小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第19話〜稀代の軍師、悲しき性癖〜















昴side


昴「何故こんなことに・・」

目の前には横たわる穏の姿が。それは遡ること5時間ほど前・・・・・。



















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頼まれていた書簡を纏め、冥琳に提出した帰り道、時間が空いたので何をするか考えていると・・・。

穏「昴さ〜ん!」

昴「ん、穏か」

穏「もしかしてお暇ですか〜?」

昴「あぁ、仕事も終わって冥琳に書簡を提出した帰りだ」

穏「でしたら〜、以前にお約束した、昴さんのお話を聞かせてもらってもよろしくですか〜?」

昴「ちょうど暇してたところだ、構わないぞ」

穏「本当ですか〜!? ではでは〜、早速昴さんお部屋に行きましょう〜!」

穏が俺の腕を抱えて引っ張っていく。少し胸が当たるな。

昴「ははっ、慌てるなって」

急かす穏をなだめる。そしてこの先こう思うことになる。あの時断れば良かったと。






















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部屋に戻った俺は穏に椅子を1つ用意して横並びに座る。

穏「それでは昴さん、よろしくお願いします〜」

昴「それじゃ、何から話すかな・・」

俺は今までに巡った、外史の政策や兵法等を話した。

昴「それでな、その国はその時にあえて、民から募集をかけてな・・」

穏「ハァ、ハァ・・、そんな方法が、ハァ、ハァ・・」















・・・・・・・・
・・・・・
・・・


昴「その王は、籠城はあえて行わず、野戦を選んでな・・」

穏「ハァ、あふぅ、そのような・・ハァ、ハァ、選択を、ハァ、ハァ・・」

何か様子が変だな? 体調でも悪いのか?

昴「・・穏、大丈夫か?」

穏「何でも、ん! ・・ありません〜」

・・・大丈夫そうには見えないが・・。心なしか手が胸にいってるような・・・まぁ本人が大丈夫って言ってるからとりあえず様子を見るか。

昴「他には・・そうだ、確かこの中に・・」

俺は手持ちの鞄の中に手を入れ・・・あった!

昴「これを読んでくれ。きっと穏には参考になるし、気に入ると思うんだが」

穏「こ、これは!」

昴「これは陳留の州牧・・俺がここに来る直前西園八校尉になったんだっけな? 曹操が孫子に編纂を加えた、題名は孟徳新書だ」

これは華琳のところにいた時に華琳が手掛けた書だ。手伝おうとしたんだが、基本的に趣味でやっているらしいから俺はたまに意見を言った程度だが・・。一冊完成品を華琳から手伝った礼にと貰ったものである。

昴「一通り読んだがかなり奥が深い一冊だぜ。曹操は知ってるだろ?」

穏「ぞ、存じてます〜、こ、こんな素晴らしい書が目の前に〜・・ハァ、ハァ。手に取ってもハァ、ハァ、よろしいですか〜?」

昴「あ、あぁ・・。」

何だろ、だんだん嫌な予感が・・。
チラッ、っと書を覗きこむ。

穏「やはああぁぁ〜〜〜んっ♪」

うぉ! どうした!?

穏「曹孟徳、彼女は時代を越えて受け継がれてきた、孫子の歴史書をけがしたのでしょうか・・・それとも・・♪ 過去から現代へ、孫子に新しい命を吹き込む偉業を成し遂げたのでしょうか? どうなの? あぁ、知りたい・・」

いや、読んだらいいだろ・・。

穏「それでは〜、失礼して〜・・」

穏がおそるおそる孟徳新書を手に取り、読み始めた。途中奇声をあげたり艶っぽい声をあげたり、いろいろあったが、黙々と読み進め、やがて・・。

穏「はぁ〜〜、素晴らしい、一品でした〜」

昴「そ、それは何よりだ」

何だろ、さっきから冷や汗が止まらないんだが・・。

穏「こんな・・・こんな素晴らしい物を・・読んでしまったら・・」

しまったら?

穏「もう我慢出来ません〜!!」

昴「うおぉぉぉ!?」

突如飛び付いてきた穏を横に避ける。

ゴン! ズズズズ〜〜。

そのまま壁に激突し、壁を擦りながら倒れこむ、しかしすぐさま起き上がり、こちらに振り返る。

穏「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ・・」

怖ぇ〜のなんの。目付きなんて猛禽類のそれだ。

ジリッ・・、ジリッ・・。

徐々に距離を摘めてくる。

ジリッ・・、ジリッ・・。

やがて部屋の角に追い詰められる。

穏「昴さ〜ん、もう逃げられませんよ〜♪」

昴「くっ!」

さっきから縮地で穏の横を抜けようと考えているが、隙が一切見つからない。こうなったら・・。

穏「昴さ〜ん!」

昴「うおぉぉぉ!」

俺はギリギリで穏を避け、部屋に置いてあった縄を掴み・・。

昴「せぇぇ〜い!」

穏を縛りあげた。

穏「あ〜ん、昴さ〜ん!」

穏はミノムシみたいな姿でなお俺に這いずり寄る。

昴「うわ〜・・」

まさか穏にこんな一面があるとは、そういや以前に穏が真名を預けてくれた時、冥琳と祭さんの様子が変だったな。なるほど、こういうことか・・。さてとこのあと穏を『ブチッ!』どうするか、えっ? ブチッ?
振り返ると頑丈に縛った縄を引き千切った穏が立っていた。

穏「うふふ〜、無駄ですよ〜?」

あ、あの縄を・・。再びピンチだ。

穏「昴さ〜ん!」

穏が再び飛び付いてくる。こうなったらやむ得ない。

昴「水月!」

穏「あぅ!?」

穏は床に倒れ伏した。

昴「と、咄嗟に人体の急所を突いてしまった」

まったく、ただ穏と話をして、書を渡しただけなのに・・。

昴「何故こんなことに・・」

と、今に至る、穏は大丈夫かな・・ホッ、気絶してるだけか。それにしても、穏に書を読ませるとこんなにも危険なのか・・。まぁ、そんなことより・・。

昴「穏を部屋に運ぶか・・」

俺は穏を背負い、穏の部屋のベッドまで運んだ。

はぁ、今日は疲れたな・・。政務以上に疲れたのであった。

















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※※※※


翌日、俺が城の廊下を歩いていると・・。

穏「昴さん」

昴「お、おう穏か」

昨日の一件もあり、少し気まずい。

穏「昨日は本当に申し訳ありませんでした」

昴「あ、あぁ気にするな。俺も痛い思いをさせてすまなかったな」

穏「それは心配には及びません。それよりも・・」

昴「ん?」

穏「私のお願いを聞いてくれますか〜?」

昴「お願い?」

穏「はい〜、私は見ての通り素晴らしい本を読み、知的好奇心を満たしてしまうと性的興奮を抑えられなくなってしまうんです」

とんでもねぇ性癖だな。

昴「それで?」

穏「いつからか、気が付いたらこんな症状が出るようになりまして。成長するにつれて症状はどんどん酷くなる一方で〜、冥琳様には書庫の出入りを禁止されてしまいました〜」

まぁ、あれを見たら誰でもそうするだろうな。

穏「でも〜、でももう嫌なんです〜、皆さんに迷惑かけるのも! 何より! 大好き本を読むことが出来ないのが何より嫌なんです〜!」

そう必死に訴える穏。その瞳から一筋の涙が流れていた。

穏「ですから〜、ですからこの症状を克服するために昴さんの力をお貸し下さい〜!」

・・穏も悩んでいたんだな。本音を言えばあの状態の穏と対峙するのはお断りしたいんだが・・・ここまで切実で真剣な願いを・・無下に出来ないよな・・。

昴「はぁ、出来る限り協力するよ」

穏「!? ・・ありがとうございます〜!」

そう言って穏は俺に抱きついた。あー胸が〜、また苦労を背負うことに・・なるんだろうな、はぁ。
当然、この予想は現実のものとなる。


















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※※※※


場所を変えて、俺と穏は森に来ている。

穏「昴さ〜ん、これは一体〜?」

とりあえず症状を克服するには慣れるしかない、かといってあの状態になったら手に負えないので・・・森で首から下を埋めて見ました♪ だって縄程度じゃ引き千切られるんだもん。

穏「うぅ〜、動けないです〜」

端から見たら生首だなこりゃ。

昴「我慢しろ、俺がもたないんだ」

穏「うぅ〜、それで〜、これでどうするんですか〜?」

昴「とりあえず・・」

手荷物から・・。

昴「孟徳新書だ!」

穏「おぉ!?」

昴「俺が穏の目の前で代わりに本を進めていくから穏はとにかく性的興奮を抑える努力をしろ」

穏「は、はい〜、頑張ります〜」

もうすでに症状出かかってる。

昴「それじゃ、始めるぞ」

穏「はい〜!」

ペラ・・・ペラ・・・ペラ・・・。

俺は孟徳新書のページを進めていく。

穏「あぁ・・はぁん・・ジュル!」

症状は出かかっている。穏は必死に性的興奮と 戦っている。

ペラ・・・ペラ・・・ペラ・・。

ページはどんどん進んでいく。

穏「・・・昴さ〜ん、あ、ふん、私・・もう・・」

昴「耐えろ、耐えるんだ穏!」

穏が徐々に徐々に毒されていく。

穏「・・もう・ハァ、ハァ、私ぃ〜・・」

昴「耐えろ! つうか耐えてください(ToT)」

本当にあの状態の穏怖いです。

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

突如地面が揺れ始めた。な、何が始まるんだ?

穏「・・す、昴さ〜ん・・」

昴「おいおい・・」

穏の様子がかなりおかしい。

穏「・・もう」

昴「もう?」

穏「もう・・・限界ですぅ〜!」

ズカーーーン!!!

昴「ギャアー! 生えたー!」

穏「ハァハァ、昴さんハァハァ、昴さん、ハァハァ、昴さん」

ジリジリ穏がにじり寄る。あかん、やっぱり怖い。どうする!? 何か限界まで我慢した分反動で昨日以上になっている。だからといって二度も手荒な真似はしたくない。どうする!? そうだ、脳内会議だ! 俺が培ってきた経験、野生の勘、洞察力に決をとる。俺はどうすればいい!

経・野・洞「「「逃げなさい。」」」

よっし、満場一致! それでは逃げよう。

御剣昴は逃げ出した。

ダダダダ・・ポヨン!

昴「ムギュ!」

柔らかい物に阻まれた。何だ? おそるおそる上を向くと。

穏「昴さん? 逃がしませんよ〜?」

しかしまわりこまれた。

昴「確実にさっきまで俺の後ろいましたよね? ・・・うわっ!?」

俺は穏に押し倒されてしまった。

穏「これでぇ〜・・もう、あ・ふぅ、逃げられません〜」

昴「くっ!」

まずい、マウントをとられた! このままでは! やむを得ないか、こうなったら穏を前みたいに・・・あれ? 手が動かない? ・・・うおっ! 手が縛られてる!? いつの間に!?

穏「これは〜、我が国の蔵書の一つの〜、『緊縛の奨め』という蔵書に記載されていたもので〜」

昴「んなもん奨めんじゃねぇ!」

まずい、まずい! 引き千切れないし、ほどけない! どうする、どうする!?

穏「昴さ〜ん・・いただきます〜♪」

昴「ギャアァァァ!」

















・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


このあと穏に食べられる刹那、たまたま心配になって様子を見に来た雪蓮と祭さんに間一髪救出された。この外史に来て1番怖かった人、それは穏である。だって血で興奮した雪蓮以上なんだもん。

結論、穏には本を読ませない。もはやこれしかないな。俺は新たな教訓を得た。

















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※※※


さらに翌日。

穏「昴さ〜ん!」

昴「(ビクッ)・・よう穏」

穏「昨日は本当に本当にすみませんでした〜。次こそは克服してみせますので〜、またお手伝いを〜」

俺はポンと肩に手を置き・・。

昴「あきらめろ」

穏「そんな〜、お手伝いして下さ〜い!」

昴「無理だって! つうかやだ!」

俺は逃げ出した。

穏「待って下さい〜、昴さ〜ん!」

追いかける穏。俺と穏の追いかけっこをしばらく続いたのだった。









続く

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真・恋姫・無双~萌将伝~コミックアンソロジー 第1巻 (IDコミックス DNAメディアコミックス)
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