小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第5話 Side 渚〜




Side渚


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 依頼があった次に日の放課後。リアス先輩はどうやら怒っているようだ。無言で黙り込んでいる。

 結局、兄さんは依頼人の森沢さんと一晩おっぱいと男の娘について語り合っていただけだった。僕は、臨時収入を得ることができてうれしかった。僕の懐は温かい。しかし、もう二度と森沢さんの家には行きたくない。

 そして、兄さんと僕はリアス先輩の前に立っている。

「前代未聞だよ」

 と祐斗が言っていたからな・・・・・・。

「イッセー、ナギ」

「はい!」

「はい」

 低い声音のリアス先輩。

「依頼人と胸のことと男の娘について語り合って、それからどうしたのかしら? 契約は?」

 兄さんの方を見ると、汗をダラダラ出ていた。

「け、契約は破談です・・・・・。あ、朝まで依頼人の森沢さんとおっぱいと男の娘について語り合い、写真撮影をしていました!」

「写真撮影?」

「それは、僕が」

 リアス先輩と兄さんの話に割って入る。

「じゃあ、ナギ・・・・。説明してちょうだい」

「わかりました・・・・・・。まず、依頼人の森沢さんは小猫ちゃんにとあるアニメの制服を着てもらいたかったらしいのですが、行ったのは兄さんでした。もちろん着れるわけありません。そこで、代わりに森沢さんが僕に着てくれと、土下座して頼み込んだのでお金を払うならという契約で着たんです。そして、兄さんが「おっぱいが大きかったら!」と言って、それに反応した依頼主が契約そっちのけでおっぱいと男の娘について話し合い、写真撮影が始まった・・・・・・というわけです」

「ようするにコスプレ撮影会をしていたの?」

 リアス先輩の顔が引きつってるように見える。仕方ないだろう、契約を取りに行った悪魔が契約もせずについて行った人間とコスプレ撮影会を繰り広げていたのだから・・・・。

「は、はい! 渚は短門キユのコスプレをしました! 個人的に胸が大きかったらもっと良かったです!」

 兄さん・・・・・それは言わなくてもいいんじゃない? 小猫ちゃんの目が生ごみを見るような目だよ?

「申し訳ありませんでした! 自分でも恥ずかしいと思います! 反省しています!」

 まったくだ。弟に女装させて、目的を忘れるなんて。しかも兄さんも写真を撮っていた。

「・・・・・契約後、あのチラシにアンケートを書いてもらっているんだけど、依頼人は「楽しかったです。こんなに楽しかったのは初めてです。主義が違ってもわかり合えるんですね。イッセーくんとはまた会いたいです。次はいい契約をしたいと思います。・・・・・・最後に聞きたいんですが、イッセー君を呼ぶと渚ちゃんも来てくれるんでしょうか?」ですって。これが依頼人からのアンケートの答えよ」

 兄さんはおっぱいについて話しただけなのに、えらい高評価だな・・・・・・・・。まあ、身の危険を感じるから森沢さんの家にはもう行かないけど。

「こんなアンケートは初めてだわ。ちょっと、私もどうしたらいいのかわからなかったの。だから、少し反応に困ってしかめっ面になっていたのでしょうね」

 おっぱいと男の娘について話しただけなのに、この評価だからな。わかります。

「悪魔にとって大切なことは召喚してくれた人間との確実な契約よ。そして代価をもらう。そうやって悪魔は長い間存在してきたの。・・・・・・・今回のことは、私も初めてでどうしたらいいかわからないわ。悪魔としては失格なんでしょけど、依頼人は喜んでくれた・・・・・・」

 困惑顔のリアス先輩だったが、ふと笑みを漏らした。

「でも面白いわ。それだけは確実ね。イッセー、あなたは前代未聞尽くめだけれど、とても面白いわ。意外性ナンバー1の悪魔かもしれないわね。けれど、基本のことは守ってね。依頼人と契約を結び、願いを叶え、代価をもらう。いいわね?」

「はい! がんばります!」

「あと、ナギの女装写真を見せてくれないかしら?」

「はい!」

 兄さんが携帯で撮った僕の女装写真を見せる。

「「「「こ・・・・・これは・・・・・」」」」

 ついでと言わんばかりに、部員の全員が僕の女装写真を見る。全員の顔が赤かった。

「な、ナギ? 私もお金払うから女装してもらえないかしら?」

 いい雰囲気で終わりそうだったのに、リアス先輩の一言により最後の最後で台無しになった・・・・・・・・・。

 結局、僕のコスプレ撮影は実施された。かなり際どい衣装(どこにあったのだ?)などもあり、終始涙目の僕だった。しかも、涙目になったことによって、さらに顔が赤くなっていた。なんだか穢された気がするが、懐がとてもとても温かくなったので、我慢することにした。





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 次の日。

「兄さん、昨日の依頼人はすごかったね」

「あれはすごいで、すませられるか!」

 兄さんの次の依頼人は、ゴスロリ衣装を着た筋骨隆々な男、ミルたんだった。ゴスロリ衣装も衝撃的だったが、ネコミミに語尾の「にょ」。あれは、すさまじい存在感と威圧感だった。

 そんなミルたんの依頼内容は「魔法少女にしてください」だったので、朱乃先輩に教えてもらった、初心者用の魔力の操作方法を教えてあげた。それにミルたんは感激して、コスプレ衣装を僕にくれた。その後、衣装に着替えてくると兄さんはミルたんと一緒にアニメを見ていた。まあ、結局契約は破談だった。評価はまた高かったが・・・・・・。ちなみにだが、ミルたんは一般人より少し多めの魔力量だった。言わずもがな、兄さんよりも多い。

 それにしても、兄さんには一風変わった依頼人が来るようだ。木場は美人のお姉さんに呼ばれる確率が高いらしい。

「それじゃあ、兄さん」

「おう、また後でな」

 表向きの部活を終えて、僕は兄さんと別れた。本屋に寄りたいからである。





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「二度と教会に近づいちゃだめよ」

 その日の夜。兄さんに向かってリアス先輩が言った。

 詳しく話を聞いてみると、僕と別れた後にシスターさんあったらしく、教会に案内したらしい。かなり危ない状況だったとか。

「ごめんなさい。少し熱くなりすぎたわ。とにかく、今後は気をつけてちょうだい」

「はい」

「あらあら。お説教は終わりましたか?」

「おわっ」

 音もなく兄さんの後ろに忍び寄っていた朱乃先輩に驚く兄さん。朱乃先輩はいつも通りのニコニコ顔。驚いた兄さんを見て思わず笑ってしまう。

「朱乃、どうかしたの?」

「大公から討伐の依頼が届きましたわ」





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「町はずれにやってきました」

「? 渚?」

「なんでもない」

 ここに、はぐれ悪魔とかいう存在がいて、人間を食らっているそうだ。はぐれ悪魔というのは、ようは野良犬らしい。主人を裏切ったり、または主人を殺した悪魔のことだそうだ。

「・・・・・・・・血の匂い」

 小猫ちゃんが袖で鼻を覆う。戦うのは祐斗、小猫ちゃん、朱乃先輩、リアス先輩で、僕と兄さんは見学だ。しかし、敵意と殺意があちらこちらに満ちていて、居心地が悪い。兄さんは足がガクガクと震えている。

「イッセー、ナギ。戦闘をよく見ていなさい。ついでに下僕の特性も教えてあげるわ」

「下僕の特性?」

 兄さんがリアス先輩に聞く。リアス先輩は悪魔の歴史を含めて説明をしている。

 話をまとめると、悪魔は大戦で数が減ったので、人間を悪魔と転生させる。それは少数精鋭の制度を取っていて、それが「|悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」と言われるもので、チェスの駒と同じだそうだ。そして、優秀な下僕は主人のステータスとなるらしい。

「私はまだ、成熟した悪魔ではないから、公式な大会などには出場できないの。ゲームをするとしてもいろいろな条件をクリアしないとプレイできないわ。つまり、当分はイッセーやここにいる私の下僕がゲームをすることはないってことね」

「部長、俺の駒の役割はなんですか?」

「そうね―――イッセーは」

 兄さんの質問に、リアス先輩が答えようとしたがやめた。何かが近づいてきている。

「不味そうな匂いがするぞ? でもうまそうな匂いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅させにきたわ」

 出てきたのは、上半身裸の女性に獣の下半身をした悪魔だった。これは視覚的にきつい。

「主のもとを逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

「こざかしいぃぃぃぃぃ! 小娘ごときがぁぁぁ! その紅の髪のように、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁ!」

 吠える悪魔相手にリアス先輩は、鼻で笑うだけだった。

「祐斗!」

「はい!」

 祐斗が駆けだす。僕との試合の時なんかより断然速い。

「祐斗の役割は「|騎士(ナイト)」、特性はスピードよ」

 祐斗は徐々に攻撃の速度を上げていく。兄さんは目で追えないだろうが、僕はまだ目で追えた。はぐれ悪魔も持っている槍で攻撃するが、全く当たる気配がない。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 接近して、はぐれ悪魔の両腕を切り飛ばす。血が噴き出していた。

「次は小猫。あの子の駒は『|戦車(ルーク)』。戦車の特性は怪力を屈強な防御力」

 いつの間にか、はぐれ悪魔の足元に移動していた小猫ちゃん。

「小虫めぇぇぇぇぇぇぇ!」

 はぐれ悪魔は足で踏みつぶそうとするが、足は受け止められ、徐々に持ち上げられていく。足をどかした小猫ちゃんは、ジャンプして、はぐれ悪魔の腹を殴った。

「・・・・・・・ふっ飛べ」

 かなりの大きさを持ったはぐれ悪魔が、後方へ大きく吹き飛ぶ。

「最後に朱乃ね」

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 ゆっくりと倒れているはぐれ悪魔のもとへ歩く朱乃先輩。

「朱乃は『|女王(クイーン)』。『|兵士(ポーン)』、『|騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』、『戦車(ルーク)』、すべての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

「ぐぅぅぅぅぅ・・・・・」

 朱乃先輩を睨みつけるはぐれ悪魔。

「あらあら、まだ元気みたいですわね?」

 そう言って、雷がはぐれ悪魔に落ちる。悲鳴を上げるはぐれ悪魔。

「あらあら、まだ元気そうですね?」

 再び、雷を落とす。感電するはぐれ悪魔。それにもかかわらず、朱乃先輩はまた雷を落とした。

「グァァァァァァァァァ!!」

 よく見ると、朱乃先輩は笑っているようだ。楽しんでいるのだろう。

「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。そして彼女は究極のSよ」

 兄さんは怯えているようだ。確かにあれは怖い。

「オホホホホホホホホホ!」

 ・・・・・高笑いしている朱乃先輩。数分間朱乃先輩の攻撃は続いた。少しはぐれ悪魔。に同情する。

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 リアス先輩が、近づいてはぐれ悪魔に聞いた。

「殺せ」

「そう、なら消し飛びなさい」

 冷徹な声でそう言って、リアス先輩は魔力の塊を打ち出す。魔力ははぐれ悪魔を包み込んだ。そして完全に魔力が消えると、はぐれ悪魔の姿もそこにはなかった。

「終わりね。みんな、ご苦労様」

 いつもの雰囲気に戻る部員たち。

「そう言えば、部長・・・・」

 解散する前に兄さんが、リアス先輩に声をかける。

「なにかしら?」

「俺の駒ってなんですか?」

 そう言えば、聞いたことがなかったな。僕を悪魔にしようとしたときは『|騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』、『戦車(ルーク)』の駒しかなかったし。おそらく原作通り『|兵士(ポーン)』だろう。

「『|兵士(ポーン)』よ。イッセーは『|兵士(ポーン)』なの」

「い、一番下っ端・・・・・・」

 兄さんはorzとなった。


Side out

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