小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第42話〜






Side 渚


「なるほど、妹がご迷惑をかけてなくて安心しました」

「そんなお兄さん! リアスさんはとてもいい子ですわよ」

「ええ、リアスさんはナギにはもったいないぐらい素敵なお嬢さんです」

 なんぞこれ? 現在うちのリビングで魔王さんと両親が談笑している。魔王さんの隣にはリアス先輩。その後ろにはグレイフィアさんが立っている。

 兄さんの「家に来ますか?」の発言に魔王さんは二つ返事で快諾。リアス先輩は必死に抵抗していたが、魔王を止められるはずもなく、こうして家についてしまった。

 僕と兄さんとアーシアさんの三人は少し離れたところでそれを見守っていた。ちなみに、魔王さんはサーゼクス・ルシファーでなく、サーゼクス・グレモリーと名乗った。捨てたはずの名前を名乗れたためか、楽しげに見える。

「そちらのメイドさんは―&#8212;―」

「ええ、グレイフィアです」

父さんの質問に魔王さんが答える。

「実は私の妻です」

『えええええええええええええええええええええええええッッ!』

 リアス先輩以外の全員が驚きの声を上げた。しかし、グレイフィアさんは無表情で魔王さんの頬をつねる。

「メイドのグレイフィアです。我が主がつまらない冗談を口にして申し訳ございません」

「いたひ、いたひよ、ぐれいふぃあ」

 静かに起こっているグレイフィアさんとは対照的に涙目で朗らかに笑っている魔王さん。リアス先輩は両手で顔を覆っている。よほど恥ずかしいんだろう。

「それでは、グレモリーさんも授業参観を?」

 母さんが頬を赤く染めながら話しかける。イケメンフェイスにやられたようだ。

「仕事が一段落しているので、この機会に妹の学び舎を見つつ、授業の風景も拝見できたらと思いましてね。当日は父も顔を出す予定です」

「まあ、リアスさんのお父さんも」

「ええ、本人はリアスの顔を見たいだけだと思いますけど」

「グレモリーさん! お酒はいけますか? 日本のおいしいお酒があるんですよ」

 父さんが秘蔵のお酒をキッチンから持ってくる。

「それは素晴らしい! ぜひともいただきましょう! 日本の酒はいける口なのでね!」

 乗り気でフレンドリーに魔王さんは対応していた。





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「そんな・・・・・・ナギと寝てはダメなのですか?」

 宴の時間も終わり。就寝の時間となった。リアス先輩は僕の部屋の前で悲しそうな顔をして魔王さんに詰め寄っている。冷静に考えると、年頃の男女が一緒に寝ることの方がおかしいと思うのは、僕だけなのだろうか・・・・・・? この前なんて、母さんゴムを渡されましたよ・・・・・・。

「今夜は彼と少し話しながら床につきたいんだ」

 前までは何日かに一回だったのが最近ではほぼ毎日僕のベッドに潜り込んでリアス先輩は一緒に寝ているのだ。

「一人で寝れる? 私が隣にいなくても平気? 私は平気じゃないわ。あなたが隣にないというだけで・・・・・・・」

 明らかに依存されてます。リアス先輩はグレイフィアさんに手を引かれて自分の部屋に行った。

「さて、中に入ろうか」

「ええ」

 二人だけになると、何を話せばいいのかわからなくなる。特に会話もなくお互いに寝る準備を進めた。

「あの・・・・・・」

 電気も消して、横になる。さすがに無言でいるのがつらくなってきたので話しかけることにした。

「なんだい?」

「そのですね・・・・・・。婚約のことで怒ってませんか?」

「なんでそう思うんだい?」

「ライザー・フェニックスは公式戦実質負けなし。フェニックスの特徴である高い不死性があるのでまず負けることはない悪魔です。そんな悪魔とレーティングゲームで結婚を決めようとしていたんですから、出来レースに近かったんじゃないかと」

「ふむ。確かに出来レースの部分があったことは否定しない。だが、魔王としてではなくリアスの兄として言わせてもらえば、キミがライザーを倒してくれてよかったと思う。おそらく父もだろう。妹の幸せを願わない兄がいないように、娘の幸せを願わない父もいないのさ。あの婚約はもともと強引に進めていたところがあってね。リアスには申し訳なく思っていたんだ。そもそも、リアスが絶対に当主を継がなければいけないわけではない。私の息子が継いでも問題はないんだ」

 僕の言葉を聴いて、魔王さんが答えてくれた。というか、あなた息子さんがいたんですか・・・・・・。悪魔は長命だから、見た目が当てにならないな。

「でも、婚約が破棄されたことでフェニックス家とグレモリー家の名に傷がついたんじゃありませんか?」

「気にすることはない。フェニックス家の方もあの婚約は急ぎすぎたと納得している。家名に傷がついたのは確かだが、あの程度のことを気にするほどフェニックス家もグレモリー家も狭量じゃない」

 その言葉に一安心した。逆恨み的なことで攻撃でもされるのは嫌だったからだ。

「それと、キミの身柄は私が保証するから心配しなくていい。人間でありながら私たち魔王に匹敵するほどの魔力を持つキミを手放す理由はない。(悪魔全体のためにもキミの力は放っておくことはできないからね)私以外の魔王もキミに興味を持っていることだし・・・・・・。それに、妹がキミのことを大切にしているのもある。あんなに楽しそうなリアスは冥界でもめったに見れなかったからね。毎日が楽しいのだろう。私はキミのおかげだと思っている」

 魔王さんはシスコンなんだろう。とてもリアス先輩のことを大事にしているのがわかった。

「兵藤渚くん。妹をこれからも頼むよ」

「もちろんです。約束しましたから」

 魔王さんはそうかと言って、小さく笑った。

「ありがとう。・・・・・・そうだ、キミのことをリアスと同じようにナギくんと呼んでもいいかな?」

「構いませんよ」

「ありがとう。では、ナギくん、私のことも名前で呼んでくれないかな?」

 魔王を人間が名前で呼んでもいいのだろうかという考えが頭をよぎるが、本人がいいと言っているのだから構わないのだろう。

「ああ、お義兄さんでもいいからね」

「ハハハ、お義兄さんですか? それは万が一、僕がリアス先輩と結婚したら呼ばせてもらいますよ。今はサーゼクスさんでお願いします」

「そうか。お義兄さんと呼ばれてみたかったのだがね。まあ、今はこれでいいだろう(ふむ・・・・・・。どうやら、リアスの気持ちには気づいてないようだな。しかし、脈がないというわけではないようだ。それにライバルも多そうだしね。ぜひともリアスにはがんばってもらいたいな。よし、私もサポートしようではないか)」

 なにやら、考え中のようだ。魔王という役職なのでいろいろ考えることがあるのだろう。

「時にナギくん。キミはどんな女性が好みなんだい?」

「女性の好みですか?」

 急な話題変換に疑問符を浮かべる。

「その通りだ。胸が大きいとかあるだろう」

「そうですね。でも、僕って女の子みたいな容姿じゃないですか。この容姿だと好きになってくれるような女の子がいるとは思えないんですけど」

「そこはひとまず置いておくんだ。ありきたりな言葉だが、人は見た目ではない」

「わかりました。そうですね・・・・・・・」

 考えたことのないことなので、少し時間がかかるな。

「うーん・・・・・・・そうですね。きっと好きになった人が僕の好みなんだと思います」

 あんまり意味のない答えしか出なかった。

「それでは、よくわからないな・・・・・・・」

「すみません。でも、そう言うことはあまり考えたことがないんで」

「そうか・・・・・・。ありがとう(リアスには女を磨くように言うしかないな)」

「いえ、ちゃんと受け答えられなくてすみません」

「ああ、気にしなくてもいいよ。何となく聞いてみたくなっただけだからね」

 サーゼクスさんがなんでそんなことを聞いてきたのか考えるが、理由がわかることはなかった。

「そうだ、一つ訊きたいんですけど・・・・・・」

「何かな?」

「この前、仮の駒(フェイク・ピース)が勝手に排出されたんですけど、原因ってわかりますか?」

 僕がそう言うと、サーゼクスさんはやれやれといった表情になる。

「おそらくそれは、アジュカが何か細工したんだろう。キミに害になることじゃないから気にしなくてもいいはずだ。まあ、念のため、彼に私の方から聞いてみよう」

「ありがとうございます」

「なに、気にすることはない。そろそろ、いい時間だね。おやすみ、ナギくん」

「あっ、はい。おやすみなさい」

 サーゼクスさんはもう寝るようだ。明日も学校があることだし、僕も寝ることにしよう。


Side out





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Side リアス


 グレイフィアに手を引かれて、自分の部屋に連れて行かれる。お兄様に言ったことを思い返して、自分がナギにとても依存していることを自覚した。少し前の自分では考えられないだろう。

「あ、あの・・・・・・部長さん・・・・・・」

私の部屋の前にアーシアが立っていた。

「どうかしたの?」

「その相談したいことが・・・・・・・」

 私はグレイフィアをチラッと見る。グレイフィアは「構いません」という顔でうなずいた。

「わかったわ。入りなさい」

「はい」

 アーシアが私に相談事ね・・・・・・・。十中八九、イッセーのことね。そんなことを考えながら、自分の部屋に入る。

 私はベッドに腰を掛け、アーシアはソファーに座る。グレイフィアは立ったままだ。

「それで、私に相談したいことってなにかしら?」

「は、はい。あのグレイフィアさんにもお聞きしたいんですが、その・・・・・・」

「私にもですか? 私に答えられることならお答えしますが」

 グレイフィアがアーシアに言う。

「ありがとうございます」

 ぺこりとアーシアが頭を下げた。

「それでですね、相談したいことというのは・・・・・・・え、えっと・・・ど、どうやったら胸が大きくなりますか?」

 私はグレイフィアと顔を合わせる。私の胸は特に大きくしようとなにかしたわけではないので答えられないわね。どうやら、グレイフィアもそうみたいだし・・・・・・。

「うーん・・・・・・そうね・・・・・・・」

 すごい期待した目でアーシアが見てくる。

「胸を大きくする体操があると聞いたことがあります。それを試してみたらいかかでしょうか?」

「そ、そんな体操が! ぜひ教えてくださいっ!!」

 キラキラした目で声を上げ、グレイフィアに詰め寄る。

「アーシア、声を抑えなさい。それと、少し落ち着いて」

「あぅ、すみません」

 アーシアをたしなめる。素直に聞いてくれたのでよかった。

「それで、その体操はどういうふうにやるのでしょうか?」

「申し訳ございません。私も詳しく知らないのです」

「あぅぅぅ、そうなんですか・・・・・・」

 目に見えて落ち込んでいくアーシア。

「パソコンで調べたらどうかしら?」

 私は立ち上がってパソコンに向かう。すぐに起動してインターネットに繋ぎ検索する。

「ど、どうですか?」

 表示された検索結果を見る。かなりの数が表示された。

「かなり数があって、どれがいいのかわからないわね」

 とりあえず、目ぼしいものをクリックしてサイトを見る。

「そうですか・・・・・・ありがとうございます。いろいろ試してみることにしますね」

 アーシアはそれを横から覗き込み、そう言った。

 この時、アーシアの胸を大きくするための挑戦が始まることになった。

(こんなに思われているなんて、男冥利に尽きるわね。イッセー)

 そんなことを思いながら、たどたどしい手つきでパソコンを使っているアーシアを見守った。そしてふと思う。

(もしアーシアとイッセーが結婚して、私がナギと結婚したらアーシアはお義姉さんになるのよね? なんか変な感じだわ)

 不確かな未来のことを思い受けべながら、夜は更けていった。


Side out


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