小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第13話〜出発、新天地へ〜















昴side

俺と凪は無事に張三姉妹を捕らえ、現在は華琳のところへ来ている。

華「で、あなた達が張三姉妹?」

張宝「そうよ。悪い!」

華「季衣、間違いない?」

季「はい。ボクが見たのと同じ人達だと思います」

張角「あ、私達の歌、聞いてくれたんだねー。どうだったー?」

季「すっごく上手だったよ!」

張角「ほんと!? ありがとー♪」

昴「君達はもともと旅芸人なんだろ? どうしてこんな事に?」

張梁「・・色々あったのよ」

華「色々ねぇ? ではその色々とやらを話してみなさい」

張宝「話したら斬る気でしょう! 私達に討伐の命令が下ってるのだって知ってるんだから!」

華「それは話を聞いてから決める事よ。それから、ひとつ誤解をしてるようだけれど・・」

張宝「何よ?」

華「あなた達の正体を知っているのはおそらく私達だけだわ」

張宝「・・・へ?」

華「そうよね? 桂花」

桂「はい。あなた達ここ最近、私達の領を出ていなかったでしょう」

張梁「それは、あれだけ捜索や国境の警備が厳しくなったら・・出ていきたくても行けないでしょう」

桂「ですから現状、首魁の張角の名前こそ知られていますが、他の諸候の間でも、張角の正体は不明のままです」

張宝「どういうこと?」

昴「ま、要するに尋問しても誰も君らの正体を明かさなかったってことだ。大した人気じゃん」

張梁「そんな・!」

華「それに、この騒ぎに便乗した盗賊や山賊は、そもそも張角の正体を知らないもの」

昴「それでそいつらがでたらめばっかり証言しまくった結果が・・・これだ」

俺は3人に証言をもとに作成されたであろう張角の絵姿を見せた。

張角「えー。お姉ちゃん、こんな怪物じゃないよー」

身長3メートル、髭モジャ、腕8本、足が5本、角シッポ付き。もはやただの怪物だ。

華「まあ、この程度という事よ」

張梁「何が言いたいの?」

華「黙っていてあげてもいい、と言っているのよ」

張宝「どういうこと?」

華「あなた達の人を集める才覚は相当なものよ。それを私の為に使うというなら、その命、生かしてあげても良いわ」

張梁「目的は?」

張宝「ちょっと、人和!」

華「私が大陸に覇を唱えるためには、今の勢力では到底足りない。だから、あなた達の力を使い、兵を集めさせてもらうわ」

張梁「その為に働けと?」

華「ええ。活動に必要な資金は出してあげましょう。活動地域は・・・そうね。私の領内なら、自由に動いて構わないわ。通行証も出しましょう」

張宝「ちょっと! それじゃ、私達の好きな所に行けないって事じゃない!?」

張梁「待ってちぃ姉さん」

張宝「何よ」

張梁「曹操。あなた、これから自分の領土を広げる気なのよね」

華「それがどうかした?」

張梁「それは私達が旅できる、安全な所になるの?」

華「当たり前でしょう。平和にならないのなら、わざわざ領土を広げる意味はないわ」

張梁「分かったわ。その条件、飲みましょう。その代わり、私達3人の全員を助けてくれる事が前提。」

華「問題ないわ。決まりね」

張宝「ちょっと人和! 何勝手に決めて・・、姉さんも何か言ってやってよ!」

張角「えー。だってお姉ちゃん、難しい話ってよくわかんないし・・」

張宝「あーもう役に立たないわね!」

秋「・・・」

昴「・・・」

俺と秋蘭は春蘭を見た。

春「秋蘭に昴。なぜ私を見る」

昴「大変だな」

秋「もう慣れたさ」

春「?」

春蘭はワケわからないといった感じだな。

張梁「ちぃ姉さん。もともと選択肢なんかないのよ。ここで断れば私達はこの場で殺されるわ」

張宝「むぅ」

張梁「生かしてくれる上に、自由に活動するための資金までくれて自由に歌っていいなんて、正直破格の条件だと私は思う」

張宝「用が済んだからって殺したりしないわよね?」

華「用済みになったら支援を打ち切るだけ。その頃には大陸一の歌い手になっているのでしょう? せいぜい私の国を賑やかにしてちょうだい」

張梁「面白いじゃない。それは、張三姉妹に対する挑戦という事でいいのね?」

華「そう取るなら、そう取ればいいわ」

張宝「よし! なら決まりだわ!」

張角「えーっと。結局、私達は助かる、って事だいいのかなぁ?」

張宝「それに、また大陸中を旅して回れるのよ! 今度こそ、あの太平何とかって本がなくても、大陸一番を獲ってみせるわよ!」

華「!?」

張角「え、やったじゃなーい♪ またみんなで歌って旅が出来るんだね♪」

華「ちょっと待ちなさい」

張宝「何?」

華「さっき、太平何とかって・・」

張梁「太平要術?」

華「あなた達、それをどうしたの!」

華琳の様子がおかしいな。太平要術の言葉に反応したようだが・・。

張角「んー。応援してくれてる、っていう人にもらったんだけどー。逃げてくるとき、置いてきたの」

華「そう・・」

張梁「私達のいた陣地に置いているはずだけど・・恐らく、もう灰になっているはず。それがどうかしたの?」

華「いえ。そう、あの書は灰になったのね」

昴「華琳、太平要術ってのは何なんだ?」

華「南華老仙の古書で私の領内から持ち出されたのだけど」

昴「その古書に何かあるのか?」

華「ええ。その古書はどうにも不思議な力が備わっているみたいでね。悪用されると面倒だから探していたのだけれど・・」

昴「じゃあ、張三姉妹がこれだけの規模の集団を率いられたのは・・」

華「恐らく、それも1つの要因なのでしょう」

昴「・・・」

イレギュラーギフト。神からの想定外の贈り物か。外史が発生する際にそれと同時にトンでもな物が外史にあることがある。形状は武具であったり、道具であったりするんだが、厄介なのがそれを手にすると誰でも英傑並みの力を備わってしまうことだ。過去、他の外史でイレギュラーギフトを持った敵と戦った事があるけどかなり厳しい戦いだった。守り手はそれらを回収もしくは消滅させることも仕事だったりする。

華「どうかした?」

昴「いや」

春「華琳様、探して参りましょうか?」

華「不要よ。それよりあの陣にもう一度火を。誰かに拾われて悪用されては、また今日のような事態になりかねないわ」

秋「承知いたしました」

回収するの面倒だし。これでいいか。






















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


凪「ふぅ」

昴「お疲れ、凪」

凪「あ、師匠、お疲れ様です」

沙「凪ちゃん、今回は大活躍だったねー。華琳様もすごく褒めてたの」

凪「そうか」

昴「良かったな」

凪「はい。これで大陸も平和になります」

昴「そう・・だな」

凪「? どうしました?」

昴「何でもないよ」

これで全てが収まるとは思えない。恐らくこれは終わりではなく始まりだろう。でもまぁ、今日くらいはいいだろう。

昴「華琳から褒賞も貰ったんだし、今日は派手に宴会でもするか?」

真「せやな。華琳様も軍議は次の日にする言うてたしな」

沙「賛成なの〜!」

各々が黄巾党の殲滅とその祝杯に胸を躍られせていた。























※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


凪side

私達は荷物を解く暇もなく、広間に集合かけられていた。真桜や沙和はもちろんみんなも不満そうだ。師匠はこの場にはいない。

張遼「すまんな。みんな疲れとるのに集めたりして。すぐ済ますからな、堪忍してな」

華「あなたが何進将軍の名代?」

張遼「や、ウチやない。ウチは名代の副官や」

春「なんだ。将軍が直々にというのではないのか?」

張遼「あいつが外に出るわけないやろ。クソ十常侍どもの牽制で忙しいんやから」

仮にも自分の上司にあたる人にひどい言い様だ。

?「呂布様のおなりですぞー!」

すると帽子を被った小さな女の後に1人の女性がやってきた。

呂「・・・」

何だ? 発せられる空気が私とは違う・・・この人、強い!
傍の人は陳宮だと秋蘭様が教えてくれた。

陳「曹操殿、こちらへ」

華「はっ!」

呂「・・・」

ん? 何も喋らない?

陳「えーっと、呂布殿は、此度の黄巾党の討伐、大儀であった! と仰せなのです!」

華「・・は」

呂「・・・」

陳「して、張角の首級は? と仰せなのです!」

華「張角は首級を奪われることを怖れ、炎の中に消えました。もはや生きておりますまい」

呂「・・・」

陳「ぐむぅ・・首級がないとは片手落ちだな、曹操殿。と仰せなのです」

華「・・申し訳ありません」

呂「・・・」

陳「今日は貴公の此度の功績を称え、西園八校尉が1人に任命するという陛下のお達しを伝えに来た。と仰せなのです!」

華「は。謹んでお受けいたします・・。#」

私にもわかる。華琳様・・・すごい怒気が溢れてる。皆もそれに気づき萎縮している。空気が重すぎる。するとそこに・・・。

昴「おーい皆! 俺特製肉まんが蒸し上がっ・・・た・・ぞ?」

師匠が何やら肉まんが入った籠を持って入場してきた。

昴「ん? もしかして俺・・・空気読めない子?」

はい。まるで空気読めてません。





















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

勢いよく入場したはいいがどうやらそういう空気ではなかったみたいだな・・・・ん? 何やら赤毛の女の子が近づいてきたな。

呂「・・・(ゴクッ)」

赤毛の女の子は俺ではなくどうやら俺の持つ特製肉まんに興味があるみたいだな。特製と言ってもチャーシューまんだがな。

昴「食べてみるか?」

呂「・(コクコク)」

昴「おひとつどうぞ。」

呂「・・(モキュモキュ)」

肉まんを受けとるとすぐさま食べ始めた。おぉ、何か可愛いな//

昴「味はどうだ?」

呂「美味しい。こんなに美味しい肉まん、はじめて」

昴「なら良かった」

言うや否やすぐに食べ終わった。すると・・。

呂「・・(ジ〜)」

視線は相変わらず肉まんだ。

昴「いっぱいあるからもう1つどうぞ」

呂「・・ありがとう(モキュモキュ)」

あぁ、やっぱり可愛いなぁ〜。思わず女の子の頭を撫でてしまった。

昴「・・(ナデナデ〜)」

呂「・・ん//」

どうやら気持ち良さそうだ。そこに・・。

陳「お前! 呂布殿に何をなさるか! ちんきゅーキーク!」

ガシッ!

飛び蹴りをしてきた小さな女の子の足首を掴みそのまま逆さにぶら下げる。

陳「はーなーせー! 離すのです!」

何やらジタバタしはじめた、さてどうしたものか・・・。

ポクポクポクポクポクポク・・・チーン!!

昴「よし、庭に植えよう」

陳「何でなのですか!」

そのまま庭に歩き出す。

陳「はーなーすーのですー!」

昴「来年にはもっと大きくなろうな♪」

陳「ねねは植物ではないのです!」

陳「何故穴を掘るのです!?」

陳「土をかけるなです!」

陳「水をかけるなです!」




















・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


陳「ビェェェーーーン! 恋殿ー!」

大泣きをして赤毛の女の子ところに抱きついてしまった。うーんやりすぎたか。

昴「ごめん、ごめんな? ほら、冗談じゃん? 冗談」

陳「グスッ! 首から下を埋めたです・・水をかけたです・・」

呂「ちんきゅーいじめちゃ駄目」

昴「少しやりすぎたな・・そうだ! 確か陳宮だっけ? さっきの肉まん、大量にあるからさ、これ詫びと言っては何だがお土産に持って帰ってくれよ。なっ?」

呂「ちんきゅー、許してあげよう?」

陳「恋殿〜」

張遼「お前、おもろいやっちゃなぁ。しかしなぁ、仮にも都に仕える将にあないなまねしたらただでは済まんで?」

昴「他じゃ手に入らない酒も付けよう! これはブドウから作った酒だ」

張遼「・・・あーねね? この人も誠心誠意謝っとるみたいやし、ここは1つ懐の大きいとこ見せようやないか」

陳「うぅ、ねねはお酒以下なのですか!?」

すっかりいじけてしまった。

昴「ほら、1つ食べてみな?」

陳宮はおずおずと肉まんを手に取り食べ始めた。

陳「・・(モグモグ)」

昴「うまいだろ?」

陳「・・・美味しいのです」

良かった。口に合ったみたいだな。俺はそのまま陳宮をそっと抱きしめて後頭部を撫でてあげた。

昴「ごめんな。俺が悪かった。だから機嫌直してくれ。な? むくれてると可愛い顔が台無しだ」

陳「何やら丸め込まれてる気がするのです」

昴「気のせい気のせい♪」

呂「ねね、許してあげよ? 反省してる」

陳「・・・恋殿がそういうなら・・」

昴「ありがとな」

陳「ふん!」

あら拗ねちゃった。でも許してくれたようだ。

昴「それにしても、俺は宴会やるって言うから大量に肉まん作ってきたのに、そしたらまぁ、こんな感じだったからさ」

張遼「すまんな。こっちの用事は済んだから後は宴会でも好きにしたってや」

昴「そうなのか? 明るく登場したら・・あんな空気だったろ? だから空気を変えるためにとっさに陳宮を・・・なぁ?」

陳「ねねをダシにするなです!#」

昴「だから許してくれって。このとおり!」

直立不動。

陳「頭を下げろです!#」

張遼「おまえらホンマにおもろいな! 2人でおもろい漫才できるんとちゃうか?」

陳「誰がこんな奴と!」

昴「笑いの世界はそんな甘くねぇ!」

陳「お前に言われると余計に腹がたつのです!」

張遼「やっぱり息ぴったりやん」

陳「ぬぐぐぐぐっ」

張遼「まぁ何にせようちらは用が済んだから帰るで」

昴「ひき止めて悪かったな。・・・あぁ最後に名前聞いてもいいか?」

張遼「ウチは張遼、字は文遠や」

昴「そっちは陳宮だろ? 君は?」

恋「恋」

昴「ん?」

恋「真名・・恋」

陳「恋殿!?」

昴「いいのか?」

恋「ん、これすごく美味しかった。だからいい」

昴「そうか。俺は姓は御剣、名は昴。昴でいいぞ」

ね「むぅ、恋殿が許したなら、ねねは陳宮、字は公台、真名は音々音なのです」

昴「ねねねね?」

ね「音々音!」

昴「冗談だよ。音々音」

ね「呼びにくいならねねでいいです」

張遼「2人とも行くで〜」

恋「昴、またね」

昴「あぁ、またな」

ね「今度会ったらちんきゅーキックでとどめを刺すです」

昴「次は八墓村な♪」

ね「よく分かりませんが嫌な予感がするのです・・・覚えてろ! なのです!」

昴「またな、ねね!」

3人は帰って行った。しかし恋は何か可愛いし、ねねは面白いし、張遼は付き合いやすそうだったな。さてと・・・・ん?

「「「・・・・」」」

皆沈黙している。どうしたんだ?

「「「・・・プッ、あはははは!」」」

皆が笑い始めた。

真「隊長、めっちゃおもろかったで!」

沙「笑い堪えるの必死だったの〜!」

秋「くくっ、仮にも都の将だぞ?」

春「華琳様を見下し罰だ。あはは!」

桂「ほんとよ! くくくっ!」

凪「・・・プッ!」

茉「・(プルプル)」『笑いを堪えている』

華「本当に、あの呂布を相手にあんなまねするなんて、ねぇ?」

呂布・・呂布!?

昴「恋って呂布だったのか!?」

華「えぇそうよ。それがどうかしたのかしら?」

昴「なるほどな〜・・・いやあの子、恋な、かなり強いぞ?」

華「評価が高いわね。ちなみにあなたから見てどのくらい?」

昴「直接手合わせしないと推測の域をでないが・・・とりあえず春蘭と秋蘭、それに季衣と凪の4人がかりでなんとかってところだろ。勝利したとしてもその時には2人はやられてるかもしれない」

華「なるほどね」

言われた4人は何も反発しない。自分でも気づいているのだろう。

華「昴、あなたなら勝てるかしら?」

昴「そうだな、かなり苦労するだろうな」
























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官軍side

恋「・・(モキュモキュ)」

張遼「ホンマに美味いなこれ」

ね「確かに美味しいですが、だからといって真名を預けるのはやりすぎですぞ」

恋「・・(フルフル)」

張遼「ん? 違うんか?」

恋「これ美味しい。でもそれだけじゃない。昴、恋より強い。」

ね「なんですとー!?」

張遼「ホンマか!? 確かにただ者やないとは思たがそこまでかいな」

驚くのは当然である。恋こと呂布はこの黄巾の乱で3万の賊を1人で討ち滅ぼした猛将だからである。

ね「そんな、何かの間違いです!」

張遼「いや、まてよ? 御剣、昴。確かどっかで・・・!? そうや、御剣昴、今国中を揺るがしとる天の御遣いの名が確かそうや!」

ね「あのいじめっこがですか!?」

張遼「多分そうや。か〜、もっとはよ気づいてたら手合わせしてもらったんやけどな〜」

恋「・・(モキュモキュ)」

ね「最強は恋殿なのです! 間違いないのです!」

3人は帰りの道中こんな話をしていた。
























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※※※※


昴side

一方こちらは、

華「さっきまで気分は最悪だったけど、今はとても気分がいいわ。皆で宴会でもしましょうか、明日は二日酔いで遅れてきても目をつぶるわ。思い切り羽目を外しなさい」

季「やった〜! 兄ちゃん、さっきの肉まんまだある?」

昴「心配するな。今侍女の子に蒸してもらってるからまだまだあるぞ」

季「やった〜!」

華「後・・・昴、あなたの送別も兼ねているからね」

季「えっ・・」

華「黄巾党の首魁張角はもういない。残存する賊も諸候に討伐されるでしょう。確かあなたは黄巾党を壊滅させるまで客将をすると言っていたわね。つまり、もう行くのでしょう?」

昴「・・・ああ」

季「兄ちゃん、行っちゃうの?」

春「我々と共に華琳様を支えればいいではないか!」

昴「季衣、春蘭、それに皆。皆に華琳がいるように俺にも帰りを待ってくれている仲間がいる。だから俺は行かなくちゃならない。それに、まだ旅の途中だしな?」

華「それで、出発はいつ?」

昴「とりあえず明日にでもここを発つ予定だ」

凪「そんな、師匠、急すぎます」

昴「結構長居しちまったからな」

早く次に行かないと時間がなくなっちまう。

秋「華琳様、よろしいのですか?」

華「もともとそういう約束なのだから、それを反故にしては曹孟徳の名に傷をつけることになるわ」

秋「・・そういうことでしたら」

不満そうだな。嬉しいような・・・何と言うか。

昴「ま、何にせよ出発は明日だ! 今日はパーっと騒ごうぜ!」

華「そうね、めでたい日でもあるのだから」

凪「そうですね」

真「賛成やー!」

沙「賛成なの〜!」

昴「それじゃ準備するか。凪、真桜、沙和、手伝ってくれ」

凪「了解です」

真「任しとき!」

沙「はいなの〜」

俺達は準備に向かった。この後の宴会はすごく盛り上がったのだが、春蘭はべろべろになって半分猫化したりそれを見てる秋蘭は『姉者はかわいいなぁ』とか言ってたし、桂花は・・・やめとこう、酔っぱらった桂花があんな可愛いわけがなゲフンゲフン! 何でもない。季衣はとにかく食べまくって、俺は無くなる度に料理を作ってた。何で? その他は特に代わり映えなかったな。華琳とか結構飲んでたけど変化はなかったな。その後宴会は深夜まで続き、そこでお開きになった。
























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※※※※


宴会終了後、俺はここでの仕事の引き継ぎ、要するに警備隊業務の引き継ぎ作業をしている。

昴「隊長は凪だろうな。1番真面目だし。後は・・」

華「起きてるかしら?」

この声華琳だな。

昴「あぁ、起きてるよ」

華琳が部屋に入ってきた。

華「あなた結構飲んでいたのに余裕ね。まだ仕事をするなんて」

昴「それは華琳もだろ同じだろ? 凪達への引き継ぎをしっかりしておかないといけないからな」

華「そう・・」

サラサラっと、筆を走らせる音が部屋に響く。

華「・・行くの?」

昴「あぁ」

華「・・・」

昴「・・・」

華「もし・・もしあなたが私と同じ道を歩んでくれるなら、あなたを大都督としての地位を与えようと思ってるのだけど・・」

大都督、今の華琳の軍のナンバー2は春蘭だ。大都督となれば春蘭とほとんど同等、いやそれ以上だ。

昴「俺が大都督か・・・くくっ、笑える冗談だ」

俺は思わず含み笑いが出た。

華「・・・本当に・・笑える冗談よ・・」

拒絶、華琳はこちらの意図に気づいたのだろう。

華「あなたが力を貸してる劉備、この乱で義勇軍で名を馳せた人物だという報告を得てるけど、劉備は私の誘いを断る程の人物なのかしら?」

昴「単純な武と知なら華琳と比べるまでもないさ。勝ってるのは胸の大きさぐら(ジャキ!)・・ごめんなさい」

ジェスチャーまでしたら絶を首筋に当てられちゃいました。

昴「ま、とにかく、武や知はあまり素質はないだろうな。だけど、あの娘には俺達にはないモノを持っている」

華「私達には無いもの?」

昴「彼女の存在、その言葉には人を惹き付ける何かがある。彼女の理想に賛同し彼女を信じて皆が彼女のため大切な何かを守るために力を貸したい。そんな気持ちにさせられるんだ」

華「劉備の理想とはなんなの?」

昴「皆が笑って暮らせるようにしたい。それが彼女の理想だ」

華「夢物語ね」

昴「だろうな。俺も同じ意見だ。だけどな、彼女の言葉を聞くとそれが実現できそうな気がしてくるから不思議なんだ。甘ったるい理想なのに」

華「私には理解できないわ」

だろうな。

昴「1人じゃどうにも心配だから俺がいるわけだ」

サラサラサラ・・・終了っと。

華「終わったの?」

昴「あぁ、これがここでの最後の仕事だ。・・ふぁぁ、それじゃ寝るとするかな」

華「・・・そう」

椅子で伸びをすると後ろから華琳が俺を抱きしめた。

昴「華琳?」

華「・・今だけよ、今だけこうさせなさい」

昴「・・分かった」

そっと華琳の手に自分の手を重ねた。

華「・・・」

昴「・・・」

時間にして5分くらいだろうか。スッと華琳が俺から離れた。

華「夜中に悪かったわね。ゆっくり休みなさい」

昴「何、気にしてないさ」

華「おやすみ、昴」

昴「おやすみ、華琳」

挨拶を交わすと華琳は部屋から出ていった。再び部屋に静寂が流れた。

昴「・・ごめんな、華琳」

俺はやっぱり桃香の理想を共に貫きたい。例えそれがいかに困難で、いかに夢物語であろうと。だから・・・ごめん・・・。

























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※※※※


華琳side

華「・・・バカ」

昴なら、私と同じ道を歩める昴なら、きっと私の孤独を埋めてくれると思っていたのに。

華「・・本当に・・バカ・・」

私は1人の王として、そして、1人の女として呟いた。その声は闇に溶け込んでいった。






















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※※※※


昴side

翌日の昼前、全ての準備と引き継ぎが終わり、旅立ちを目の前にしている。

昴「皆、世話になったな」

春「おのれ、勝ち逃げしおって。次会ったら必ずお前に勝ってみせるからな!」

昴「楽しみにしてるぜ」

秋「お前がいなくては私1人で姉者を面倒みなければならないのだがな」

昴「悪いな。でもそれも悪くないだろ?」

秋「ふふっ、それもそうだな」

季「兄ちゃん、ボクのこと忘れないでね? また一緒にご飯食べようね?」

昴「あぁ、もちろんだ。たまには俺も料理を振る舞うよ」

桂「ふん! ようやく出ていくのね。せいせいするわ」

昴「・・桂花」

桂「・・・勝手に死んだりするんじゃないわよ・・」

昴「心配するな。殺されたって死なないさ俺は」

そっと桂花の頭を撫でた。

桂「・・ふん//」

凪「師匠、今日まで御指導、御鞭撻、ありがとうございます」

昴「凪はもっと強くなる。鍛練を欠かすなよ。それと警備隊の方も頼むな。真桜と沙和だけじゃ心配だ」

凪「は おまかせください!」

真「隊長ひどいで〜」

沙「ひどいの〜」

昴「日頃の行いだ。2人も元気でな。凪にあまり迷惑かけるなよ」

真「分かっとるわ」

沙「任せてなの〜」

少し不安だが大丈夫だろ。さてと・・・。

昴「茉里」

茉「・・・」

さっきから下を向いたままなにも喋らない。参ったな。
すると茉里が俺に近づき、俺にギュウとしてきた。

茉「・・行っちゃ嫌」

昴「茉里・・」

茉「行っちゃ嫌! センセはずっと一緒にいるの!」

普段の茉里からは考えられない大きい声で俺に懇願した。

茉「センセ華琳様のこと嫌い? ・・皆のこと嫌い? ・・私のこと・・嫌い? グズッ!」

その顔涙で濡れていた。

昴「嫌いなわけないさ。華琳も皆も、もちろん茉里も大好きだ」

茉「グズッ! なら・・」

昴「それでも俺は行かなきゃならない。やらなきゃいけないことがあるから。俺を待ってくれている仲間がいるからな」

茉「センセと・・・離れたくない・・」

俺は茉里と同じ目線に立ち、そっと抱きしめ、頭を撫でた。

昴「一生の別れじゃないんだ。またいつか会えるさ。それに俺がいなくなっても茉里にはたくさんの仲間がいるんだ。だから寂しくないだろ?」

茉「グズッ、・・はい」

昴「だから、泣き止んでくれ。可愛い笑顔で見送って、次会うときもその笑顔で迎えてくれ、な?」

茉里は袖で涙を拭き・・。

茉「はい! ・・・センセ!」

とびきりの笑顔を向けてくれた。

昴「華琳、君には本当に世話になったな」

華「こちらも部下が同じだけ世話になったのだからお互い様よ」

昴「そう言ってくれると助かるよ」

華「あと1つ言っておくけど・・」

昴「?」

華「私はあなたを諦めたわけではないわ。いつか必ずあなたを手に入れてみせるわ」

昴「ははっ、楽しみにしてるよ。・・・さてと、そろそろ行くな?」

華「分かったわ」

昴「それじゃ、皆、またな!」

春・秋「またな」

季「兄ちゃん、またねー!」

桂「早く行きなさいよ!」

凪「師匠、お元気で!」

真・沙「またな〜(なの〜)」

茉「センセ・・お元気で」

皆の声を受け取り。城を後にした。























※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「ここを発つ前に腹ごしらえでもしとこうかな・・・何処にしようか・・・ん?」

あれは・・。

昴「おーい!」

張角「あ〜、昴〜」

張宝「昴じゃない」

張梁「こんにちは、昴さん」

昴「何してるんだ?」

張角「私達、これから食事なんです」

昴「ならご一緒してもいいか?」

張梁「はい、構いませんよ。いいですよね? 姉さん」

張宝「ちぃもいいよ」

張角「行こ行こう〜」





















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※※※※


とりあえず張三姉妹と店に入った。場所は華琳が気に入ってる店の1つだ。以前に桂花と食事した際に値段聞かずに入店したもんだから財布が大打撃を受けてしまった苦い記憶があるので、手頃な値段の美味しい店に来た。

張角「昴〜、これ、美味しいよ〜」

プニプニ。

張宝「昴! こっちも食べてよ!」

プニプニ。

昴「あ、あぁ」

うぅ〜、いろいろ、当たってる//

昴「少し・・離れような? ・・その、当たってるし」

張角・宝「「何が当たってるのかな〜?」」

こいつら確信犯だな! 俺は両腕を2人にとられてるから飯が食えない。2人にあ〜んされてる。

張梁「姉さん達、昴さんが困ってます」

張角「そんな事言って〜、本当は羨ましいだけのくせに〜」

張梁「そ、そんなことない//」

張梁は顔を赤くしている。ちなみに何故かここの払いは俺ということになっている。まぁいいけど。それにしてもうまいな。さすが華琳が気に入るだけはある。

?「お待ちどうさまです」

翠色の小さな女の子が料理を運んできてくれた。

昴「ここの料理は美味しいね。特にコレとコレ」

2つの料理を指差した。

?「本当ですか!?ありがとうございます! ・・実はその2つ、私が作ったんです」

昴「へぇー、君給仕じゃなかったんだな」

?「はい、人手不足なので給仕もやってるんです」

そういえば・・・

昴「君って確か華琳・・じゃなくて曹操から誘われてた料理人じゃないのか? 名前はえーと・・・『典韋です。』そう典韋だ」

典「お誘いは嬉しかったんですが、実は探してる人がいるんです」

昴「探している人?」

典「はい。もともと親友に呼ばれてこの街に来たんです。結局合流出来なかったんですが・・」

昴「そうなのか? 俺は最近までこの街の警備隊の隊長やってたから力になれるかもしれない。その人の特徴と真名じゃない名前を教えてくれないか?」

典「本当ですか? ありがとうございます! 特徴は背は私くらいで食べるのが大好きで名前は、許緒です」

許緒・・・。

典「ご存知ないですよね?」

昴「いや、よく知ってるよ。ていうか許緒、今曹操のところで親衛隊やってるぞ」

典「曹操様の親衛隊!? お城に勤めてるって言うからてっきりどこかの大きな建物をお城とでも言ってるのかと・・・本当なんですよね?」

昴「あぁ、立派に親衛隊をつとめてるぞ。探してたんなら訪ねてみるといいよ」

典「はい、今日はもうすぐにあがりなんで早速行ってみます。教えていただきありがとうございます」

昴「なに、気にするな」

典「それでは失礼しますね」

一礼すると奥に下がって行った。何にせよ会えて良かった良かった。

張角「むぅ〜、私達がいること忘れてな〜い?」

張宝「ちぃの前で他の女の事考えるなんて!」

えぇー、理不尽。

昴「2人ともごめんな?」

張角と張宝の頭を撫でてあげた。

張角・宝「「・・//」」

機嫌直してくれた・・かな? さてと・・・。

昴「俺はそろそろ行くな。もう行かないと次の邑まで間に合わないからな」

張宝「次の邑?」

昴「あぁ、客将としての期間が終わったからな」

張梁「曹操様の臣下ではなかったのですか?」

昴「期間限定の客将だ」

張角「そんな〜、せっかく彼氏にしようと思ってたのに〜」

張宝「ちぃだって狙ってたのよ!」

冗談なんだか本気なんだか。

昴「とりあえず勘定はここ置いとくから」

張角「う〜、分かった。また一緒に食事しようね〜」

張宝「あたし達の歌いつか聞きに来なさいよ」

張梁「旅のご無事をお祈りします」

昴「それじゃ、またな!」

店を出てそのまま街の外を出て新たな目的地へ移動を開始した。

かくして、曹操のところでの客将も終わり、また新たな旅が始まるのであった。









続く

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