小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第11話〜覇道、その道程〜















昴side

昴「うーん、いないな」

今華琳を探しているんだが何処にも見当たらない。書庫や玉座にもいなかった。

昴「さて、どうしたものか・・・・ん?」

あれは・・桂花か? ちょうどいい。

昴「よう」

桂「誰かと思えば昴じゃない? 何よ?」

昴「華琳知らないか?」

桂「華琳様? ・・・知らないわ」

な〜んか妙な間があったな。

昴「本当に?」

桂「本当よ!」

昴「まいったな、華琳に今日中に見せなきゃならない報告書があるんだが・・」

桂「それなら後にしなさい、今華琳様は・・・」

昴「・・(じぃ〜)」

桂「ふん!」

桂花は踵をかえして去ろうとした。

昴「待った」

桂花の肩を掴む。

桂「知らないったら知らないわ! っていうか触らないでよ! 妊娠するでしょ!?」

昴「するか! っていうか報告書見せないと俺が怒られるんだって!」

桂「怒られなさい! ついでに死になさい! 私には関係ないわ!」

昴「ひでぇだろそれ!?」

桂「とにかく今は駄目よ! あんたでも駄目なの!」

こんな感じに桂花と問答を繰り返していると。

秋「どうした2人して、騒々しいな」

昴「秋蘭か。いやな、今華琳を探しているんだが知らないか?」

秋「華琳様なら今日は1日お休みだぞ?」

昴「そうだったのか?」

秋「聞いていなかったのか?」

昴「初耳だ。今日までに警備隊の発足からの事件件数と改善案の報告書を纏めて報告するように言われてたんだけどな」

桂「それなら昨日のうちに終わらせて報告すればよかったじゃない」

昴「昨日はいろんな部署の手伝いに行ってたから時間なかったんだよな。無理にやれないこともなかったけど今日まででいいって言われてたからさっき仕上げたんだ。つうかその手伝いの中には桂花も含まれてるんだけどな」

桂「うっ」

昴「まぁ何にせよ休みだってんなら日を改めるよ」

秋「すまないな。急ぎでないなら明日の朝にしてくれると助かる。華琳様に何か言われたら私の名を出して構わんぞ」

昴「しかし華琳にそういう気を使うと怒らないか?」

秋「うむ。理解はしてくださるだろうが、納得はされないだろうな」

やれやれ・・。

昴「まぁ、忘れてたことにするよ」

最悪土下座しよう。

秋「そうか、気を使わせて悪いな」

昴「休みの日ぐらいゆっくり休まないとな。それなら俺は警備に行くよ。それじゃ、またな」

秋「ああ。・・そうだ、城を出るならむこうの庭を通った方が近道だぞ」

桂「そういえばそうね」

昴「そうだったっけ?」

庭っていつも歩いてるけど遠回りじゃなかったっけ?

秋「うむ。なら詫びがてらに教えてやろう」





















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というわけで今秋蘭に教えてもらった道を歩いているんだが・・・・。

昴「やっぱり遠回り・・・だよな」

秋蘭に教わったとおりに歩いているがどうも近道してる気がしない。

昴「ま、別にいいか」

たまには違う道を歩くのも悪くない。

昴「ん?」

がさりと茂みを抜けるとそこには木陰に渡されたハンモックがあった。そしてそこにいたのは・・。

昴「華琳・・・」

ついさっきまで探していた華琳だった。

昴「・・まったく」

秋蘭や桂花も変なところで気を回すんだからな。

昴「起きてるか?」

華「・・・」

昴「華琳」

華「・・・ううん」

寝てる・・・みたいだな。それにしても・・。

昴「ふふっ、可愛い寝顔だな。ついずっと見つめたくなるな」

今目の前には歳相応の可愛い女の子にしか見えなかった。

昴「君はもう少しまわりに頼って肩の力を抜かないと。でないと疲れちまうぜ?」

華琳は何でもできる。だから何でもしてしまう。それが俺には心配だ。

華「・・・ううん、うるさいわね・・んん」

昴「!? ・・起きたのか?」

華「・・・」

そういうわけではないみたいだな。・・・・・それにしても・・。

昴「覇道か・・」

彼女の歩む道。彼女自身が定めた道。

昴「華琳・・、その道は冷たくて、孤独で誰も横に並び立てない寂しい道だぜ」

覇道とは選ばれた者にしか歩むことができない道だからな。

華「まるで自分が歩んできたような言い方ね?」

昴「!? ・・・起きていたのか・・」






















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華琳side

春蘭と秋蘭が珍しく休めというものだから庭先にきている。ふふっ、あの2人も心配性なのだから。読書もそこそこに眠っていると・・。

昴「起きてるか?」

この声、昴かしら?

昴「華琳」

やっぱり昴ね。

昴「ふふっ、可愛い寝顔だな。ついずっと見つめたくなるな」

なっ//、何てこと言うのよ! まったく。

昴「君はもう少しまわりに頼って肩の力を抜かないと。でないと疲れちまうぜ?」

春蘭達といい昴といい本当に心配性なのだから・・・。

華「ううん・・・うるさいわね・・んん」

昴「!? ・・起きたのか?」

華「・・・」

何で私、寝たふりなんかしたのかしら?

昴「覇道か・・」

・・昴?

昴「華琳・・、その道は冷たくて、孤独で誰も横に並び立てない寂しい道だぜ」

その言い方・・・まるで・・。

華「まるで自分が歩んできたような言い方ね」

昴「!? ・・・起きていたのか・・」

私ったら思わず・・・まぁいいわ。

華「あなたをずっと見ていたわ。あなたは私とよく似ている。考え方も思想も。そして今の言、おそらくだけど・・あなたは天の国では王だったのではなくて? それも覇道を歩んだ王」

昴「・・・」

何も言わない・・・やはりあなたは・・。

昴「・・・とある覇道を歩んだ王の話だ」

華「昴?」

昴が唐突に話はじめた。
















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1人の英傑がいた。

その者は武も知も優れていた。

その国は荒れていた。

その英傑は荒れた国を救いたいと考えていた。

英傑は自分の力と知を正しく使い、そして自分を受け入れられる器を持つ王を探した。

旅を続け、遂にその王を見つけた。その王は強く、気高く、そして慈愛に溢れていた。

その王と共に乱世を歩んだ。その王とその国はどんどん大きくなっていった。

この王となら乱世を治められる。そう確信した。しかし・・。

その王は志半ばで倒れた。王が倒れたその国を率いられるのはその英傑だけだった。

王の意志を継ぎ国を率い、戦った。しかし王としての器を持たない英傑が戦っていくには覇道を歩むしかなかった。

自分が見初めた王とは真逆の道である。

国も領土もどんどん大きくなるが、それと同時に皆その英傑を恐れていく。

そして戦い続けその大陸から戦争がなくなった。

それと同時にその英傑は姿を消した。















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昴「っとまぁ、そんなお伽噺だ」

華「それで、何が言いたいのかしら?」

昴「ま、要するに覇道を歩むにはそれ相応の覚悟が必要だってことをこのお伽噺話は伝えたいんだろ?」

華「それで、その覇王はそれからどうなったのかしら?」

昴「さあな? 多分・・・・今も戦い続けてんじゃないのか? それが自分の使命とばかりに」

華「私は違う考えね。今も追っているのではないかしら。その前の王の理想とやらを」

昴「そうか・・・そうかもな・・」

昴は悲しいような嬉しいような・・・そんな表情を浮かべていた。

昴・・・やはりあなた・・、あなたはお伽噺の王なのね。

昴「なあ、覇道だけが道ってわけじゃないんだぜ? 他の道を探そうとは思わないのか?」

何を・・・。

華「愚問ね、覇道こそが我が歩む道。そして覇道こそがこの国と民をより良い方向へと導く道だと確信しているわ。そのためなら如何なる苦行、如何なる困難をも乗り越えてみせるわ」

えぇ、乗り越えるわ、必ず・・。

昴「そうか・・・ならもう何も言わないさ。だけどな・・」

華「?」

昴「もう少し仲間に寄りかかってくれ。華琳、君は1人じゃない。華琳の為に最後の最後まで戦ってくれる仲間がいる。そいつらの為にもあまり無理はするな」

そっと私の頭撫でた。

華「// ・・分かっているわ!」

昴「なら、約束だ」

そう言うと私の頭から手を離した。もう少しそのままでも・・・って何を考えているの、私は//

華「と、ところであなたは何故こんなところに?街に行くには遠回りのようだけど?」

昴に動揺を気づかれないように話題を変えてみる。

昴「何、ただ散歩がてら通っただけだ」

・・・この様子からして・・秋蘭ね。何も言わないなら私も聞かないわ。

昴「せっかくの休みだ。華琳もゆっくり休むといい」

華「ふふっ、そうさせてもらうわ」

昴「そうだ! ・・確かこの辺に・・」

何やら昴が手荷物をあさりはじめた。

昴「これを飲むといい」

華「これは?」

丸い丸薬のようだけど・・。

昴「これを飲んで休めばぐっすり眠れるし短時間で疲労もなくなる。味は・・・不味くないが美味くもない」

華「ならいただくわ」

丸薬を食べてみる。本当に美味くも不味くないわね。

華「ありがとう。これでゆっくり・・!?」

何? 急に頭がボーッとして眠気が襲ってきた。

華「な・・に・・?」

昴「この丸・は即効性・・いからな」

何? もうよく聞こえないわ。

昴「お・すみ・・華琳」

そのまま夢の中へと誘われた。



















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昴side

昴「おやすみ、華琳」

相変わらずよく効く丸薬だ。これを寝る前に飲むとすぐに睡眠状態になる。効果は眠った時間のおよそ倍の睡眠効果が得られる。つまり丸薬を飲んで3時間眠ると身体は6時間分寝たのと同じ状態になる。

華「すぅ〜・・すぅ〜・・」

昴「今度こそ眠ったな」

・・・それにしても、俺は何で華琳にあの話をしたんだろう・・。

昴「やっぱり似てるからなんだろう。」

気高くて初志貫徹貫き通すところがあいつに・・・。

昴「・・・」

桃香と華琳。2人の歩む道はあまりにもかけ離れている。互いが大きくなれば必ず互いに牙を向き合い、そして・・・やめよう。今はまだ考えなくてもいいことだ。それに・・・桃香なら。桃香ならきっと新しい答えを見つけてくれる。信じよう。俺が認めた主と王を。だから今は・・・。

昴「可愛い1人の女の子の寝顔堪能するとしますか」

俺はそっと華琳の前髪を撫で、華琳が起きるまで傍にいた。







続く


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