小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


萌将伝編第9話〜ツンツン桂花、デレデレ桂花〜















「お待たせしました! 棒々鶏です。兄様」

「おっ、ありがとう、流琉」

俺は運ばれてきた棒々鶏を一口食した。

「おぉ、美味い! さすが、評判は伊達じゃないな」

「ふふっ、ありがとうございます。兄様」

俺は仕事の休憩がてら、昼食を取るために流琉の経営する飲食店に来ていた。流琉は現在親衛隊を辞め、飲食店を開き、経営している。もともと流琉の腕は絶品なので、経営を始めるとすぐさま評判になり、今では大繁盛している。

「お疲れのようですね、兄様」

「ん〜、まぁな。桂花が次々仕事持ってくるからな」

桂花はホントに遠慮というものがなく。渡された仕事が片付く前に次の仕事を持ってくる。おかげでこちらはデスクワークばかりで肩が凝ってばかりだ。

「でも、あまり嫌そうではありませんね」

「・・そうだな」

蜀では周りが気を使って俺に頼りすぎない用にしていて暇を持て余していたから正直、久しぶりに対等に扱ってくれるのは悪い気はしない。

「でも、あまり無理はしないで下さいね」

「分かってるよ」

俺は注文した料理を全て平らげた。

「ごちそうさま。美味しかったよ」

「お粗末様です。また来てくださいね、兄様」

「ああ。また来るよ」

俺はお代を置いて流琉の店を後にした。





















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


城に戻り、部屋に戻ると、早速やり残していた仕事に取りかかった。

「・・(カキカキカキ・・)」

しばらく書簡と格闘していると・・。

キィ・・。

「ん?」

部屋の扉が開けられ、そこには桂花の姿があった。

「あんた、まだ終わってなかったの? ホント鈍くさいわね」

「無茶言うな」

どれだけ量があったと思ってるんだよ。

「はいこれ、追加の書簡よ」

ドン! と大量の書簡が俺の机に乗せられた。

「・・正気か?」

「あんたどうせ暇なんだからこれくらいやりなさいよ。私達も、タダで食事を与えるほど優しくはないわよ」

「・・・・はあ、分かったよ」

俺は渋々書簡を受け取った。

「さっさと終わらせなさいよ。やる事はまだまだあるんだから」

「酷すぎやしないか!?」

完全なるブラックじゃないですか!

「ふん。華琳様はともかく、私より先に脳筋なんかと関係をもった報いよ。(ボソッ)」

「ん? 何か言ったか?」

「な、何でもないわよ! 喋ってないで早く終わらせなさいよ//」

「あ〜ハイハイ、分かりましたよ・・」

俺は書簡に目を移した。

「また後で来るからその時までに終わらせなさいよ」

「りょ〜か〜い」

俺は手だけを振って答えた。

「ふん!」

桂花は鼻を鳴らすと、部屋から出ていった。

「・・・頑張ろ」

俺は徹夜覚悟で仕事に取りかかった。



















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


サラサラサラサラ・・・。

筆を進める音だけが部屋に響いている。時間を忘れ、一心不乱に筆を進め、やがて・・。

「ん゛〜、終わった〜・・」

俺は筆を置き、大きく伸びをした。

「人間、やれば出来るもんだな・・」

人1人が反対側からなら隠れてしまうほどの書簡が綺麗さっぱりだ。

俺は机に突っ伏した。

「・・・・ふぁ」

仕事が終えた途端気が抜けたせいか、猛烈に睡魔が襲った。

「寝るか・・」

そう思って体を起こそうとするが、体がまったく言うことを聞かない。俺は自分の腕を枕にそのまま眠りに落ちた。


















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・















チュッ・・。
















「ん・・」

「っ!?」

俺の唇に何かが触れ、俺は目を覚ました。

「・・・桂花?」

目を開けると、俺の眼前に桂花の顔があった。

「// ・・な、何よ!」

「いや別に・・・ふわぁぁぁぁ・・」

俺は欠伸をしながら伸びをした。

ストン・・。

「ん?」

伸びをすると、俺の背中から何かが落ちた。振り返って確認すると、そこには俺の外套があった。俺は外套を拾い上げると・・。

「これ、桂花がかけてくれたのか?」

「なっ! そんな訳ないでしょ//」

桂花が顔を赤くして否定する。

分かりやすい奴だな。

「そうか・・。ふわ・・、俺は改めて寝るな。これ、誰がかけてくれたのかは分からないけど、見かけたらありがとうって伝えといてくれ」

「わ、分かったわ」

「それじゃ、おやすみ」

「ふん//」

桂花は俺の部屋の書簡を抱えて部屋を出ていった。

「・・・寝よ」

俺は寝台の布団に潜り込んだ。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日・・。

俺はこの日は1日休みとなった。昨日はほぼ缶詰めで遅くまで仕事をしていた事もあり、華琳が休みとしてくれた。まぁ、戦時中と違い、そこまで慌てて仕事に勤しむ必要もないのだが、つい以前の癖でやれる分を一気に片付けてしまった。

「さてと、今日はどうしようかな・・」

とりあえず街にでも行くか。沙和の店にでも顔を出して、昼食は流琉の所で食べよう。そうと決まれば早速準備しよう。そう思ったその時・・。

ドドドドドド・・・ドン!!!

「御剣昴!」

突如、爆走音と同時に乱暴に部屋の扉が乱暴に開けられた。

「騒々しいな、お前は春蘭か」

「あんな脳筋と一緒にしないで!」

「分かった分かった。で、いったい何の用だ?」

「昴、私と勝負しなさい!」

と、桂花が何処から出したのか、象棋を俺の前に出した。

「あんたが如何に優秀とは言ってもあんたは武人。軍師が戦略で負けっぱなしでは軍師の沽券に関わるわ」

「・・・なるほど」

「華琳様から聞いたわ。あんた今日休みなんでしょ? 私と勝負しなさい!」

まるで春蘭だな・・。ま、良いか。

「良いよ。やろうか」

俺がそう言うと、桂花がニヤリと笑い。

「吠え面かかせてやるわ」

部屋の中央にある卓に持っていた象棋を置いた。俺は隅っこに置いてあった椅子を桂花に渡し、俺はそこにあった椅子に腰掛けた。

「あの時と同じ、負けたら勝った方の言うことを1つ聞く。良いわね?」

「構わないぜ」

俺は条件を呑み、頷いた。

「なら始めるわ。・・先手は譲るわ」

「どうも。それじゃ、始めるぜ」

パチッ・・。

俺は駒を摘まみ、前に進めた。


















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


パチッ・・。パチッ・・。

「・・・」

「・・・」

お互いが無言で駒を進める。

パチッ・・。

「ほう・・。良いのか? 左翼ががら空きだぞ? だが敢えて右翼からの進軍もありかもな」

「・・ふん」

パチッ・・。

桂花は構わず右翼から攻め立ててきた。

ちっ、挑発には乗らないか・・。

パチッ・・。

俺は右翼の守備を固めた。

パチッ・・。

「・・ふふっ」

パチッ・・。

桂花は一笑いし、駒を進めた。

・・嫌な所を攻めてくれるな。なら!

パチッ・・。

俺は守備を捨て、攻勢に転じた。

「・・・」

パチッ・・。パチッ・・。

ここからは互いに守備を捨てての謂わば殴り合いだ。

パチッ・・。パチッ・・。

「・・・」

「・・・・・・・ちっ」

やられた。一手遅かったな・・。おかげでこっちは後手後手だ。

パチッ・・。パチッ・・。

「・・・」

俺の手が止まる。

「・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・駄目か。

「・・俺の、負けだ」

もう手が無くなった。どう進めても俺の詰みだ。

「・・・・勝った?」

桂花が信じられないと言った感じに呟く。

「あんたまさか手加減したんじゃないでしょうね?」

「しないよ」

「だって前はあんなに一方的に・・」

「あのなぁ、俺がいくら知に長けてるとは言っても所詮は武人だ。桂花は黄巾の乱から今日まで軍師として生き抜いたんだ。戦略、戦術に関して言うなら、いつまでも俺より下な訳ないだろ」

「そう・・」

桂花は下を向き、体をワナワナ震わせ始めた。

「勝った・・、勝ったわ! 遂に昴に勝ったわ!」

桂花が突如飛び上がるように喜びを顕にした。

「はぁ・・」

あ〜あ、負けちまった。

「フフフフッ! じゃあ早速言うことを聞いてもらおうかしら」

「・・分かったよ」

まあ、あまり無茶は言わないだろ・・・・・・多分。

「・・・・・何をしてもらうかは今日の夜に伝えるわ。絶対に部屋に居なさいよ!」

「分かったよ」

それだけ言うと桂花は俺の部屋から駆けて出ていった。

「・・・どうなる事やら」

俺は一抹の不安を抱えながら象棋を片付け、街へと繰り出した。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


適当に街をひやかし、買い物をしているといつの間にか日が暮れており、俺は城へと戻った。その後は書庫から持ってきた本を読みながら1日を過ごしていた。

「・・・」

時刻は日付が変わる時分。俺は読んでいた本をそっと閉じた。

「・・・そんな所に突っ立ってないで入ってきたらどうだ?」

俺は扉に向かって問い掛けた。

キィ・・。

そっと扉が開いた。そこには桂花の姿があった。

「・・・//」

桂花は心なしか、顔が赤い。

どうしたんだ?

「良く逃げずに待っていたわね」

「待ってるように言われたからな。・・で?俺は何をしたら良いんだ?」

「・・い、今から言うわ」

桂花が大きく深呼吸を始めた。

「スー・・、ハー・・、良し! 今から命令するわよ!」

「どんと来い!」

覚悟を決めよう。

「御剣昴! 私をあなたの―――」


















「―――あなたの女にして」

















「・・・・はぁっ?」

おかしいな、ひょっとして耳がイカれたのかな、幻聴が・・。

「〜〜// ・・ああもう! 私を抱きなさいって言ってるのよ!」

桂花が叫ぶように言った。

幻聴ではなかった・・。

「しょ、勝負に負けたんだから、拒否は許さないわよ」

「いや、けどお前は大の男嫌いじゃなかったのか?」

「男なんて嫌いよ。馬鹿で、不潔で、触れるのもおぞましいわ・・・けど」

ポスッ・・。

桂花が俺の胸に飛び込んだ。

「あんただけは別なの。他の男は触れるだけで鳥肌が立つし吐き気もする。でもあんただととても胸が暖かくなって、心臓が跳ねて、とても心地良いの」

桂花が俺の胸に抱きついたまま顔だけを上げ、俺を見上げる。

「この想いは華琳様へのものとも違う。昴・・、私はあなたが好き。あなたの事が大好き。お願い、私の想いを受け取って・・」

桂花が瞳を潤わせ、不安そうに俺を見上げる。

「桂花・・」

俺はそんな肩をそっと掴み、そして・・。

「ん・・」

その透き通るように輝いた唇にそっと唇を重ねた・・。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


「ん//」

深夜・・。月明かりが肌を重ね合う俺と桂花を照らす。

「ふふっ、昴♪」

桂花が俺の胸に顔をスリスリさせる。俺はそんな桂花が愛しくなり、思わず桂花の頭を撫でた。

「あっ・・」

「悪い、嫌だったか?」

桂花は首を横に振り・・。

「ううん、すごく気持ち良い。もっとナデナデして?」

「はいはい」

俺は桂花の頭を撫で続けた。

「・・ふふっ、前にもこうやってナデナデしてくれたわよね」

「そうだっけか?」

「そうよ。あなたが客将していた時と、後反董卓連合の時に・・」

「・・あ〜、そういえば・・」

朧気にした記憶があるな。

「あなたにナデナデされるととても気持ち良い。・・ねぇ、これからも良い事をしたらナデナデしてくれる?」

「ああ、何度でもしてあげるよ」

俺は再度桂花の頭を撫でた。

「えへへ、やった〜♪」

桂花は目を細めながら喜んだ・・。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日・・。

「昴! 仕事貯まってるわよ! ホント愚図ね! さっさと終わらせなさいよ!」

とまあ、昨夜とはうってかわってこんな感じだ。基本的に日常では以前までの桂花と同じだ。しかし、深夜、2人っきりになると・・。

「すーばる、今日も私頑張ったよ。ナデナデして♪」

と、甘えながら俺の胸に飛び込む。

何とも見事なツンデレ具合だ。ツンとデレ。2種類の桂花を楽しみながらの魏の日常も、俺の楽しみの1つになった・・。











続く

-107-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




真・恋姫†無双~萌将伝~ サウンドトラックCD 「天命祭歌」
新品 \2578
中古 \2356
(参考価格:\3150)