」

 兄さんは隣で息を飲んでいる。

「なんで、兄さんが?」

「それは、今から説明するわ。イッセーは運がなかったのでしょうね。殺されない所持者もいるわけだし・・・・・・」

「運がなかったって!」

 兄さんが叫ぶ。しかし、殺されたと言われたが自分が生きていることに不思議なようだ。

「さっき、所持者って言っていましたよね? 兄さんは何を所持していたんですか?」

「|神器(セイクリッド・ギア)よ」

「なんですか? それは?」

僕の質問に、グレモリー先輩が答え、その答えに兄さんがさらに質問した。

「|神器(セイクリッド・ギア)とは特定の人に宿る、規格外の力。歴史に名を遺した人たちはこれの所持者だと言われているんだ」

 今まで口を開かなかった木場が説明する。

「現在でも体に|神器(セイクリッド・ギア)を宿す人々はいるのよ。世界的に活躍している方々がいらっしゃるでしょう? あの方々の多くも体に|神器(セイクリッド・ギア)を有しているのです」

木場の説明に、朱乃先輩が繋ぐ。さらにグレモリー先輩も続いた。

「大半は人間社会規模でしか機能しない弱いものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った|神器(セイクリッド・ギア)があるの。イッセー・・・・・そうね、試しに渚くんも、手を上にかざしてみて」

 僕は右腕を、兄さんは左腕を上にあげる。

「じゃあ、まずはイッセーから、目を閉じてあなたの中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみてちょうだい」

「一番強い存在・・・・・・・。ド、ドラグ・ソボールの空孫悟かな・・・・・・」

 漫画のキャラかよ。まあ、確かに空孫悟は強かったけどさ、なんか怪しくなってきたぞ。

「それじゃあ、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」

 グレモリー先輩はどうやら、あれをやらせるつもりらしい。空孫悟で思いつくのはあの技しかないからな。

「ゆっくりと腕を下げて、その場で立ち上がってちょうだい」

 兄さんは腕を下げ、立ち上がる。

「そして、その人物の一番強く見える姿を真似るのよ。強くよ? 軽くじゃダメ」

 兄さんは、かなり躊躇しながらポーズをとり始める。そして、兄さんはやった。

「ドラゴン波!」

 気合の込められた兄さんのドラゴン波の掛け声とともに、左腕に赤い籠手が現れるが、僕はそれどころじゃなかった。

「ドwwwラwwwゴwwwンwww波www」

 腹筋が崩壊しそうだ。腹痛い。ネタとしてやったならまだよかったけど、気合のこもったガチのドラゴン波だった。涙の滲んだ目で見ると、兄さんは顔を赤くしていた。恥ずかしいらしい。周りの人たちも肩を震わせていた。必死に笑いをこらえているらしい。

「はぁー、はぁー、はぁー」

「ようやく、息が整ったみたいね。次はあなたの番よ」

 兄さんは僕に盛大に笑われたのが、悔しいのかニヤニヤしながらこちらを見ている。

「さて、俺の弟の考える最強の存在はなんなのかな?」

 兄さんの顔が完璧に悪役の顔になっているよ。

 とりあえず、グレモリー先輩が言っていたことを、思い出しながらポーズをとる。

(イメージするのは常に最強の自分・・・・・・)

 某赤い弓兵さんの発言を思い出しながら、僕の原型である彼女だけの必殺の構えを取った。

 右足を前にだして腰を落とし、右肩を突き出すように上半身を捻る、手に剣を持っているイメージをし、目を閉じる。

 集中して、それが最大限に高まったと同時に目を開いて、握っている剣を一閃する。

「ハァッ!!」

 上半身を捻って、剣を振り切る。その状態で止まっていると、光が集まって、重厚な剣になった。よく見ると、ペンダントもついている。

 それと、同時に僕の体から何かが湧き上がってきた。

「・・・・・・すごい」

「うん。これは驚いた」

 塔城さんと木場がそう言う。兄さんはよくわからないようだ。

「あらあら、これは」

 朱乃先輩は片手を頬に当てて、驚いていた。

「どうしたんですか?」

兄さんがグレモリー先輩に聞いている。

「彼の魔力の量が桁違いなの。これは、魔王に匹敵・・・・いえ、たぶん魔王以上の魔力量だわ。私たちの誰よりも多いのよ。(祐斗から眠っている魔力の量はかなりあるとは聞いていたけど、これほど膨大な量だなんて・・・・・・)」

 初めて、|神器(セイクリッド・ギア)を出したので、ちょっと感動だ。人目につかないところで発動しようかと思ったこともあったが、|神器(セイグリット・ギア)を出して、天使や悪魔、それに堕天使の目に留まるかもしれないと思って自重していたのだ。

「ただ、渚の|神器(セイクリッド・ギア)ははずれね。それは本で見たけど|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)といって、扱いきれない代物らしいわ。歴代の所持者は誰も鞘から剣を抜けなかったみたいだし、しかも、重いし鞘に収まっているから切れないみたいね。それに、特に能力もないみたいだし、剣として使えない欠陥|神器(セイグリット・ギア)よ」

「確かに、これは鈍器といった感じですね」

 兄さんが|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)を見た感想を言う。しかし、あの神様は|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)にそんな設定をつけていたのか・・・・・・。確かに、鞘から抜いてこそ真価を発揮する|神器(セイグリット・ギア)で、一応は神様が僕のために用意した代物だ。他の人には使えないのもうなずける。

「まあ、いいわ。それがあなたたちの|神器(セイクリッド・ギア)よ。あとはあなたの意志で発動できるわ。ところであなたのあの構えはなんなの?」

「あれはオリジナルですよ。木場は僕と試合をしたからわかるだろうけど、僕の目のよさは知ってるだろ?」

「まあね。君は僕の竹刀を完璧に見切っていたし、後の先でしょ?」

「そう言うことです。そんな訳で、僕は一撃必殺のカウンターが得意なんだ。で、あの構えが僕の見出した必殺の構えってこと。つまり、僕の中の最強だったからあの構えをしたってこと」

 さっきも言ったが、某赤い弓兵の言うとおり、『イメージするのは常に最強の自分』ってこと。僕は説明を終えて、再びソファーに座る。グレモリー先輩が話を続けた。

「それでイッセーは、|神器(セイクリッド・ギア)を持っていたから殺された。渚くんには気づかなかったみたいだけどね。そして、私はあなたを悪魔として転生させたの」

 バッ! と僕以外の全員に蝙蝠のような翼が生えた。兄さんは自分の翼に驚いている。

「改めて、紹介するわね。祐斗」

 木場が僕たちに向かって笑う。

「僕は木場祐斗。同じ二年生で、悪魔です」

「・・・・・・・一年生。・・・・・・・・塔城小猫です。よろしくお願いします。・・・・・・悪魔です。」

 小さく頭を下げている塔城さん。

「三年生の、姫島朱乃ですわ。副部長をやっています。これでも悪魔ですわ。うふふ」

礼儀正しく、頭を下げる。姫島朱乃先輩。

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセーに渚くん」

 堂々と言うグレモリー先輩。

「すみません、僕は悪魔ではないんですけど・・・・・・・」

 空気を読んでないかもしれないが、ここは重要だ。

「それは・・・・・」

 グレモリー先輩は一旦言葉を切る。

「よかったら、あなたも悪魔にならない?」

 グレモリー先輩は懐から、幾つかの駒を取り出した。


Side out

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