小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第22話〜自身の限界、自らの歩む道〜















昴side

蓮「はぁ!」

ブォン! ガキン!

昴「どうした? 振れてないぞ?」

蓮「まだまだ!」

ガキン! ガキン!

昴「ただ力を込めればいいってもんじゃないぞ?」

蓮「くぅ、黙れ!」

ブォン!!!

昴「隙ありだ」

バキッ!!!

蓮「うぐっ!」

蓮華は顔を苦痛に歪ませる。

昴「おいおい、これが真剣なら真っ二つだぞ? 情けねぇ、それでも雪蓮の妹か?」

蓮「!? ・・貴様!」

蓮華の怒りを込めた一撃が襲う。それを俺は・・。

昴「ヒョイッとな」

避ける。

蓮「うっ!?」

蓮華は体勢が崩れる。

昴「相手が馬鹿正直に剣を受けると思うな・・それ!」

ブォン! バキッ!

蓮「ぐぅ!」

蓮華は俺の一撃を受け止めきれず、吹き飛ばされる。
俺達が今何をしているのかというと蓮華と模擬戦をしている。どういう経緯でそうなったかというと・・・。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「ふわ、久々に休みだ」

ここのところ政務尽くしでマジできつかった。3日連続朝から晩まで書類とにらめっこは地獄だよもう。ま、それもとりあえず仕事片付けたから今回限り・・・なはずだけどな。こんなこと考えながら庭に来てみると・・。

ブォン! ビュン!

昴「ん?」

何か音が聞こえるな・・・庭からだな。
音のするほうへ行くとそこには素振りをする蓮華がいた。

蓮「それ! はぁ!」

ビュン! ビュン!

汗の量からして結構長い時間やってるみたいだな。・・・邪魔するのもなんだし、どうしようかな・・・水でも用意しとくか。

俺は厨房へ向かった。



















・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


戻って来てみると、蓮華はまだ素振りを続けていた。とりあえず終えるまで待っておこう・・・20分くらい待つと・・。

蓮「ふぅ」

蓮華が素振りを止めた。どうやら一息入れるみたいだな。

昴「お疲れ、精が出るな」

蓮「ん? 昴か。このようなところでどうした?」

昴「とりあえず久しぶりの休みだから何して過ごそうか考えながらブラブラしていたら素振りをしていた蓮華が目に入ってな。ほれ」

俺は竹筒に入った水と湿らせた布を渡す。

蓮「あぁ、すまないな」

受けとると蓮華は水を一気に喉に流し込んだ。

蓮「ゴクゴクゴク・・・ぷはぁ、生き返る!」

昴「それにしてもめずらしいな、いつもは思春と鍛練してるのに」

蓮「思春は水軍の訓練に行っているわ。だから1人で鍛練をしていたのだ」

昴「なるほどな」

そういや以前の朝議で言ってたな。

蓮「ところで、今日は休みと言っていたな」

昴「ああ」

蓮「せっかくの休みのところすまないが、良ければ鍛練に付き合ってもらえないだろうか?」

蓮華と鍛練か・・・それもいいな。何より最近は政務尽くしだったから久しぶりに身体を動かしたいしな。

昴「ああ、構わないぜ」

蓮「助かる」

それじゃ・・・そういや、村雨も朝陽と夕暮も部屋に置きっぱなしだったな。

蓮「武器を取ってきてくれ。それまでここで待っている」

昴「いや、それには及ばない。それに時間がもったいないしな」

さてと・・おっ! 程よい木を発見。

パキッ!!!

枝を一本折り、余計な小枝取り除く。後は長さを・・・よし、完成だ。即席の少々不格好な木刀が完成した。

昴「さぁ、始めるか」

蓮「? ・・何の真似だ? こちらは真剣なのだぞ?」

昴「見れば分かるよ。俺はこれでいい」

蓮「・・・私を侮っているのか?」

昴「そうじゃない、これで十分だと判断したまでだ」

蓮「!? ・・貴様!」

昴「悔しいなら言葉ではなく、行動で示すんだな・・来い」

蓮「言われなくとも! その余裕、今すぐ消してやる!」

蓮華が地を蹴り、俺に飛びかかる。

蓮「はぁ!」

ガキッ!!!

俺は蓮華の剣を木刀で受け止めた。

蓮「っ!? ・・・馬鹿な!? 真剣を木刀で受け止めただと!?」

おそらく避けると予想していたんだろう。

昴「ほら、ボーッとしてて、いいの、かな!?」

そのまま蓮華を弾き飛ばす。

蓮「ぐぅ!」

蓮華は何とか体勢を立て直した。

蓮「馬鹿な、何故?」

昴「種明かしは後だ・・・行くぞ、気を抜くなよ?」


















・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


とまぁ、今に至る。もうかれこれ4時間位続けている。

蓮「はぁ、はぁ・・はぁ・・・くっ!」

ビュン・・、ガキッ!

蓮「くそ!」

昴「はい、終わり」

バキッ!!!

蓮「うわっ!」

蓮華は仰向けに倒れた。

昴「今日はここまでだな」

蓮「ま、待て・・私は、まだ・・」

昴「そんなにヘロヘロじゃ、鍛練にならないよ。ここからは身体を動かす鍛練ではなく、頭で鍛練するんだ」

蓮「頭で?」

昴「今日1日俺の動きを肌で感じたろ? 何で俺に一撃も入れられなかったか。ゆっくり考えな」

蓮「・・分かった」

蓮華は相変わらず倒れたままだ。

昴「動けないなら部屋まで連れて行こうか?」

蓮「大丈夫だ。少し休めば起き上がれる。しかし、何故お前の木剣は折れないのだ? もしかしてそれが氣というやつか?」

昴「いや、いくら氣でこれ(木刀)を強化しても立て続けに蓮華の剣を受けたら、元が木だからすぐにへし折れるさ」

蓮「ならば何故?」

昴「君の振るう剣と接触する時に剣の切れ味が一番鋭い垂直角度を外してなおかつ体全体で打ち込みの衝撃を吸収したんだ」

蓮「・・・」

呆気にとられてるな。

蓮「簡単に言ってくれるな・・そのようなことをいとも容易く・・」

昴「出来るんだな」

蓮「・・・」

昴「・・・」

蓮「昴」

昴「ん?」

蓮「雪蓮姉様相手に同じようなことが出来るのか?」

昴「・・無理だな。思春や楓でも同様にな」

蓮「そうか・・」

昴「・・・」

蓮「お前は以前に言ったな。『ゆっくりでいい。自分の歩幅で歩けばいい』と」

昴「ああ」

蓮「そう遠くないうちに孫家復興のための戦が始まる。その時に私は何も出来ないのではないかと考えてしまう。私は姉様のように先頭に立って皆を引っ張って行くことは出来ない。姉様は私の尊敬する姉であり、目標でもある。・・でも姉様のことを知れば知るほど自分がいかに矮小な存在か思い知らされる。私は姉様のようになれないのか・・。そう考えると焦るなと言われても焦れてしまう」

なるほど、尊敬する姉、偉大な姉を持つ妹・・・か。

昴「雪蓮のようになれるかなれないか。その問いに答えるなら、蓮華、君は雪蓮にはなれない」

蓮「!?」

昴「率直に言う、目指すだけ不毛だ」

蓮「・・・くっ!」

昴「自分がどう在るかどう在りたいか知りたければ明日もここに来てくれ、待っている」

俺は庭を後にする。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


蓮華side

蓮「くそっ!」

昴との模擬戦、最初から自分に勝ち目があるとは思っていなかった。せめて一矢報いられば、そう考えていた。しかし実際は、あれほどの余裕をとられ、一太刀入れるどころか木剣をへし折ることも出来なかった。・・そして何より・・。

昴『君は雪蓮にはなれない。目指すだけ不毛だ』

あのような言葉まで吐かれてしまった。

蓮「くそっ!」

悔しい。目から流れる涙を止めることが出来ない。

『王はみだりに涙を流してはならない』

昔母様が言っていた言葉だ。ここには誰もいない。だから今だけ、今だけは・・。この悔しさを明日、全てぶつける!

蓮「う、うわぁぁぁ!!」

私は1人庭で思い切り泣いた。

そこに1つ見守る影があったことに気付かず。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

昴「ふぅ」

俺は蓮華と別れた後もう一度厨房に行って水をもらい、汗を拭き取った後部屋に戻っている。もう街に行くにも中途半端な時間なので部屋で軽い筋トレ、ストレッチをして休もう。そう考えていた。

スタスタスタスタ・・・・・。

やがて自室の前に着き扉のまで止まる。

昴「ふぅ。用があるなら早くしてくれ」

そう言うと柱の影から・・。

昴「やっぱり思春か」

思「・・・」

昴「用があるからここまで付いてきたんだろ?」

思「・・楽しいか? 圧倒的力で他者をいたぶり、愉悦に浸るというのは」

・・・あぁ、なるほどね。

昴「わざわざそれを言いに来たのか?」

思「・・・」

沈黙する。もはや肯定と同義だな。

昴「それを言うために蓮華の前では現れず、俺が1人の時を狙って声をかけたのか?」

思「!? ・・・ちっ!」

気付いていたのか!? とでも言いたげだな。

思「蓮華様は孫家の1人。亡き文台様のご息女が1人にあられる。そのお心にかかる重圧は我らでは理解の外だ。そんな繊細な蓮華様のお心を何故貴様は叩き折るような真似をする!」

はぁ・・・全く、蓮華といい思春といい。

昴「へぇー、蓮華の心ってこの程度のことで折れるような脆いものなんだ? 己の主君を随分と過小評価するんだな」

思「・・っ!?」

ギリッ!

歯軋りがこちらにも届いた。

昴「どのみち、この程度で折れるような心ならそんなもん・・・俺は知らん。いっそ今の内に叩き折ってやったほうが蓮華のため、孫家のためだ」

思「!? ・・・貴様ー!」

思春が自分の得物に手を掛ける。

昴「こんなところで剣を抜いたらすぐに人が飛んでくるぜ? それに袁術の客将の配下が刃傷騒ぎ起こしたら、いかに対象が俺でも孫家がだいぶ不利になるぞ? 最悪責任の一端が蓮華にだって及ぶ」

思「・・・くっ!」

昴「ま、とりあえず俺に言えることは、蓮華をもう少し信じてやりな。蓮華は思春が思っている以上に強いぞ?」

思「話はそれだけだ。では、またな」

それだけ言って自室に戻った。

















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※※※※


思春side

思「・・・っ!」

気に食わん男だ。初めて会った時から感じていたことだ。腕は立つ。頭も切れる。弁も立つ。しかし・・。

思「あの男は蓮華様に悪い影響しか与えん!」

私は認めん。御剣昴。貴様のことは絶対に!

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

翌日の昼下がり、政務もそこそこに切り上げ、昨日の庭に向かった。すでに蓮華は待っていた。

昴「悪い待たせたか?」

蓮「特に時間を決めていたわけではない。構わないわ。それより・・・」

蓮華が俺の木刀に目を落とし・・。

蓮「やはりそれを使うのね」

昴「ああ」

蓮「私にとってはそっちのほうが腹ただしいわ。・・そして、昨日の最後の言葉」

昴「君は雪蓮にはなれないと言ったことか?」

蓮「そうだ」

昴「それは今も訂正するつもりはない」

蓮「ならば私の手で訂正させるだけだ!」

昴「・・そうかい」

蓮華は地を蹴り、俺に一直線に向かってくる。

蓮「はぁ!」

ガキン!!!

昴「おいおい、昨日と何も変わってないぞ?力だけましても無駄だと言っただろ!」

ブォン!!!

俺は蓮華を引き離すために木刀で弾き飛ばす。

蓮「くっ、まだだ!」

蓮華はすぐさま体勢を立て直し、再び向かってくる。

蓮「これならどう!」

今度は真っ正直にではなく、いくつかフェイントを入れてきた。

なるほど、昨日とは全く同じというわけではないみたいだな。・・・だけど。

俺は蓮華の剣に木刀を合わせ・・。

昴「殺気がこもってない一撃なんて、おそるるに足らないよ」

後ろへ大きく弾き飛ばした。

蓮「きゃっ!」

蓮華は飛ばされ倒れるがすぐに起き上がる。まあ、木刀が体に触れたわけではないからな。

昴「昨日一晩考えた成果、見せてみな」

蓮「言われなくとも!」

蓮華が改めて向かってくる。
蓮華はあらゆる手を尽くし向かってきた。だがそれでも俺に一撃はおろか、木刀をへし折ることすら出来ない。やがて・・。

蓮「はぁ、はぁ、はぁ・・くっ!」

そろそろ策も体力も尽きてきたようだ。

昴「どうした? もう種切れか?」

蓮「ま、まだまだ!」

気力こそ尽きてないが体力まではそうは行かないようだ。もうそろそろだな。

昴「はぁ、蓮華がこの様じゃ、万が一、雪蓮がいなくなったら孫家は終わりだな?」

蓮「!? ・・取り消せ・・」

昴「ん?」

蓮「今の言葉、取り消せ!」

昴「悔しいなら取り消させてみせろ」

蓮「ああ、そうさせてやる!」

蓮華は策も何もなく、ただ感情のまま突っ込んできた。

蓮「うおぉぉぉ!」

もはや策も何もなく、ただ感情のまま剣を振るってきた。動きそのものは始めた当初よりもいいが、あまりに単調過ぎる。当然俺には当たらない。怒りに任せて、力任せの攻撃を長時間続けてきたツケが一気に襲ってきた。

蓮「はぁ・・・はぁ・・・」

もはや体力は限界ギリギリで。手持ちの剣でかろうじて体を支えている。

昴「もうろくに体も動かせないだろう。今日はこれまでだな」

俺は木刀を肩に下げ、蓮華に背を向けた。

蓮「ま・・だ・よ。まだ・・終わって・・」

昴「よせ、もうこれ以上は無理だ」

蓮華は疲労が限界を越え、脳に酸素が行き届いていないせいか、目も虚ろで、意識が朦朧としている。恐らくもう半分は意識がない。

蓮「私・・は、尊・敬する雪蓮・姉様の妹・・」

蓮華が剣を握りしめ、俺に向かってくる。

蓮「そして・・偉大なる・・孫堅文台の娘・・・孫権・・、仲謀だ!」

昴「しょうがない、気絶させて大人しくさせ・・っ!?」

ドクン!!!

あわてて振り返ると今までとは別人の殺気を放つ蓮華の姿があった。

蓮「ハアァァァ!!」

昴「くっ!」

まずい、速さ、剣速が段違いだ!

あわてて促そうと木刀を合わせるが・・。

ヒュイン!

昴「!?」

木刀と剣が交差した刹那、俺の木刀が根元から綺麗に斬られた。蓮華はそのまま意識を失い、その場に倒れた。最後の最後の体力も尽きたのだろう。

昴「まさかな、綺麗に切断されるなんてな」

予想もしなかった。まさかこんな綺麗に・・・とりあえず蓮華を介抱するか。俺は蓮華を抱き起こし、木陰に寝かせた。
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


蓮「う・・、ん」

昴「ん?」

小一時間ほど経ち、蓮華が目を覚ました。

昴「お目覚めか?」

蓮「私・・一体・・・!? ・・そうだ! 模擬戦は!?」

あわてて起き上がろうとする蓮華を寝かしつけた。

昴「まだじっとしてろ」

蓮「ああ、すまない」

蓮華が横になる。

蓮「最後の方の記憶が曖昧なのだが、夢かもしれんが、私は昴の木剣を斬ったような・・」

昴「夢でも幻でもないよ。ほら」

俺は切断された木刀の柄を見せた。

蓮「!? ・・あれは夢では・・ならどうして、私はもう最後残った体力なんてほとんど・・まさか情けをかけたのか?」

昴「力を計り損ねたのは事実だけど切断させるつもりは毛頭なかった」

蓮「ならば、何故?」

昴「2つの要素が重なったからだ。1つは疲労が限界を越してたことだ」

蓮「どういうことだ?」

昴「人間ってのは疲労が限界に達すると1番楽な動作をするんだ。つまり、1番自然な動作だ。蓮華は正直無駄な動きが多かったからそれによって1番速さと力がのる一撃を放った」

蓮「なるほど」

昴「もう1つは君の中の孫家の血だろう」

蓮「母様の? 私に流れる血は誇りではあるがそんなものが要因になるのか?」

昴「一概に血筋ってのは馬鹿に出来ないぜ? 人は鍛練と実戦を多くこなせばある程度の高見に行ける。だけどそこから先、更なる高見、後世に名を遺すほどの高見に行くために必要なのは才能、つまり血筋だ。事実、最後の一撃、君から放たれた殺気は雪蓮と同等のものだった。一撃の速さと力強さも同様にな」

蓮「私がそんな一撃を・・」

昴「無意識に覚醒したってところだな。扱いこなすにはまだまだ鍛練も実戦経験も遥かに足らない。ま、その辺はこれからの努力次第だ」

蓮「そうか・・私にそんな力が・・」

嬉しそうだな。

蓮「私も努力すれば、いつか姉様のように・・」

昴「もう一度言うが君は雪蓮にはなれないぞ?」

蓮「!? ・・何故だ!? さっきだって姉様と同じ一撃を『聞け。』 っ!?」

昴「君は雪蓮にはなれない。そして雪蓮はどう頑張っても蓮華にはなれない。それは雪蓮は雪蓮であって蓮華は蓮華だからだ」

蓮「私は・・私?」

昴「君と雪蓮は違う。たとえ血を分けた姉妹であってもだ。自分は自分以外の何にもなれない。他人になんてなれっこない。他人なろうとするなんてこれ以上にない不毛なことだ」

蓮「・・それでは、私はどうすればいい・・」

昴「蓮華、君はもう雪蓮を追うな。雪蓮の歩む道、それは雪蓮だけの道、そして王道だ。雪蓮だけにしか歩めない。そしてそれだけが王道ではない」

蓮「・・・」

昴「王の在り方というのは何も雪蓮だけが全てではない。雪蓮のように先頭に立って道を切り開く。それも1つの王道。他には策略、謀略を操り、己が描いた絵を完成させるために臣下を巧みに適材適所に使う王。言わば覇道」

そう華琳のような王。

昴「理想を掲げ、理想を叶えるために仲間と力を合わせ、一緒に戦う王」

そう桃香のような王。

昴「道はいくらでもある。どの道も正解も不正解もない道だ。蓮華、君は、君だけの王道を見つけ、そして歩みを進めろ。武も知も、もちろんあるに越したことはないが、それが王に1番必要な資質というわけではない。君はもう雪蓮の道を歩く必要はない。君の道を探し歩め、孫仲謀」

蓮「・・・はい」

昴「とりあえず今は休め。今だけは・・な?」

蓮「・・あ・・あ」

蓮華はゆっくりと目を瞑り、ゆっくりと眠りに落ちた。

昴「限界まで体力使ったからな」

俺は蓮華の髪を撫で、顔を覗きこもうとしたその時・・。

思「貴様、今何をしようとした?」

そこには思春がいた。殺気をビンビンに放った思春が。

昴「何って別に俺は・・」

そこでハッと気付く。今の自分の状況に。

横たわる蓮華→膝枕する俺→髪を撫で顔を覗き込む俺。

うーん、誤解を与えるには十分だな。

思「斬る」

昴「待て! 落ちつけ!」

思「聞く耳もたん!」

昴「持ってくれよ!」

思春がジリジリと近づき、今まさに襲い掛かろうとするその時・・。

雪「昴に思春? どうしたの?・・あら蓮華も」

思「雪蓮様?」

昴「雪蓮!」

助かった。

雪「何かあったの? 思春はやけに殺気立ってるようだけど」

思「雪蓮様、御剣昴が有能なのは認めます。ですが! この男が我々に必要な存在だとは思えません! このような、不埒で不真面目で無責任な男は孫家には不要です!」

ひどい言われようだな。

雪「うーん・・分かったわ。それなら思春、昴と一騎討ちをしなさい」

昴「何?」

突然 何を・・。

雪「ほら、前に思春と楓がしたみたいに、一騎討ちをすれば分かりあえるんじゃないかしら」

昴「ちょっ、いや待てよ・・」

それはあくまでもあの時は楓が思春に憎しみを抱いているわけじゃなかったからああなったわけで。思春の場合は・・。
ちらりと思春を見る。

思『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』

相変わらず殺気は全開だ。

雪「とりあえず、これはもう決定だから♪」

雪蓮の奴、楽しんでるな。

雪「勝負は明日、この場所で、2人ともいいわね?」

思「私が勝てばこの男は自由にしても?」

雪「いいわ。思春が勝ったら好きにしなさい」

思「はっ、それでしたら・・」

雪「昴もいいわね?」

昴「はぁ、分かったよ・・」

雪「今日はそれぞれ仕事に戻りなさい」

思「はっ!」

思春は庭から去っていった。

雪「それじゃ、明日は楽しみにしてるからね♪」

雪蓮は軽やかな足どりで去っていった。
はぁ、大変なことになったな。

蓮「・・うう・ん、す・・る」

蓮華は幸せそうに眠っていた。

かくしてひょんなことから思春と一騎討ちをすることになってしまった。











続く

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