第14話〜新たな出会い、麒麟児との共闘〜
華琳の元から旅立ち、3週間程がたった。俺は邑や街を転々としながら旅を続けている。とりあえず今は荊州に来ている。
昴「しかし、荊州の邑や街をまわってみたが、正直あまり治安は良いとは言えないな・・」
訪ねたいくつかの邑は貧困に喘いでいた。華琳が治めていた地方とは大違いだった。この国を治めているのは確か袁術だっけな?
昴「華琳と比べるのも酷な話か・・・ん? あれは」
遥か前方に大集団がいた。見たところ官軍や諸候の軍ではないな。
昴「黄巾党の残党か・・・」
いくら首魁の張角がいなくなったとはいっても根本的な問題が解決されていないから賊はいなくならない。相変わらず私利私欲による圧政が横行しているせいで民は苦しんでいる。それに耐えかねて賊に成り下がった者は今も出ている。
昴「あのまま何処かの邑が襲われたら厄介だな」
奴らの目的は確実に略奪だ。 ここで見逃したら面倒なことになる。この国の兵が来るまでまだ時間が掛かりそうだ。
昴「数は1万、けどやらなきゃならないな」
決して楽ではないが、やれない数でもないな。
昴「行くか」
俺は朝陽と夕暮引き抜き、賊に向かった。
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孫策side
策「はぁ、全くもう」
私達は今袁術の命令で黄巾党の残党を討伐しに来ている。あの袁術の命令を聞くのは癪だけど私達は今は袁術の客将という立場だから仕方ない。
策「・・・妙ね」
黄「どうかしましたか、策殿?」
策「そろそろ賊が見えてもいいはずなのに姿すら見えてこないわ」
周「確かにそれは気になったが・・」
黄「しかし相手は賊じゃ、気に病む必要はないと思うが・・」
策「そうなんだけどね〜」
相手は賊。常識に当てはまらないことなんていくらでも考えられる。けど・・、何か気にかかる。
周「何、偵察部隊もすぐに戻ってくる。そうすれば何が起こっているかわかるさ」
策「それもそうね」
しばらくすると偵察部隊が戻ってきた。
「申し上げます!」
黄「うむ」
「前方4里ほど先にて賊が交戦中です!」
どういうこと?
黄「この辺りで動ける軍といえば袁術ぐらいなものだがのう」
周「しかし袁術から討伐命令が出たのだ。それはないだろ。何処かの義勇軍でも来たのか・・」
「いえ、それが・・」
黄「何じゃ、申してみろ」
「賊と戦っているのはたった一騎です!」
黄「何じゃと!?」
周「馬鹿な、報告では数は約1万だぞ」
「間違いありません。既に2千程が討ち取られております」
へぇー、面白そうね。
黄「化け物か、其奴は」
私の勘が言ってるわ。そこに行くべきだと。私は馬を走らせ、その場所へ急いだ。
周「雪蓮! 待ちなさい!」
黄「策殿! えぇい、全く!」
後ろで2人が何か叫んでいたけど今はそれどころではないわ。少しでも早く行かなければ! 今私の頭の中を占めていたのはそれだけだった。
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昴side
昴「はぁ!」
グシュ! ザク! ダダダダッ!
「うぐっ!」
「がはっ!」
「ぎゃあ!」
俺は賊を突き、薙ぎ払い、氣弾で撃ち払っていく。戦い初め、既に3千は討ち取っただろうか。相変わらず賊はうじゃうじゃ沸いてくる。
昴「ったく、次から次へと!」
賊はまだまだ向かってくる。
「死ねぇ!!」
賊が背後から襲ってきた。しかし・・。
「甘ぇーよ・・・・!?」
「グフッ!」
撃退しようとした瞬間賊の更に後ろから褐色肌のピンクの髪の女性がその賊を斬り捨てた。何だ、この人は?
「余所見してんじゃ・・・ぐわはぁ!」
邪魔だ。
?「余計なお世話だったかしら?」
昴「とりあえず礼は言っておくよ。ありがとう」
?「それにしても無茶をするわね。これだけの数を1人でやろうなんて」
昴「お互い様だろ?・・・・ところで、これからどうするんだ? すっかり賊に囲まれちまったが」
だいぶ蹴散らしたはいえ賊はまだまだ7千程いる。今完全に包囲されていた。
?「どうするも何も、1人残らず殺るだけでしょ?」
昴「・・違いない」
2人は背中合わせに並ぶ。
昴「背中は任す。ぬかるなよ?」
?「えぇ、あなたもね!」
互いが同時に動いた。
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戦場は更に激化した。俺と褐色肌の女性前に次々と屍の山が築かれた。
昴「せい!」
?「はぁ!」
グシュ! ザシュ! ザク! ズブッ!
「がはっ!」
「ギャハ!」
「ぎゃあ!」
5千近く討ち取り、徐々に賊に動揺が走り出す。それにしても・・・。
この人強い。強さは春蘭や愛紗クラスか。・・・だが何より・・。
これ以上ないくらいに息が合う。実力がある者同士が共闘すると場合によっては足の引っ張り合いになることもある。だが今の俺達はまるで何年も共に戦っているかのように息が合うのだ。互いが互いの隙を埋め、互いが互いに高め合う。今の俺達は正にそれだ。
昴「さぁて、もうひと頑張り・・・する必要もないか」
ヒュヒュヒュヒュヒュン!
「グフッ!」
「うわぁ!」
矢の雨が賊に降り注いだ。
昴「どうやら到着したみたいだな・・・お姉さん、とりあえず下がるか?」
?「そうね。さすがに火の矢の雨にさらされるのごめんだわ」
後方に第2矢、先端に火が灯された矢を構えた兵が立っていた。
昴「後は任せるか。とりあえずもうやることもないだろ」
俺達は後方の援軍のところまで下がった。
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戦いは俺と孫策(さっき教えてもらった、正直かなり驚いた。)が事前に半数近くを叩き潰したのと、火矢によって賊は大混乱を起こし、たちまち孫策の軍に討ち取られた(孫策は援軍と合流後、再び敵に突っ込んで行った)。結果、大した被害を出さずに勝利した。そして今、俺は孫策の本陣に招かれている。
孫「あなたのおかげで邑は救われたしこちらも被害を少なく戦いを終わらすことができたわ」
昴「礼には及ばないさ。」
策「代表してお礼をしたいから、私達の城まで来てもらえないかしら」
ふむ、随分と律儀なんだな。ま、断るのはあれだし、ありがたく礼を受け取るか。
昴「構わないよ」
策「そう言ってもらえると嬉しいわ」
そう言うと含みのある笑顔を浮かべた。ん?何だ?俺は孫策達に案内されるまま、孫策の城である荊州の南陽に向かった。
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孫策side
賊の討伐も終わり、御剣昴(さっき教えてもらった)と共に城へと帰還している。
良かったわ、一緒に来てくれて・・。
先程共闘した時、面白いくらいに息が合った。何年も一緒に戦ってきたかのように。何より・・・。
あれだけ人を斬って血を見たのにいつもの疼きが現れなかった。
私は血を見たり長い時間戦って興奮状態になると自分で自分を抑えられなくなる。でもさっきの戦いではそれは一切起こらなかった。それどころかもっと別の高揚感みたいなものが溢れてきた。
きっと御剣昴が共にいたからね。私の勘も昴を逃がすなと言ってる。これはどんな手を使ってでも私達の所に留まってもらわなくちゃ♪
1人私は昴を留める方法を思案していた。
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昴side
城に着き、孫策の館に招かれた。今目の前には孫策、周瑜、黄蓋がいる。
爽快だな。英雄達に合い見えるとはな。
ちょっと感動している。
周「改めて、賊の討伐に協力してくれた事、礼を言う」
昴「改まらなくても構わないけどな」
周「ところで、1つ尋ねたいのだが」
昴「何だ?」
周「今巷で噂されている天の御遣いとは貴殿のことか?」
それか・・。
昴「噂と言うのがどういうものか分からないが一応そうだ」
周「ふむ、やはりか」
黄「何と!」
策「へぇー、やっぱりね」
反応はいろいろだ。
黄「しかし何故荊州におったのじゃ? 最近では一ヶ所に留まっていたようだが?」
昴「あぁ、一時は曹操の客将をやっていたんだ、その後は見聞を広げる旅を続けている」
周「なるほど」
昴「荊州には一目会っておきたい人物がいたのと、・・1つ気になる噂を耳にしてね」
策「噂?」
昴「黄巾党の残党が荊州に集まっているという噂だ」
周「確かに、今荊州に賊が集まってきている。・・・しかしこの地にきてどうするつもりだったのだ?」
昴「とりあえず潰す・・・つもりだったんだけど。数が多すぎて少々困っていた」
黄「無茶をするの」
策「ふ〜ん、それなら、私達と協力しない?」
1人じゃ無理だし、何より・・・この孫策という人物を見てみたいな。
昴「分かった、君達に協力するよ。しばらくの間、世話になる」
策「決まりね♪」
話はまとまった。
黄「一目見ておきたかった人物とは誰なんじゃ?」
昴「あぁ、それは・・・」
孫策の方を見て・・。
昴「江東の麒麟児、孫策伯符だ」
策「!? ・・それは何故かしら?」
昴「黄巾党の争乱で名を上げた諸候はいくつかいたがその中でも袁術の客将の孫策の名は結構国中に轟いていたから是非会って見たかったんだ」
さすがに歴史に名を残す英傑だからですとは言えなかった。ま、嘘じゃないし。
孫「それで・・・あなたから見て私はどう見えた?」
昴「そうだな・・・一言で言うと王だ。大きな器を兼ね備えた王。孫策の元には更に人材が集まり大きな勢力になるだろうな」
黄「まぁ、当然じゃの」
周「雪蓮ならば当然だ」
策「天の御遣いの目に叶ったのなら光栄ね」
昴「あくまでも俺個人の評価だけどな」
策「そう・・それなら今度はこっちの話を聞いてもらおうかしら」
昴「あぁ」
策「私達孫家がのしあがるには名と風評を上げる必要があるの。だから・・・孫家にあなたの血を入れてちょうだい♪」
・・・・ん? 何だって?
昴「えっと・・つまりどういうことかな?」
策「つまり、孫家の人間とまぐわって子をなしてほしいってことよ♪」
昴「いやいや、冗談だろ?」
策「まさか♪ 孫家に天の御遣いの血が混ざれば孫家は安泰だと思うの。だから、じゃんじゃんまぐわって♪ 私の妹とかおすすめよ。胸もお尻もいい形だし、とっても・・」
昴「いやいや、そんなこと言われてもだな・・」
周「まぁ雪蓮、そのことに関しては後でもいいだろ?」
周瑜さん、その発言からして反対ではないんですね。
策「とにかくこれから一緒に戦うわけだからあなたに私の真名を預けるわ」
昴「いいのか?」
策「こっちは言い方を変えればあなたを利用するつもりだからせめてもの礼儀よ」
昴「分かった」
雪「私の真名は雪蓮よ」
冥「雪蓮が預けるなら私も預けよう。私の真名は冥琳だ。よろしく頼む」
祭「わしの真名は祭じゃ、世話になる」
昴「雪蓮、冥琳、祭さん、しばらくの間世話になるよ。よろしく頼む」
ということで、俺は雪蓮達と共に戦うことになった。
この昴と孫家の出会いがこの先の大きな運命を変えることになるとはこの時誰も気付いていなかった。
続く