第10話〜新しき衣装、新たな武器〜
昴side
昴「よし、お前達はそっちの通りの警羅に行ってくれ」
「「「はっ!」」」
兵士達が俺の指示を受けて見回りに向かった。
今日も俺は街の警邏の為、街中の警羅をしている。
昴「だいぶこの街の犯罪件数も減ってきたな」
もともと治安が悪かった訳ではないが、それでも目の届かない所で犯罪等は起こっていた。警備隊が発足されてからはその犯罪件数も大幅に減少した。日によっては事件が起こらずに終わる日もあるくらいだ。最近ではほとんどが喧嘩の仲裁が主となってきた。
昴「それもこれも、警備隊の皆が頑張ってくれたおかげだな」
警備隊の、特に凪、沙和、真桜が俺の副官としてよく勤めてくれているのが大きい。
昴「これなら安心して後を任せられるな」
俺はあくまでも期間限定の客将。いずれはここを離れる事になる。いい後任が出来て良かった。
大通りを見回りながら歩いていると・・。
昴「ん?」
なにやら見知った顔を発見した。あれは・・、沙和だな。
沙「ふわ〜、この服すごく可愛いの〜♪」
沙和が一軒の店の前でなにやらはしゃいでいる。
沙「この髪留め、前に買った服ときっと合うの〜♪」
沙和は服や装飾品を次々と体に合わせていく。
昴「そういや、沙和って、流行り物のファッションの話とかよくしてたな」
女の子っぽくてああいうところは可愛いな・・・・・だが。
俺は沙和の元に歩み寄り・・。
昴「な〜にサボってんだ沙和?」
沙「? ・・ふぇ!? た、隊長!?」
沙和が俺の声に振り向くと、慌てはじめた。
昴「今日は西地区の警邏を命じたはずだが?」
沙「え〜と、見回りしてたら急に阿蘇阿蘇に載ってた新しいお店の事を思い出して・・」
昴「それで警邏をほったらかしにして買い物してたと?」
沙「ちゃ、ちゃんと兵士の人達に言い聞かせてきたの〜」
昴「はぁ・・」
そういう問題じゃないだろ・・。まったく、副官は頼りになるが、沙和や真桜に関してはたまにこういう所があるから困るな。凪は逆にまじめすぎるくらいなんだが・・。ま、とにかく・・。
昴「連行」
俺は沙和の首根っこを掴んで引きずるように引っ張った。
沙「あ〜! 待って! あとちょっとだけでいいから待ってほしいの〜!」
昴「駄目だ」
沙「あ〜ん! 隊長〜!」
沙和は涙目でジタバタしながら抵抗する。周囲に注目が俺たちに集まる。・・・はぁ、仕方ないな。
昴「あ〜分かった分かった! 後少しだけな。そしたら警邏に戻るんだぞ?」
そう言うと沙和の瞳がパァッと輝きだし・・。
沙「やった〜! 隊長〜、ありがとうなの〜!」
沙和は店に戻っていった。
昴「やれやれ・・」
俺は店の前に置いてあった椅子に腰掛けて沙和を待った。
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
30分後・・。
沙「う〜・・」
沙和がどんよりした表情で店から出てきた。
昴「? どうした?」
沙「沙和のお給料じゃ、手が出なかったの・・」
昴「・・・あぁ」
そういう事か。いつの時代も、服は高い物は高いからな。
沙「た〜いちょ〜、・・・買って〜なの〜♪」
昴「俺の給料どれだけ安いと思ってんだよ・・」
俺は一応警備隊隊長という身分だが、あくまでも客将、賃金は安い。
昴「ま、金が貯まるまで我慢するんだな」
沙「む〜、それじゃあ流行りが終わっちゃうの〜」
昴「仕方ないだろ・・」
可哀想だがこれも現実だ。
昴「とにかく、早く警邏に戻るんだ」
沙「はぁ・・、やる気出ないの・・」
沙和がトボトボしながら歩きだした。俺は沙和の横を歩く。
沙「隊長、天の国にも可愛い服はあるの?」
昴「ん? そうだな、いろんな種類の衣装はいっぱいあるぞ」
俺は今まで巡ってきた外史で見てきた衣装を沙和に話した。ドレス、ワンピース、ナース服、民族衣装など・・。
沙「へぇ〜、一度着てみたいの〜!」
沙和は興味津々で俺の話を聞いている。
昴「沙和に似合う服もたくさんあるぞ。浴衣とかきっと沙和に似合うと思うぞ」
沙「いいな〜、沙和、ゆかた欲しいの〜」
この外史にはこの時代に合わない衣装もあるが、浴衣みたいな物はなかったな。・・・そうだ!
昴「なんなら、浴衣を作ろうか?」
沙「え? 隊長縫い物出来るの?」
昴「俺は出来ないが、外装や仕組みは分かるから服屋に発注すれば再現できると思うぞ」
沙「ホント!? ありがとうなの〜!」
昴「た・だ・し!」
沙「?」
昴「真面目に仕事をすることが条件だ。今日みたいなことをしたらこの話はなしだからな」
沙「分かったなの! 沙和、ちゃんとお仕事するの!」
沙和は担当の西地区に走っていった。
昴「やれやれ・・」
現金な奴だな。とりあえず、警邏が終わったら顔見知りの店主の服屋に行くかな。
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※※※※
その後、知り合いの服屋に注文しにいくと、店主は二つ返事で了承してくれた。その奇抜な衣装の構想に職人魂に火が付いたらしい。あげくにタダでいいらしい。発注から3日後には完成した。その間沙和は凪や真桜も驚くくらいに真面目に仕事を務めた。
昴「うん、約束通り、真面目に仕事をしたみたいだな。という訳でほれ」
沙和に包みを渡した。
沙「さっそく着てみるの〜♪」
沙和は部屋に着替えに向かった。
10分後・・。
沙「じゃーん! どう!? 似合う!?」
昴「・・おお」
浴衣はとても沙和に似合っていた。俺は発注の際に一般的な浴衣ではなく、少々アレンジを加えて発注をした。通常裾は足首くらいまであるが、この浴衣の裾は膝上とかなり短い。腰の帯もリボンのようにあしらった物にした。昔、平成のアイドルがこんな感じに浴衣を着ていた(ような気がする)。話を聞く限り、その方が似合いそうだし、沙和も好みだろう。
昴「よく似合ってるよ」
沙「この浴衣とても可愛いの! この帯とか沙和とても気に入ったの!」
昴「気に入ってくれたなら何よりだ」
ここまで喜んでくれたなら発注した甲斐があったな。
沙「た〜いちょ♪」
昴「ん?」
ギュッ!
沙和が俺に抱きついた。
沙「沙和、この服一生大事にするの! ありがとうなの〜!」
昴「・・どういたしまして」
沙和その日1日をその浴衣で過ごした。
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※※※※
それから2日後、とある城の一角・・。
昴「ここが真桜の工房か」
真桜の工房が完成したらしいのでやってきた。なんでも真桜が工房の設置を頼んだ所、華琳が了承したらしい。それが今日完成したとのこと。中に入ってみると・・。
カン!!! カン!!! ・・・!
何やら叩く音が工房内に響く。
昴「なかなか立派じゃないか」
真「お〜隊長か! 華琳様に頼んだ工房がようやく完成や。これで今まで出来ひんかった発明ができるで!」
真桜が作業の手を止め、嬉しそうに工房を紹介する。
昴「ん、そのまま続けてていいよ」
真「ん、分かったで」
俺がそう言うと、真桜は作業を開始した。
カン!!! カン!!!
再び工房内に金属音が鳴り響いた。俺は工房内をキョロキョロ見渡す。
昴「ん?」
俺はふと立てかけられている物を見つけた。
昴「これは・・、真桜が戦で使っている槍だな」
確か螺旋槍だっけか。氣を原動力に槍の先端が回転する仕組みだっけか。よく出来てるな。
昴「どれ・・」
俺は螺旋槍を手に持ち、槍に氣を送り込んだ。
ギュィィィィィン!!!
槍が回転を始めた。
真「隊長! あかん!」
昴「え?」
真桜が慌てて振り返り、大声で叫んだ。その直後・・。
チュドォォォォォン!!!
昴「うおっ!」
突如螺旋槍が爆発した。
真「あ〜、やっぱりこないなったか・・」
昴「? 何が起こったんだ?」
真「隊長の氣の量が多すぎて槍が耐え切れなくなったんや」
昴「たいして氣を込めたつもりはないんだが・・」
真「ウチと隊長じゃ扱える氣の量がちゃうんや。隊長にとっては大したことなくても槍にとっては耐えられへん量なんや・・、これで凪に続いて2人目や、あ〜また修理せんと・・」
真桜は俺から槍を受け取ると、修理の準備を始めた。悪い事をしたな・・・・、そうだ!
昴「なあ、螺旋槍の設計図ってあるか?」
真「? そらあるけど・・」
昴「なら、俺に螺旋槍の修理をさせてくれないか?」
真「隊長修理なんて出来るん?」
昴「真桜程ではないがな。設計図とこの工房があれば出来る。詫びの意味も込めて任せてくれないか? 頼む!」
俺は真桜に頭を下げて頼んだ。
真「・・そこまで言うならほな頼むわ」
昴「恩に着る。とりあえずしばらく工房に籠るか・・、悪いんだが、凪にしばらく警備隊の指揮は任せると伝えといてくれないか?」
真「分かったで!」
これでよしと。さて始めるか・・。
俺は設計図を広げ、作業開始した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
昴「すごいな・・」
螺旋槍の設計図を見て思わず感想が漏れた。螺旋槍はかなり複雑かつ繊細にパーツが組み込まれていた。正直、よく開発出来たと思う。
昴「せっかく修理するんだ、前よりも強化しないとな」
俺は真桜の技術に俺が旅で学んだ技術を組み込みながら修理を開始した。
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※※※※
2日後・・。
昴「・・・よし、完成だ!」
完徹して2日、ついに完成した。
昴「さてと、真桜に持っていこう」
俺は新しい槍を持って工房を後にした。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
城の庭に行くと、そこに真桜と、凪と沙和もいた。
真「お〜、ついに完成・・・って、隊長すごい隈やな!?」
昴「ん〜、まああれから寝ないで修理してたからな。ほれ、新しい槍だ」
俺は真桜の槍を渡した。真桜がジィッと槍を観察すると・・。
真「・・・・これって、隊長もしかして何か手を加えたん?」
昴「気付いたか。真桜の設計図を見ながら俺の知る技術を加えた新しい螺旋槍だ。改良したから以前の倍の量の氣を込めても耐えられるはずだ」
真「・・・設計図をみせてもらってもええか?」
昴「構わないぜ」
真桜に設計図を渡した。真桜は受け取ると、食い入るように設計図を見始めた。
真「・・・!? こないなやり方があったんか・・。1つ1つの部品が緻密に組合っとる。隊長めっちゃすごいやんこれ!」
昴「俺は別の国で学んだ技術を盛り込んだだけだ。あれを独学で作った真桜の方が断然すごいよ」
真「そないな・・、せや、隊長、他にもカラクリに詳しかったりするん?」
昴「ん〜・・、まあそれなりな」
真「ほな他に話聞かせてーな!」
昴「・・・とりあえずまた今度な。今は・・・ふわぁぁぁ・・」
俺は大きく欠伸をした。
真「ちょっとでええから頼むで!」
昴「いやまじで勘弁してくれ!」
その後、日が沈んでも真桜に質問攻めにされ、俺が眠れたのは日付が変わる時間だった・・。
続く