萌将伝編第7話〜覇王の覇道、その道も終われば1人の女〜
冥琳の要請で建業にやってきた俺だが、それも2ヶ月程で終了し、成都へ帰還した。成都へ帰還し、数日休んでから今度は曹魏の許昌へと向かった。別段要請があった訳ではないのだが、俺は華琳達の国をこの目で見たくなったので許昌へと向かう事にした。愛紗達は『もう少し休まれてからでも良いのでは?』と言ってくれたが、思い立ったら吉日という言葉に従い、俺はたんぽぽと焔耶と少数の護衛兵を従えて許昌へ出発した。出発して数日して俺達は許昌に到着した。あらかじめ早馬を飛ばして来訪する事を伝えていたので、許昌手前で出迎えが来た。俺達を出迎えてくれたのは・・。
「お久しぶりです、師匠!」
「隊長! 酒宴の時以来やな!」
凪と真桜が出迎えてくれた。
「2人供元気そうで何よりだよ。凪、真桜」
「沙和は今日忙しいらしくて来れへんかったんや」
「何、しばらくここ(許昌)に滞在する予定だからいつでも会えるさ」
「そうですね、それでは華琳様がお待ちです」
「分かった」
俺達は凪と真桜の先導で城へと向かった。
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※※※※
玉座の間にて・・。
「久しぶりね、昴」
「ああ、以前の酒宴以来だな」
「昴ー! 久しぶりだな!」
春蘭が豪快に話しかけてきた。
「おう、久しぶりだな、春蘭」
「まったく、急に来訪するなど、こちらも暇ではないのだぞ?」
「わるいわるい」
そこに秋蘭がやってきて・・。
「おやおや? 姉者は昴の来訪を知っていつでも勝負出来ると喜んでいたではないか」
「こ、こら、言うな//」
「ふん! 四国同盟の盟主だろうとなんだろうと、働かざる者食うべからずよ。たっぷりコキ使ってやるんだからね!」
桂花が胸の前で腕を組みながら俺に告げる。
「お手柔らかに頼むよ」
桂花は相変わらずだな。
そこに風がやってきて、頭の宝慧が・・。
「おいおい、来訪知って跳び跳ねるように喜んでたのは何処のどいつだよ」
「風! 何て事言うのよ//」
「風ではないのです。これこれ宝慧、女心を分かってやるのですよ〜」
風は変わってないな。
「センセ、久しぶりです」
茉里が駆け寄って俺に抱きついた。
ポヨン・・。
急成長した胸が俺の胸に当たる。
・・これが朱里と雛里が羨む成長ぶりか・・。
「? ・・どうかしたセンセ?」
「(いろいろ)大きくなったな、茉里」
俺は茉里の頭を撫でた。
「うん。背も伸びたよ。えへへ」
茉里は気持ち良さそうに目を細めた。
「兄ちゃん、ゆっくりしていってね!」
季衣が俺の腕を抱いた。
「ああ、そうさせてもらうよ」
季衣も背が伸びて大きくなったけど・・。
ぺった〜ん・・。
こっちには反映されなかったんだな。
「にゃ? ・・どうかした、兄ちゃん?」
「いや、何でもないよ」
俺は空いている手で季衣の頭を撫でた。
「えへへ〜//」
季衣も気持ち良さそうに目を細めた。
「お久しぶりです、昴殿」
「久しぶり、稟」
「機会があれば是非昴殿の政策等について学ばせて下さい」
「ああ。俺で良ければ構わないぜ。・・そういや、霞と張三姉妹は居ないのか?」
「霞は近隣に現れた賊の討伐に向かったわ。張三姉妹はちょうどあなたと入れ違いで地方巡業に行ったわ」
「そうなのか」
残念だな。
「あなたの部屋を用意したから案内するわ」
「すまないな」
俺はこの後部屋へと案内された。俺の許昌での生活が始まった。
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※※※※
「・・・」
翌日、街の様子を見て回って部屋に戻ると、そこには大量の書簡が。桂花曰く・・。
『昨日言ったけど働かざる者食うべからず。せっかく来たなら仕事しなさい。・・ああもう! 私も後で手伝ってあげるからきっちりやりなさい! 別に一緒に居たいわけじゃないんだから勘違いしないでよね//』
とか何とか・・。
「ま、見たところ、俺の提案した政策の、俺じゃないと判断が付きづらいものばかりみたいだし、確かにブラブラするのもあれだから良いか」
さてと、さっさと終わらせるか。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
サラサラ・・。
1つ1つ書簡を整理していく。
サラサラ・・。
「・・ふう」
一息付くか。
俺は部屋に備え付けてある急須でお茶を淹れ、一息付く。
「こんなに書簡に追われるのも久しぶりだな」
3年前の乱世では常に仕事尽くしだったが、今ではすっかり暇を持て余す毎日だったからな。
「たまにはこういうのも良いか・・」
俺はお茶を飲み干すと、再び仕事へと取りかかった。
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※※※※
さらに翌日・・。
早朝に起きて書簡を片付ける。ちょうど正午に差し掛かった時・・。
「昴、今大丈夫かしら?」
「ん? どうぞー」
キィッ・・。
華琳が俺の部屋へやってきた。
「ずいぶん忙しそうね」
「ん、まあな。おかげで退屈しないな」
「ふふっ、そう」
「それで、何か用か?」
「買い物に付き合ってほしいのだけれど、付き合ってくれないかしら?」
「買い物?」
うーん、どうしようか・・、ま、仕事は夜に終わらせれば良いか。
「分かった、すぐに支度するから待っててくれ」
俺は華琳にそう告げると上着を羽織って外に出た。
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※※※※
支度が整うと、俺と華琳は街へと繰り出した。
「それで、何を買うつもりなんだ?」
「そうね・・」
華琳は少し考える素振りを見せ・・。
「とりあえず服が見たいわね」
「服か・・、何処か良い店は知ってるのか?」
「ええ。顔馴染みの良い店を知っているわ。あっちの大通りにあるから行きましょう」
ギュッ・・。
華琳が俺の腕を抱いた。
「あら、どうしたの?」
「・・いや、何でもない。行こうか」
俺達は腕を組んだまま華琳の言う店に向かった。
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※※※※
「ここよ」
着いたのは一軒の店。なかなか大きく、見たところ品揃えも豊富そうだ。店の前で立っていると、中から店員が出てきた。
「いらっしゃいませ〜、なの〜。あっ、華琳様! いらっしゃいなの〜!」
出てきたのは沙和だった。
「なるほど、ここが沙和の店だったのか」
「言ったでしょ、顔馴染みの店だと」
沙和は五胡との同盟締結後に将を辞めて店を開いたんだっけな。沙和の店はかなり評判が良いらしい。豪族のようなお金持ちにしか手を出せない服から庶人でも気軽に買える服まで各種取り揃えているらしい。安価の服と言ってもそのデザインはかなり凝った物も多く、今阿蘇阿蘇ではかなりの特集が組まれているらしい。
「よ、沙和。久しぶりだな」
「隊長〜! 久しぶりなの〜!」
沙和が俺に抱きついた。
「沙和の店の評判は成都にも轟いてるよ」
「ありがとうなの。近々成都や建業にもお店を開くつもりなの〜」
「そうなのか。出来たら是非寄らせてもらうよ」
「是非来てなの〜」
もう2号店、3号店の構想があるのか。沙和の商才も大したものだな。
「とりあえず、服を見に来たから案内してもらっても良いか?」
「もちろんなの〜! さ、隊長、華琳様、中に入ってなの〜」
俺と華琳は店の中に入った。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「華琳様、今日は何をお探しですか?」
「服を何点かと、下着を見せてもらおうかしら?」
「分かったなの〜!」
沙和が店内の服をいくつか取りに向かった。
さてと、俺はどうするか・・。
「昴。あなたも付いてくるのよ」
「・・俺も?」
「当然よ。あなたの意見も聞きたいわ」
「・・はいはい」
俺は頭を掻きながら華琳に付いていった。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「・・・」
「昴、こっちはどう?」
「まあその・・、良いんじゃないか?」
「そう、ではこっちはどうかしら?」
「うん、そっちも似合ってるぞ」
とりあえずそう答える。すると華琳はプゥッと頬を膨らませ・・。
「ちょっと、さっきから同じ事しか言ってないじゃない」
「とは言っても、俺に下着を選べと言われてもな・・」
「あら? その為にあなたを誘ったのよ?」
「沙和に聞けば良いだろう」
「沙和はこの店の店主で忙しい身よ。呼び止めるのは憚れるわ。だからあなたにお願いしているのよ」
「・・はぁ、でもな〜」
「あなたの選んだ下着を購入しようと思っているわ。早く選びなさい」
「・・はぁ」
選べと言われてもな。
ふと華琳の方を見ると、ニヤニヤと笑みを浮かべている。華琳の奴、完全に楽しんでやがるな。どうしようかな、センスと羞恥心の両方問われるな、これ。・・・・おっ、そうだ。クククッ、良いこと思い付いた! 俺は沙和を手招きをして呼び寄せた。
「なあ沙和、ゴニョゴニョ・・みたいな下着あるか?(ボソッ)」
「もちろんあるなの〜」
「ならそれを頼む」
「分かったなの〜!」
沙和は店の奥に向かった。
「ヒヒヒッ、俺をからかった罪は重いぞ〜」
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「良いものは見つかったのかしら?」
「ああ。見つかったよ。これなんかどうだ?」
俺は背中に隠していた物を華琳に差し出した。
「こ、これは//」
俺が沙和に頼んで持ってきてもらった下着。それは、限りなく体を覆う布地が少なく、かつ薄い。上は女性のさくらんぼが丸見えで、下は限りなく限界ギリギリまで布地を取り除いたTバック(何でこの時代にこれがあるのか不思議だが)。誰が見ても用途は元来の下着ではないと丸分かりだ。
「こ、こんなの・・//」
華琳は下着を手に取ると、顔がみるみる真っ赤になる。
「いや〜、華琳に似合うと思って選んで見たんだがなぁ」
「くっ//」
華琳は身体を震わせながら俺を睨み付ける。俺をからかうつもりだったみたいだが、そうはいかないぜ。
「こんな下着、着られるわけ・・」
「あれ〜? 俺の選んだ下着を購入するって言ったよな? 残念だな〜、せっかく華琳に似合うと思って選んだのに。まさか約束を破る訳じゃないよな?」
「くっ! あなた//」
華琳の顔はますます赤くなる。少しからかい過ぎたかな?後が怖いからこの辺にしとくか。
「とまあ、冗談は『あなたはこういうのが好きなの?』えっ?」
「あなたはこういう大胆な下着が好きなの?」
華琳がおずおずと聞いてくる。
「いや、それは・・」
そう聞かれると困る。好みじゃない、と言えば嘘になるし・・。
俺が返答に困っていると華琳が・・。
「そう・・。ならこれを買うわ」
「マジで!?」
「え、ええ。あなたがこういうのが好きなら・・、買うわ//」
「そ、そうか・・」
結局華琳はその下着と服を何点か購入した。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「またご来店してなの〜!」
俺達は店を後にした。
「この後はどうする?」
「そうね。次は本が見たいわ。確か水鏡の新刊出ていたはずだわ」
水鏡さんのか。
「分かった。それなら本屋に向かうか」
俺達は本屋に向かった。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「昴、次はあの店よ」
「次はあそこで買い物するわよ」
「昴ー、何をボヤボヤしているの、早く来なさい!」
華琳は次々と店を巡り、次々と買い物をしていく。俺の両腕は手荷物でいっぱいだ。
「おいおい、まだ回るのか?」
「当然よ。せっかく街に来たのだから。それに・・、頼りになる荷物持ちもいる事だしね」
「荷物持ちね」
「何か不満?」
「・・いや、華琳の気が済むまで付き合うよ」
「そうこなくてわね」
華琳がニヤリと笑う。
ったく、あんな楽しそうにしている華琳を見ていたら、嫌とは言えないよな。
「さっき沙和に評判の喫茶店を教わったから、そこで休憩しましょう」
「そうだな。そうしてくれ」
とりあえず俺達は喫茶店に向かった。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「「・・・」」
沙和が言うだけあってその喫茶店はかなり繁盛していた。繁盛しているのだが・・。客の大半がカップルだ。カップルと思われる者達が互いにお菓子を食べさせ合っている。
「ははっ、場違いだな」
「まったく! 沙和ったら//」
居心地が悪いな。
やがて注目したお菓子が卓に並べられた。一口口に入れる。
うん、美味いな。評判は伊達ではないな。もう一口口に入れようとすると、華琳が俺を見つめている。
「ん?、どうかしたか、華琳?」
「い、いえ、何でもないわ//」
華琳が顔を赤らめながら俺から目線を反らした。
何だ? いったい何が・・・ああ、なるほど。
「なあ、華琳、そっちのお菓子も美味しそうだな。1つ貰えないか?」
「えっ?」
「俺のと1つ交換しないか?」
俺は自身のお菓子を華琳に差し出した。
「// そ、そこまで言うなら仕方ないわね。行儀は悪いけど戴くわ」
華琳は俺に自分のお菓子を差し出した。
「あーん。んぐんぐ・・、はい、お返しだ」
俺は華琳の口元にお菓子を運ぶ。
「あーん// ・・んぐんぐ、な、なかなかね//」
華琳は満更でもなさそうだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※
その後、買い物は日が暮れるまで続けた(荷物は持ちきれなくなったので城に運んでもらった)。クタクタになったが、華琳が楽しそうだったので良しとするか。
そしてその夜、俺は後回しにした仕事を片付けていた。
「・・・・ふぅ、こんな所か・・」
とりあえず一区切り付いた。残りは明日の早朝にでも終わらせよう。
「う゛〜ん・・」
俺は椅子の背もたれに体重を掛け、大きく伸びをした。とりあえず寝仕度でもしようと考えていると・・。
「す、昴、起きているかしら?」
ん? この声・・。
「華琳か? 起きてるぞ」
俺がそう告げると、扉が開けられ、華琳が部屋に入ってきた。ふと見ると、華琳はガウンみたいなものを羽織っていた。
「あ、灯りが見えたから声を・・掛けさせてもらったわ」
「なるほど、それでいったいどうしたんだ? こんな夜更けに・・」
「っ// ・・、あなたに、見てもらいたいものが・・あ、あるのよ・・」
「?」
華琳は顔を真っ赤にしながら説明する。
見てもらいたいもの?
「っ////」
華琳は林檎のように顔を赤くしながら自身の纏っているガウンに手を掛け・・。
スッ・・。
ガウンを脱ぎ捨てた。
「なっ//」
そこには今日俺がからかい半分に選んだ下着を身に付けた華琳の姿があった。
「っ//」
華琳は恥ずかしそうに目線を俺から反らした。
「ど、どう? あなたが選んでくれた下着を付けてみたのだけど、似合っているかしら//」
「あ、ああ、似合って、いるぞ//」
ヤバい。今の華琳、めちゃくちゃエロい。というかこの姿、裸よりヤバいんじゃないか?
「そ、そう・・//」
華琳は僅かに嬉しそうな顔をした。
「「・・//」」
部屋は沈黙に支配される。俺も華琳も、顔を赤らめながら押し黙っている。先にこの静寂を破ったのは・・。
ギュッ・・。
「!?」
華琳だった。華琳は俺の胸に飛び込み・・。
「用はそれだけではないわ」
「えっ?」
「・・わ、分かっているでしょう! 私がただこんな淫らな下着を見せる為だけに夜更けにあなたの部屋を訪ねる訳ないでしょ!」
「華琳・・」
華琳が顔を上げ、俺の顔を見つめる。
「昴・・。私頑張ったのよ。恥ずかしいけど、あなたが好きだって言うから恥ずかしいけど頑張ってこの下着を付けて部屋に来たのよ。せ、責任取りなさいよ!」
「・・良いのか?」
「・・そんな野暮な事聞かないで」
華琳が俺の目を見つめながら呟く。俺はそんな華琳に顔を近付け・・。
「ん//」
そっと口付けをした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※
時刻は深夜。
「ん//」
俺の上に乗っている華琳が俺の胸に頬擦りをする。するとおもむろに華琳が・・。
「私は魏王曹操」
「どうした突然?」
「ねえ、昴。あなたにとって私は何?」
華琳が真剣な顔を浮かべて俺に尋ねる。
「・・そうだな。皆は華琳の事を誇り高く、偉大な王、と言うが、俺にとっては優しくて、気分屋で、そして寂しがり屋の可愛い女の子、かな?」
「// ・・馬鹿・・」
華琳は顔を隠すように俺の胸に顔を埋めた。華琳はそのままの体勢で・・。
「皆が私の事を王として接するわ。兵も民も、春蘭達も・・。でもあなたは違う。あなたは王としてではなく、時に私をただの女として扱う。そして私はあなたの前ではただの女になってしまう」
「嫌か?」
華琳は首を横に振り・・。
「ううん、不思議だけど、あなたがそう接してくれると、とても胸が暖かくなるの。あなたが何かする度に私の胸が跳ねるの。それがとても心地良いわ」
「なら良かった」
俺は華琳の頭を撫でた。
「ん// ・・昴、今宵はずっと私を抱きしめて・・。私を頭を撫でて・・」
俺は華琳を抱きしめ、華琳が眠り落ちるまで頭を撫で続けた・・。
続く